“もうひとつの” Sailing ②
もうもう“鬼甘”まっしぐらです(^^;)
賢ちゃんが『何日かこちらに居るよ』と言ってくれて、私は、ニコニコが止まらなかった。 同時に明日の日勤、明後日の夜勤を考えると、もう寂しくなってしまった。
こんな事、今までに無かった。前の結婚の時には、それが有難かったのだから…
私自身が信じられない事だったのだけれど、思わず賢ちゃんに愚痴ってしまっていた。
「患者さんのためにしっかり仕事してきな! オレだって背中切られた時、看護師さんには本当にお世話になったから! オレは冴ちゃんや英くんと仕事の打ち合わせしながら待っているよ」って賢ちゃんは言ってくれて
私は寂しいけど嬉しくて賢ちゃんにキスをせがんだ。
恋焦がれているというのは私にとって初めての事で、気が付くといつも賢ちゃんを目で追っている。
『賢ちゃんは今日どこに泊まるの?』とかでヤキモキしている。
そんな自分がとても恥ずかしいのだけど、その何倍も嬉しい。
嬉しさを噛みしめるだけで涙が溢れて来る。
本当に何なんだろうなと思う。
つい半日ほど前、私は絶望の中に居て…この人に恐怖していたのだ。
「ふふふ」
思わず笑うと、カレも満面の笑みを返してくれる。
今はタクシーの中
もちろん寄り添って“恋人つなぎ”している。
「そう言えば、冴ちゃんとかスグルくんとか、何か連絡あった?」
「私のところには…ない」
「あーそりゃ、きっと、夢中だな」
「夢中だね」
「人の事は言えないけどな」
「言えないね… あ、お父さんにも電話してない」
「えっ?! 大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫!サプライズだよ」
「…そうかな なんか緊張してきた」
「へえ~賢ちゃんでも緊張するんだ」
「するさ!! 加奈ちゃんをお嫁に貰いに行くんだぜ!」
「えへへへ… 嬉しい。でもウチの父も相当喜ぶと思うよ」
「そうかな…」
「そうだよ。目に浮かぶもん」
「どういう風に?」
「恥ずかしいから、内緒!」
私は手をギューッと握ってさらにもう片方の手で賢ちゃんの手の甲を撫でる。
この逞しい手で…と想像して
ニヘラニヘラしてしまう
「何、考えてる?」
と聞かれて
ちょっとそれは言えないので、他の事に言い換えた。
「私も“あかりちゃん”に会いたいなあって」
「加奈ちゃんはふたりのお姉ちゃんだからな」
「じゃあ、賢ちゃんはお兄ちゃんだね」
「それは、いいな」
「私達でアノ子達を守ってあげようね」
「もちろん!!」と言い掛けた賢ちゃんは「でも…」と言葉を繋いだ。
「オレも…子供欲しい…」
「ホント!!? 私も絶対欲しい!! そう!すぐにでも!! でね、夢見てることあるんだ」
「何を?」
「あかりちゃんと私達の子供、同級生でさ。4人で2人を育てるの。」
「そりゃいい!! だったらウチも女の子がいいかな?」
「男の子もハラハラして楽しそう!!」
賢ちゃんは目を細めた。
「オレ!多分かなり子煩悩になると思う」
「それは助かるなあ」
「ベタ甘でも?」
「それは…ちょっと困るかも。でもまあ、私と冴ちゃんが締めるわ」
「…なら、大丈夫だな」
「あはははは あ、アレ、いらなくなるね。 私が昨日買ってきたやつ」
私の言葉に賢ちゃんは吹き出して「ゴメンゴメン」と謝ってくれた。
「…恥ずかしい思いさせて、すまなかった」
「全然!! それより使いきれなかったね。やっぱり。えっと、昨日の夜と…今朝と…」
「そこで指、折るか?」
とか言いつつ二人して指折っていた。
「半分いったよね」
「やったね 半分も」
ふたりしてグフフフと笑う
「そう言えばオレ、付けないでシた事、無い」
「えっ?! だって賢ちゃん、結婚してたんだよね?」
「ああ、でも何だかんだ理由を付けて、付けさせられた」
「え~!! そうなの?? だって!」
私は自分を思い返した
「…ゴメン。私も無かった、というか免れていた。何だかんだ理由を付けて付けさせた」
二人して吹き出して大笑いした。
「じゃあ、ふたりして今度は“初体験”だね」
「ハハハ そうだな」
「嬉しいなあ~賢ちゃんと“初体験”!! 賢ちゃんとで、本当に良かった」
胸がきゅーんと締め付けられて私は手を繋いだままカレの腕を抱き込んだ。
「賢ちゃん、どうしよう! 私…」
「ん?クルマ酔いか? 昨日結構飲んでいたし…」
私はかぶりを振った。
「違うの、したくなったの」
覗き込んでくれたカレの瞳を熱く見る
「…キスを…」
私達は最初、こっそりと
でも結局大胆に
タクシーの後部座席で
キスをした。
『白楓の方がよっぽどエロい』と黒楓は言うのですが、「私は下世話な事までは書かないもん」と言い返しております(#^.^#)
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