“もうひとつの”煙草のけむり ②
今回も短めの更新です<m(__)m>
耳当たりのいい声だったが、夜勤中の私には気の障る物言いだったので“遠慮”という言葉は私の頭から消し飛んだ。
「名前の読みも知らずに電話なさるのはどうかと思いますが!」
『そのご様子ですと私の事もご存じないようですね』
切り返されて私の“沸点”はまた下がった。
「それは、こちらも大変失礼いたしました。何度も何度も電話をいただいたようですが、私も夜勤中の、決して長くないは休憩時間を使っておりますので、お互いの為、なるだけ簡潔にご用向きをお知らせ下さい」
電話の向こうで笑い声がした。
完全にアタマに来て、このまま切ってやろうと画面をタップしかけた時
『アイツの推薦でしかも“オンナ”だから一筋縄では…』という声が漏れ聞こえて、私は画面に噛みついた。
「ちょっと!! オンナとかアイツとか何なんですか?!! アナタのところのお仕事は女じゃ、荷が勝ち過ぎるとでも言うのですか?! それにアイツとはなんです?!! それはきっと冴ちゃんの事ですよね!! いくらあなたの同僚か部下だとしても女性蔑視は冴ちゃんに対して失礼です!! それに一甫堂の店主の婚約者に“アイツ”呼ばわりは許せません!!」
『えっ?!!』
明らかに驚いた声がした。
『…失礼しました。私は両和システム株式会社で社長をしております上川と申します。 今、“婚約者”とおっしゃいましたが、一体誰が、誰の?!』
「冴ちゃんは一甫堂の店主、前橋英の婚約者です。女将になる人です。失礼は許せません!!」
『婚約者?! 女将?!』
電話を通しても彼が狼狽している様が伝わって来る。
どうやら上川社長にとっても冴ちゃんは重要人物らしく、しかも彼の方にも寝耳に水の話が多そうだった。
そこで私は、怒りの感情は取りあえず押し込めて、お互いの情報のすり合わせを提案した。
冴ちゃんは両和システムから長期休暇を取って、津島のお家の何らかの事情でこの街にやって来た。
その彼女をばあちゃんとスグルが見初めて前橋のお嫁にした。
冴ちゃんはこの街でも両和システムの仕事を始めた。
商売の幅が広がったので私達には内緒で一甫堂を両和システムの総販売代理店に登録し、私を代表者にした。
その目的は…
分からない。
ただ、私には、あの屋上での出来事以来のざわざわした胸騒ぎがする。
しかし休憩時間はここまで
私は仕事に戻った。
こうやって見てみると、加奈子さんと冴ちゃんって『似た者姉妹』な感じです(#^.^#)
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、切に切にお待ちしています!!(*^。^*)