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こんな故郷の片隅で 終点とその後  作者: しまうまかえで
25/48

Sailing

ようやく終点です(^O^)/


今回の曲はRod Stewartの“Sailing”です。

タクシーの後部座席にバスタオルを敷き、英さんを座らせた。


行き先の住所を伝えると、クルマは走り出した。


もう我慢できなくて、恋人繋ぎをしてしまう。


少し気持ちが落ち着いて、私は段取りを描き始める。


『ドアを開けて、このバスタオルを床に敷いてから英さんに入ってもらって… うん、エアコンは付けない方がいいな…英さんの体が冷えてしまう…』


知らず知らずのうちに頬が緩んでくる。

で、繋いでるカレの手を見た…


残念ながらカレの薬指には指輪がない。


分かっている事だけど


つい、

シュンとしてしまって


英さんの薬指を左手で触ってしまう。


「もう少し待ってて」


「えっ?」


「指輪の事は、ばあちゃんから教えてもらっていたから… 同じ工房で冴ちゃんの指輪に合うデザインで作ってもらっている」


「ホント?! えへへへ 嬉しい! とっても! アリガト」


英さんの頬に素早くキスして、ギューっと手を握った。



--------------------------------------------------------------------


急いで部屋に入り、まず廊下にバスタオルを敷いて英さんを立たせ、

奥の部屋から、タオルケットとあかりにもらったバスローブの両方を抱えて戻って来る。


「服、洗濯しますから、これを使って下さい。お風呂、急いで掃除してお湯張ります」


私はケミカルデニムを脱ぎ捨て、掃除用ブラシを掴んでバスルームに入った。



風呂掃除を片付け、浴槽の蛇口を開けて英さんのところへ濡れた物を貰いに行く


英さんは自分の前に()()()()()()()衣服を積み上げ、タオルケットを被って膝を抱えていた。

その仕草が可愛くて、私は屈みこんで衣服を拾い上げながらカレにキスした。


ん?!


私は足りないものに気が付いて英さんの前にペタン!と座って手を差し出す。

「パンツは?」


「それはいい」


「ダメです。着替えがありません。『私のショーツを履かせる』の刑に処しますか?」


「大丈夫、そのうち乾く」


「風邪ひきますし…布団まで濡れちゃいます」


「だって…」と英さんは私のシャツの裾あたりに目をやって言う。

「お互い恥ずかしいでしょ…」


「あっ!!」

私は気が付いてシャツの裾を引っ張り、見えていた物を隠す。

「…エッチ!」


「いやいや、冴ちゃんの要求の方が、ひどい」


あ~ 何だかめちゃめちゃ恥ずかしくなってきた。 今まで平気だった事が…


しかし

そうも言ってられないので


タオルケットの裾から手を突っ込んで

()()()


「さ! お風呂行って下さい!」



顔を赤くしてパンツを握りしめている私に、英さんは、すれ違いざまに一言投げた。


「仕返ししちゃうよ」



ええ!


仕返しされました!


私がお風呂に入ろうとした時


後ろから抱きすくめられて


ぎこちなく()()()()


お団子ヘアの背中にキスの雨を降らされながら…




私は湯船に飛び込んで


ブクブク沈み


真っ赤っかに


なりましたわよ



--------------------------------------------------------------------


お風呂から上がって体を拭いて、髪をほどいた私を迎えて


「すごくきれい」

と言ってくれた英さんと


長い長いキスをして

カレの胸に、もたれかかった。


やっと、英さんと温め合える。


思えば私は…


男の子に全てを預けたことがなかった。


男の子って


こんなにも温かく


力強く


優しいんだ


甘い甘い時間が


果てしなく続く。


時々、2色アイスのカレの肌のあちこちを…

甘噛みしたり

舐めたり


したけれど…



--------------------------------------------------------------------


嵐が去った後の強い日差しが


陰干ししているカレのジーパンの辺りまでチラチラと揺れている。


かつて…


あかりを想って独りで泣いたこのベッドには


今は英さんが居る。



あかり!!


この世界のたったひとりの人を!!

私は見つけ

そして見つけてもらったよ。



あなたの幸せはきっと叶います。

私が叶えます。

だから心配しないで

愛するあなた

愛しいあなた

いつもそばにいて

守っているよ


そう言ってくれたあなたは、

確かに私の幸せを叶えてくれた。


だから


今度は私が


あなたの願いを叶えます。


英さんとふたりで


あなたを呼び戻します。


私は…


お腹にそっと

手をやった。


優しいカレは

微かに寝息を立てている。


ふいに英さんのスマホがメッセージの到着を知らせた。

2回続けて


起こしてあげよう


何度かのキスのノックで


薄っすら目を開けたカレは


すぐに私を抱きすくめた。


「英さん、英さん スマホ 鳴ってました。お仕事の件かも… 取りますよ」


胸のふくらみでカレの顔を撫でながら


私はベッドサイドのスマホを取って


ふたりで画面を覗き込んだ。


加奈子さんからだ。


『冴ちゃん、スグル、今日は思いっきり楽しみなさい。お店の方は心配しないで。ふたり♡でしっかりやっておくから』



「お姉さんに私達がふたりでいる事、話した?」

「話してない」


「それに…」

ふたり、顔を見合わせた

「『ふたり♡』って何だろう??」


次は動画ファイルだった。


タップすると


どうやら操作しているのは


オヤジさんらしい…


『おっ! 動いた動いた!録るぞ!』


その動画に


私達はものすごく驚き


私は胸がいっぱいになって、涙がこぼれた。


そんな私を英さんはぎゅっと包んでくれた。


そして

ふたり、抱き合って喜んだ。



あぁ!!


今、私たちの世界は


こんなにも幸せだ!!



私たちは


幸せの風を受けて


思いっきり帆を張り


この素敵な人生の海へ


ふたりで


船出する


今、英さんの腕の中に居る


私の名前は


ま え は し さ え こ


この世界にたったひとりの愛しい人の



可愛いお嫁さん




挿絵(By みてみん)



2022.5.12更新


英さんに♡♡♡♡♡♡の冴ちゃん


挿絵(By みてみん)


色塗り


挿絵(By みてみん)


この絵の見えないところで、英さんは冴ちゃんに何をしているのでしょう??


ご想像にお任せします( *´艸`)




<予告の挿絵>


挿絵(By みてみん)




やっと終点まで辿り着きました。


お付き合いいただいた皆様に深くお礼申し上げます。<m(__)m>


最後は“鬼甘”にしましたが

いまのところはこれでいいかなと思っています。


“その後”のお話を引き続き書かせていただければと思っておりますが……



『その前に“煙草のけむり”の話の裏側で起こっていた加奈子さんの出来事を書くべき』と黒楓が主張するので、私、しろかえで主導で、加奈子さん視点の物語を数話書きます。

『冴ちゃんと英さんが何に驚いたのか?』とか『社長はどうなったの?』と言う疑問にもお答え致しますので、乞うご期待!(^_-)-☆


<予告の挿絵>は加奈子さんです。

ようやくイメージが固まりつつあります(^^;)


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― 新着の感想 ―
良かったね冴ちゃん(⋈◍>◡<◍)。✧♡ 考えながらニヤけるなんて、すっごく嬉しい証拠ですよね‼ 誰でも好きな人の前では、その好きな人が好きになる自分で居たいと思う物。 でも冴ちゃんの過去には、決して…
[良い点] 温かい着地点に二人とも舞い降りる事ができて、良かったなぁ、と感じました。 こうも甘い体験、自分のものとしては到底想像できないけれど、物語の中で見つめてきた主役達が行うと凄く自然なものに思え…
[良い点] これも、ジェットコースター並みの、話の、展開ですが、女心もこれほど変わるのでしょうか?男の私には、難解です。でも、主人公の背景は理解できますので、読んでいて飽きません。
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