煙草のけむり ④
いよいよ英さんの告白シーンです(*^。^*)
英さんはズブズブになったジーパンのポケットからスマホを取り出した。
「みんな待っている」
英さんからスマホを受け取った私は、まだ憎まれ口が止められない。
「こんなにびしょ濡れにして…アナタのスマホは防水じゃないんだから壊れますよ!!」
バスタオルでよく拭いてスマホを立ち上げる。
みんなからのメッセージや動画が次々と映し出されて
私は、スマホを抱きしめてしまう
でも…それは…
本当の私を
知らないから…
だから私は、
どこに帰ればいいの?
傷つけてしまった英さんの元には
とても帰れない…
帰ってはいけない
それは、してはいけない事
分かっている
だけど
恐る恐る口に出してしまう
「英さん…は?」
カレは…
顎のあたりで僅かに伸びてきた髭の先に雨のしずくを溜めて、私を覗き込んだ。
「冴ちゃん! 僕はね!」
「…はい」
萎れて泣きそうになった私に
英さんは飛び切りの笑顔でこう言った。
「早くあかりに逢いたい」
その言葉に私は射抜かれた。
カレの腕に崩れそうになる。
ダメッ!!
カレの言葉に縋って
甘えてはダメ!!
「社長も言ってたよね…私はアナタに見合う価値のある女じゃない。さっきだって社長を手籠めにしていたんだ…」
英さんは静かに笑って
言ってくれた
「僕は冴ちゃんのすべてが大切なんだよ」
我慢していた涙が堰を切って溢れ出て、私は床に崩れ落ちた。
「ごめんなさい!! ごめんなさい!! 嘘言いました 手籠めなんてしていません ごめんなさい!! 許して!! お願い!! お願い!!」
「冴ちゃん!! 冴ちゃん!!」
英さんは泣きじゃくる私を両手で支えて助け起こし
「聞いて!冴ちゃん! 僕もごめんなさい」
と頭を下げた。
「えっ?」
私はしゃくり上げながらカレを見る。
「一番最初、冴ちゃんがばあちゃんの為に僕を怒鳴ってくれた時、『この電話の向こうに居る人は僕がずっと探していた人だ』って気がしたんだ。 病院で冴ちゃんの顔を初めて見て、写真の中の僕の母に似ていた事… それは確かに驚いたんだけど… 僕は冴ちゃんの顔を見ないうちから、どうしても傍に居て欲しかった。だけど、それを言い出せなくて…ばあちゃんの事を言い訳にしたんだ。 だから本当にごめんなさい」
私は胸が詰まって
両手で口を覆った。
「冴ちゃん! どうか僕の為に結婚してください。 僕も一生をあなたに捧げますから」
英さんはポロシャツのポケットから四角っぽい物を取り出す。
それはお菓子のようにシーリングされた指輪ケースだった。
私は泣き笑いしてしまう。
「お店の物を…そんな風に使っちゃダメでしょ!」
そんな私を見て、英さんは顔をくしゃくしゃにした。
「冴ちゃんが戻った」
そして私の手に、そのお菓子をのせた。
「冴ちゃん以外の人には手を触れさせたくなかったんだ」
私はお菓子のパッケージの端をパクン!と咥えて嚙み切って
今度はそれを英さんの手にのせた。
英さんはケースを開けて私の左手を取り、
指輪を薬指に戻してくれた。
ふたり、手が繋がったまま見つめ合う。
と、カレがくちびるを奪いに来た。
「ダメ! お酒とタバコの…!!ん!!…」
もう、私は溶けてしまって…
お互いがお互いをむさぼり合い
命のありかを確かめ合った。
。。。。。。。。。
大変なことに気が付いた。
カレの体がすっかり冷え切っている。
英さんから離れて外気を吸うのは切ないけど…
スマホを立ち上げた。
「両和システムです。またタクシーをお願いします」
電話を切って大急ぎで辺りを片付け、会社の鍵をポケットに入れた
そして
冷たい英さんの体をギューっと抱きしめる。
「ウチへ行こう。 服、洗わなきゃ! で、乾くまでは裸で毛布に包まるの! もちろん私も付き合うから… ふたりで温めて合おっ!」
下記は短編“手のない雪だるま”の登場人物の“津島冴子”さんです
2023.8.4更新
英さん
冴ちゃん
本当にありきたりな言葉なのだけど…私にも言って欲しいなあ…♡(#^.^#)♡と思う白楓ですが…
「今までは裸になることで鎧を付けていた冴子さんなのに、英さんだと裸で素になれるんだね」と黒楓は申しております。
なるほど…
次話で最終章は終了予定、エピローグです。
感想、レビュー、ブクマ、ご評価、切にお待ちしています!!(^O^)




