煙草のけむり ③
いよいよ社長と英さんが対峙するのですが…
濡れ鼠になっている英さんを連れて2階に上がると、社長はどこかに電話していたようだった。
「突然押しかけて大変申し訳ございません」
英さんは勢いよくと言っていいほどの気合の入った頭の下げ方で、全身に含んでいる水滴を振り飛ばした。
「そうだな。確かに迷惑な話だ。しかし…」
と社長は自分に振りかかった水滴を軽く払いながら言葉を返した。
「そんな迷惑を顧みずに自分を通さなきゃならねえ時もある。だが、そんな価値がこの女にあるのか?」
英さんは無言で社長へにじり寄った。
ところが社長はクルリと背中を向け、スマホを操作しタクシーを呼んだ。
「急用ができた。後はその女に相手をしてもらえ」
尚も前に出ようとする英さんを、私は腕を掴んで引き留めた。
社長は、そんな私たちにお構いなしに身支度をしている。
「ところで…」と言いながら社長は振り返り、いきなり私に向かって鍵を放り投げた。
「箭内加奈子って何者だ?」
不意打ちの質問に一瞬戸惑ったが二人同時に答えていた。
「姉です」と
社長は…少し笑ったように見えた。
口を開きかけた私を手で制して
「戸締り、頼む」
と一言いい
すれ違いざまに英さんの肩をパンッ!と叩いて部屋を出ていった。
足元に水たまりができるのではと思うくらいずぶ濡れの英さん。
この人は本当に私を追って来てくれたのだろうか…
胸が苦しくなる
でも口からは裏腹の言葉が出てしまう。
「いったいあなたは!! こんなところで、みっともなく何をやっているんですか?!」
ソファーの上のバスタオルを取ってカレの前に立ち、背伸びをして…でも、子供にやるみたいにガシガシと頭を拭いた。
ダメだ。全然足りない。
2枚目のタオルを取ろうと体を返したら
英さんに腕を掴まれた。
「冴ちゃん。帰ろう 僕たちの街へ」
。。。。。。
冴ちゃんのイラスト
2025.9.12更新
ちょっと落ち着いて考えながら書いています。 ちょこちょこ短くてスミマセン<m(__)m>
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