煙草のけむり ②
二人は“腹を割った”友人となるのか、それとも…
激しい雨になった。
話し終わった私はタバコが吸いたくなった。 しかし箱の中身は空だ。
「やろうか?」
私は灰皿の吸い殻に目をやる。
「…いらない。 すぐ消してしまっている」
「“ジャック”は?」
「もらう」
私にウィスキーを注いだ社長はタバコに火を点け、煙を吐いた。
「お前、よく生きてこられたな… しぶといオンナの見本みたいなヤツだ」
「なんだよ、それ…」
社長は指にタバコをはさんだままグラスに口を付ける。
「愛、 してたのか?」
「あかりはね… 英さんは…分からないなあ 今となっては夢の中の話のよう…」
とグラスを呷る。
「そうか…、俺にとっちゃ、二人とも羨ましいよ。お前にここまで愛されるなんてな」
「言ってる意味、分かんねぇ」
社長はグラスを置いた。
タバコの先から線香花火のように灰が落ちる。
「結婚しねえか? 俺と」
私は思わずため息をもらす。
「社長!その冗談は… 今はキツい」
「真面目だよ。
お前が休む前から!…いや!前のとの離婚が成立した時から
…考えていたんだ… パートナーとして、おまえほど頼りになるやつはいないってな」
「過分な誉め言葉ありがとね」
「茶化すなよ。 俺と組んでくれ!! 俺なら何の躊躇いもなくお前を守れる! お前は自由にしていていい。そう、一緒に暮らさなくてもいい。SEXだってしなくていい…」
私はグラスを置いて立ち上がった。
頭の中で体調カレンダーをチェックする。
居住スペースを見に行く。
… 見なかった事にした。
代わりに、しまって置いたバスタオルを束で持ってきてソファーに敷き並べ、髪をほどいた。
「SEXはするよ」
「“あかり”か…」
「そ、産まれるまで何回でもする。そして全員、私が育てる」
「それじゃあ俺は種馬じゃねえか」
「オトコとしちゃ本望でしょ?」
「本当に、お前は、それでいいのか」
私の手が止まった。
「分からない! そんなの分からないよ!!」
「なら、俺が決めてやろう」
社長はかごの中から5セント硬貨を1枚取り出して私に示した。
「ジュークボックスのインデックスに4つ白紙があるだろ? その内の1曲だけが邦楽なんだ。もしお前がそれを引き当てたら…俺の言う事を聞け!」
「洋楽だったら?」
「お前の勝ちだ! 好きに悩め」
私は黙ってコインを受け取り、ジュークボックスを動かした。
アームがレコードを抜き取り、セットして…針が置かれる。
その時、雨音を押しのけるように激しくドアを叩く音がした。
「!?」
しかし、そんな事はお構いなしにジュークボックスはギターとピアノの乾いたイントロを奏で、歌い出した。
「俺の勝ちだな」
頷いた私は…
ドアを叩き続ける音とジュークボックスが歌い続ける中
シャツのボタンに手を掛ける。
「あっ」
涙が筋となって、流れていく
何で…
私は萎れている?…
「馬鹿野郎!!」
社長は私を怒鳴りつけた。
「さっさと鍵を開けて来い!!」
その刹那、涙を流した冴子さんを白楓は好きなのですが… その刹那、“あの台詞”を吐いた社長に黒楓はぞっこんです。
一応、次がクライマックスっぽいので… しばらく悩みます(^^;)<m(__)m>
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