Honesty ②
書いていて、正直、辛いです。(/_;)
おばあちゃまにボータブルサーバーを使って淹れた『冴茶ソのほうじ茶』を飲んでいただいた。
「とても美味しいわ。冴ちゃんもお菓子と一緒にあがりなさい」
おばあちゃまはお持ちした上生菓子を私に勧める。
「おばあちゃま、いけません。それはおやじさんと英さんがおばあちゃまの為に作ったものですから…私がしかられます」
「…では、後でいただくようにしましょう。 そうそう、お昼前にお茶屋さんのご夫妻がいらしてね。心からの感謝をいただいたの。とても嬉しく、誇らしかったわよ。ありがとう冴ちゃん。ばあちゃんからご褒美をあげましょう」
「えっ?! どんなご褒美がいただけるんですか?」
私は努めて明るく応えた。
「まずはね、英と二人で浴衣着て明日の夏祭りにいってらっしゃい。行く前にここへ寄って頂戴。ご褒美はその時までのお楽しみ!」
おばあちゃまはご自分の櫛をチェックしてから私に「こちらへいらっしゃい」と声を掛けた。
「本当は私がやってあげたいのだけど…」と言いながら私の髪を梳いてくれる。
「片岡さんのところで髪は結ってもらいなさいね。あそこが一番上手だから…」
「長く髪と付き合っていると…触った感じで分かるようになるの…冴ちゃんは最近は元気になって…本当によかった」
私は巾着袋の中の御髪を思い出す
「初めてお会いした時のおばあちゃまの髪… とても綺麗で…真白な銀糸の様でした」
「さあ…どうかしらね… あれは歴史が有り過ぎて… 今は軽くなってほっとしているわ… さあ、整いましたよ」
「ありがとう おばあちゃま! 私、ちょっと洗濯しに行ってきますね」
まだだ!まだ!
洗濯物をまとめて、
落ち着いた足取りで、病室を出る。
速足はダメ! 普通の速度で…
洗濯室に身を隠すと
涙がどっと溢れた。
「おばあちゃま、とうとうお菓子も食べられなくなってしまった… ご褒美なんて、いらない! おばあちゃまに食べていただける方が、どれほど嬉しいか!!」
涙を止められないでいると、すっとハンドタオルが差し出された。
加奈子さんだった。
「あの…私 ハンカチあります」と加奈子さんと買ったスカートのポケットからハンカチを出そうとすると、加奈子さんは頭を振った。
「その涙の量は、ハンカチじゃ足りない」
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加奈子さんは私が落ち着くのを待ってから声を掛けてくれた。
「実は洗ったものを干しに行く途中だったんだ。手伝ってくれる?」
二人で屋上に出ると、加奈子さんは、まず風の匂いをかいだ。
「うん、潮風では無いね。大丈夫だ」
二人して、洗った三角巾だの、包帯だのを干していく。
加奈子さん曰く、「リサイクル」だそうだ。
「私、知ってたんだよね… 冴ちゃんが時々洗濯室に隠れて泣いているのを…」
「バレてましたか?…」
「アハハハ 正直言うとね。最初、冴ちゃんに会ったときは『いくら今日子おばさんに似てるからって!大丈夫??』って思った。」
「当然だと思います」
「でもさ、冴ちゃんがこんな風に、ばあちゃんやスグルやウチの父さんの事を想っていてくれることはよく分かるし。今は冴ちゃんの事、本当に大好き! それこそ、妹みたいに思っている。これだけは信じて欲しい!!」
「あ、ありがとうございます」
「これから私の言う事は全てに関してNGなんだけど…。大切なことだから、言うね」
「はい」
「スグルが夜這いしたってのは嘘だよね! あの子はそんなこと、できるはずないから…」
私は俯いてしまった。
加奈子さんは深いため息をつく。
「…ばあちゃんには… もう、時間が無い… ばあちゃんが居なくなっても、私の大好きな“弟”と“妹”がお互いを支え合って生きていけると思っていたのだけど… スグルが嬉しそうに『夜這いしたら冴ちゃんにグーパンされた』って言うのを聞いて… あなた達の間に何があったのかは知る由がないけど…私の側で分かってしまった事がいくつかあるの…」
「はい…」
「まず、スグルの話をするね。アイツ、女性経験はあるのよ。ちょうど10年前、ヤツが15、私が21のとき」
「ひょっとして…」
「違うよ、私じゃない。私の同級生だった女と! 成人の女が中三の男の子にだよ! これはもう強姦だよ!!」
私は手の震えを物干し台のポールを握って止めた。
「その女、他にカレシが居て婚約までしていたのに… 何も知らない私に思わせぶりに近寄ってそのことを耳打ちしたの。 その場で捕まえてフルボッコにして、口を割らせたよ… 『私へのやっかみと女の子のように可愛いスグルの子種が欲しかった』って…」
私は自分の顔が青ざめるのがはっきり分かった。
「私、スグルに言ったの『万一子供ができていても、アイツを病院へ引っ張っていって堕胎させることはできない』って。 そしたらスグルは、ひと言『受け入れる』って、その足で父さんのところへ行って弟子入り志願したんだ…」
私は凍ってしまった目で加奈子さんを見た。
うっすら涙ぐんでいる。
「スグルをあんなにしたのは、あの女だけじゃない、私にも責任がある…だから私は、すぐにどうでもいいヤツと結婚して…同じように“初めて”を奪わせた。 初めから終わりまで不毛だったし…ほどなく別れたけどね」
「前に、冴ちゃんに『ヤキモチ焼いてる』って言ったよね…実は私が冴ちゃんにヤキモチを焼いてるんだ。だってあなたは…スグルが初めて心を開いた女性だから…」
加奈子さんが今までにない鋭い目で私を見る。
「冴ちゃん! あなたはスグルがあなたを守るように、あの子を守ることができる? あの日、どうしてスグルを傷つけたの?!」
私は…答えられない。
と、加奈子さんが私を抱きしめた
「あなたにもきっと深い深い事情があるのだと思う…だけど…それでも…私しかスグルを守る人が居ないのなら、今度は躊躇いなくスグルを守る。
でもね、冴ちゃん! あなたの事も好きなの! 守ってあけたいの。だから一所懸命考えて! 決して早まった結論には飛びつかないで!!」
加奈子さんは、身を離し、背中を向けた。
「あんまりサボっていると師長からしかられるから、行くね」
と立ち去って行った。
ごめんなさい。加奈子さん。英さん。
私は本当に浅はかでした。
そもそも私は自分自身をヒモにするヤツ。例の女よりひどい。
その女が子供が欲しいだなんて…
せめて、前と同じ苦しみを愛する英さんに負わせる事は…
!!
今、私も明確に自覚してしまった…
英さんを愛している
どうしようもないくらいに
その人に同じ苦しみを負わせる事は
絶対にできない。
だから私は
お二人に手紙を書こう
すべてを正直に
少しでも多く嫌われ、愛想をつかされたら
その分、きれいに消え去れる。
ここでの“仕事”が終わったら
手紙を残して
消え去ろう
2023.11.28追加
このテイストも良いかと(#^.^#)
加奈子さんも冴子さんも お互い優しくて 悲しい…




