Moon River ①
今回のテーマ曲はいわゆるスタンダードナンバーですが、私はアイルランドの歌手のMary Blackさんの歌っているのが好きです。アイリッシュウイスキーとの相性はもちろん抜群で、飲みながら聞くと染みます(今は飲めませんが(^^;)
白いワンピースに着替えた。
それからサイドテールをほどいて髪を梳かした。
あかり、
もうだいぶ伸びてしまってパッツン姫カットではなくなってしまったけど
いいよね
あなたの帽子を被って、
あなたの写真を持って
お母さまに会い行くよ。
英さんは『配達ついでに送るよ』と言ってくれたが断った。
時間のやり繰りで、カレは休憩時間を返上するに決まっているから…
昨日今日と好き勝手している私がタクシーで行けば済む話だ。
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住職様は、私たちを庭の見えるいつもの部屋に通して、すぐに二人きりにして下さった。
お母さまに、あかりの面影を見て、私はそれだけで泣きそうになる。
お母さまは畳に手をついて頭を下げた。
「まずはお詫びとお礼を申し上げます。 あなたがお墓の前で“あかり”という名を呼んで泣いていらしたのを私は見ておりました。すぐに娘、とうこの事とわかりました。
娘の為に泣いていただき本当にありがとうございます。 その時は声を掛けられず、申し訳ございませんでした。」
私は小指の端で涙を止めた。
「とうこって…灯りの子と書くのですか?」
お母さまは頷かれた。
「『皆様の行く手を明るく照らすような人になって欲しい』と私がつけた名前でした。その名の通り、健やかに育ってくれていたのに…あの忌まわしい事件が立件されない事になり、あの子は私達からも身を隠してしまいました。」
「あの子の父親も兄も皆様の声をお預かりする立場の仕事をしております。 そういう事を慮ってのことなのでしょうが…私達はあの子の方が…皆様に対しては無責任ではありますが…そんなにもあの子が大切だったのに…」
お母さまもハンカチで涙を抑えた。
「このような仕事をしていると伏魔殿の入口に出会う事もございます。 あの子はその入り口を見知っていて、そこから中へ入っていってしまった…そしてようやく帰って来たあの子は既に小さな箱の中でした…」
「『あの子の行方を捜している人がいる』 悲しみに沈む私達の耳に… そんな話が伏魔殿から聞こえて参りました」
「それで私の事を…」
「ええ、ほんの少しだけ… あなたも伏魔殿にお入りになったのね」
私は黙って頷いた。
「なぜあなたは…あの子の為に泣いていただいのですか?」
「あかり…灯子さんのことは、私が見て、感じたことと、カノジョが語ってくれた以外のことは 知りません だけど、心からカノジョを愛しています。今も…」
トートバックからあかりの写真が入ったフレームを取り出して、お母さまの前でスタンドのくっついている裏板を外した。
写真の裏面はあかりの遺書だ。
お母さまに手渡し、話し始めた。
「私は風俗嬢だったんです…」
。。。。。。
2022年4月21日
あかりちゃんのイラストを追加しました。
今回は短めです。
早く冴ちゃんを“ネバーランド”へ連れていってあげたいのですが…(/_;)