Lovin' You ①
ようやく、グーパン冴ちゃソの話です(^O^)
あれほど錯乱して、その後、グシュグシュ泣いたのに、私は寝入っていた。
目が覚めると、私は英さんの布団を占拠していたけれどカレの姿はなく、主のいない取っ散らかった私の布団の上には雨上がりの日差しが踊っている。
と、その光の中に“どうでもいい”ショーツが晒されていた。
「!!!!」
「ひょっとして! いや たぶん 見られた!!」
もう、めちゃめちゃ恥ずかしい!!
客に下着見られるの全然平気だったのに…
“どうでもいい”下着だから…
違う、今までは下着がユニフォームだったからだ
私は、作業着とかスーツとか、それを着て仕事として型にはまると落ち着くのだ。
きっと、そうでない今の状態が極めて不安定なのだ。
こうして別の事に思考を巡らせ、大事な事から目を反らしている。
私は“どうでもいい”ショーツのように明るい光の中で晒されて、自分のしでかしたことを目の当たりにし、英さんにキチンとお詫びをしなければならない。
お店の方へ歩いて行って厨房をそっと覗く。
先におやじさんに見つかった。
「冴ちゃん、おはよう!」
「お、おはようございます」
英さんがこちらを向いた。
ああああああああ!
しっかり片目が青タンになってる!!!
なのにニッコリして
「おはよう!」と言ってくれるので
私はもう、ひたすら頭を下げまくった。
「冴ちゃん、気にすることないよ。元々夜這い掛けて冴ちゃんを驚かせたのは英なんだから…」
えっ??!!
「そりゃ、いきなりじゃ、ビックリしてグーパンの一つも食らわせるよな。これは英が悪い」
「えっ?! いえ、あの…」
ドギマギしている私に英さんは近寄って、
「驚かせて、本当にすみませんでした」と下げなくていい頭を下げてくれた。
慌てて私も頭を下げたものだから頭が英さんの肩に軽くぶつかってしまった。
ホント、恥ずかしい。
耳まで真っ赤になってるかも…
「取りあえず、お風呂 入ったら」
という英さんの発言におやじさんが反応した。
「えっ?! 途中までしたの?」
「!!!!」 「!!!!」
二人で全力で否定しても…
無駄だった…
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「そんなに謝りたいんだったら、お墓にお参りして、ばあちゃんのところで言ってきてよ」
と師弟が作ったお菓子を持たされ、私は送り出されてしまった。
前橋家と津島家の両方のお墓をお掃除して、今日はまず前橋家のお墓に手を合わせ、英さんを怪我させた事を深く深くお詫びした。
それから津島家のお墓に話し掛けた。
あかり、
私も昨日、自分を壊しそうになったよ
優しい英さんに助けられたけど…
アナタにはその時、誰も居なかったんだね…
その時、その場に私が居て
アナタを助けてあげたかった。
助けることが出来なくて
二人で壊れてしまってもいいのに…
どうして!
私を置いて逝ってしまったの…
どうして!
こんな優しい街に
私を連れて来てくれたの…
きっとアナタこそが故郷に帰りたかっただろうに…
潮の香りを含んだ風が伸びた横髪を揺らして、
頬の涙を
少しだけ拭ってくれた。
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私がおばあちゃまのところへ伺うと
とうにバレてしまっていて
「英がとんでもない事を…」
と謝られてしまった。
「私が悪いんです。私が悪いんです。私が悪いんです」と私も繰り返し繰り返し謝って、お互い収拾がつかない状態になってしまった。
「夫婦喧嘩は犬も食わない」と加奈子さんが私たちの間に割って入って、ようやくお互いの顔をまともに見られた。
それからお持ちしたお菓子を食べていただいた。
食の細いおばあちゃまに、目で楽しんで、かつ、お口にも合うようにと作られたものだ。
今日も食べていただけてほっとした。
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帰り際に加奈子さんから声を掛けられた。
「私、グーパンの事、ばあちゃんに言ってないんだよね。」
「えっ?!」
「冴ちゃん、この街の人と相性いいみたいだよ」
果たして、帰り道の商店街で
ダンナさんに「冴ちゃん気にすんな~」と言われたり「両目パンダにしてしまえば良かったのに」とダイコンを渡してくれる女将さんが居たりして、お店に戻る頃には両手が塞がっていた。
店に入るとあーちゃんたちが待ち構えていて
「冴姉遅い!」
「飲み直しするから付き合って」と袖を引っ張られた。
英さんはニコニコしながら私から荷物を受け取ると、「いってらっしゃい!」と手を振った。
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あーちゃんたちとファミレスに入った。
カノジョたちがケーキセットを頼んだので私もそうした。
さすがJKだ。食べるときは食べる。
「そういう冴姉だってケーキセット頼んでんじゃん」
「私はケーキ久しぶりだからいいの。アンタたち、和菓子はケーキよりカロリー少ないから、それだけ食べられるんだよ。普段はウチの店に来なさい」
「そうねえ~冴姉細いから…おばあちゃんだって早く孫の…」と言い掛けたあーちゃんの横っ腹をちーちゃんが小突いた。
カノジョたちはちゃんと気が遣える子たちなのだ。
あーちゃんは『しまった』と言う顔をして別の話題を振ってきた。
「これ!見つけたよ」と私にスマホの画面を見せた。
見ると誰かのブログで、説明会の時の私の写真が『冴茶ソです』という吹き出し付きでのっている。
ゲゲ!!
「なんか検索したら見つけたんだよね~ 試しに『冴茶ソ』でハッシュタグ検索したら出て来る出て来る…」と次から次へと見せてくれた。
「冴姉だよね?」
まあ、そうだから…頷いた。
「スーツ姿!カッコいいじゃん!!」
「そうだねー 今のかっこと全然違う」
「私、洋服選ぶセンスないから、普段着はダメダメなの」
「そっか…大人かわいいのは私たちも中々選べないから、今度、私達から加奈子さんに頼んであげる」
「加奈子さんって看護師の?」
「そうダヨ。加奈子さんは普段着もカッコ可愛いいから。あと、私たちも冴ちゃソって呼んでいい?『さえねえ』って語感が良くないと思うから」
JKは波に乗ると怖い物なしのようだ。
「それとね! 冴ちゃソ」
もう言ってるし…
「英兄の事なんだけど…」
あーちゃんは一拍置いて続けた
「冴ちゃソ、英兄の大きいの見て、驚いたんでしょ?!」
私は口を付けた紅茶を吹きそうになった。
ちーちゃんとみーちゃんまで顔を見合わせて
「うん、おっきい」と言い合っている。
「だけどね!冴ちゃソ。アソコは赤ちゃんの頭だって通れるの! だから恐るるに足らず!!」
「そうそう、たかだかアレの大きさなんだから」とちーちゃん、みーちゃん
こ、このJKども!! 何を口走ってんだ??
私はテーブルに突っ伏してしまった。
もう何だか!!
どうでもいいや
「冴ちゃソ」
たぶん別の意味で、あーちゃんはポンポンと肩を叩いてくれる。
私はムクリ!と頭を上げた。
「あ~もう! お姉さん、ビール飲んじゃうからね! アンタたちも好きな物、頼みなさい! おごるから」
ピザやパスタや唐揚げや、色んな物をつつきながらのカノジョたちの他愛のない話は私にはとても新鮮で楽しく、ビールやワインの盃を傾けた。
「あ、冴ちゃソ その顔、かわいい!!」
どうやらほんのり赤くなっていたらしい。考えてみればこちらに来てからアルコールも飲んでなかった…
「こうすれば、もっとかわいい」とみーちゃんがポウチからメイク道具を取り出して私の顔をいじり出した。
JKにメイクしてもらっているアラサーって何なんだろう…
「こんな感じかな」と仕上げてもらった顔でみんなで写真撮った。
見せてもらった顔は…
元々、“冴子”の顔は借りて来た感が拭えないのだが…
それとは別の
今まで会ったことのない
可愛い顔が、そこには写っていて
ただただ、戸惑った。
最後にタクシーを呼んでカノジョたちを乗せ、一軒一軒回って挨拶して
私は大人としての面目を保った。
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あーちゃんたちに拉致された時の冴ちゃん
ファミレスでの冴ちゃん
「あ~もう! お姉さん、ビール飲んじゃうからね! アンタたちも好きな物、頼みなさい! おごるから」とのたまう冴ちゃん
このお話のタイトルはこれで行こうと、ずっと前から決めていました。 冴子さんと英さんの二人の為に… これから先、基本、糖度高めを目指します(*^。^*)
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