プロローグ~ダニエラ・プリマヴェラ~
――ん……ここは?
ダニエラ・プリマヴェラが目を覚ますと、ベッドの左右に二人のメイドが誰かを心配している。
「お嬢様! お目覚めになりましたか! 早く旦那様と奥方様をお呼びして!」
「「はい!」」
――あれは……私?
メイドが心配していたのはダニエラだった。
え――どういうことなの?
私はここにいるのに、何で?
――お父様! お母様! 私は、ダニエラはここにいます!
ダニエラは必死に訴えるも声が届いていない。
――行かないで! お父様! お母様! 誰か!
外へ出て行こうとする両親の前に立ち塞がるもダニエラの体をすり抜けて出て行ってしまった。
――あなたは一体誰ですの! なぜ私に成り代わっているの!
目の前自分にもダニエラの声は届かない。
何が起きてるのかわからない。
声も届かない。
姿も見えていない。
目に涙が滲んでくる。
――鏡! 鏡に!
鏡になら映るかもしれない、そうすれば気付いてもらえるかもしれないと。
成り代わりのダニエラの後ろに回り込む。
――映った! 映った!
鏡の前で手を振ったり、体を揺らしたりするも気付いてもらえなかった。
――死んだ? 死んだのは私じゃない! 謝るなら私に謝りなさいよ! 泣きたいのはこっちよ!
自身の泣いた姿を見たら、ダニエラも釣られて泣いた。
――長生きですって! いいから私の体を返して!