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「夜」by よあけのまくらもと

作者: よあけのまくらもと
掲載日:2021/01/30

「夜」


ふと、懐かしい風の音がした。呼ばれた気がした。

私は灯りを消す。夜が手を振っていた。こちらも手を振って駆け寄る。

「久しぶりだね。元気だった?」


夜はこの間話した時よりもっと暗く、色濃くなっていた。

「やっぱり会うたびに暗やんでいくね。」

私が笑いながら話すと、夜も苦笑いしながら言った。

「そういう君はまた眩しくなったなあ。」


しばらくいつものように夜の話を聞いていた。

誰かに背を向けた日のこと。何かを失った日のこと。

深く、色濃く残る、後悔。

どうしようもなく襲われる、虚無感。

ずっと、ずっと苛まれる、罪悪感。

過ちを省みながら、一緒に涙を溢しながら、暗やみに溶け込んでいく。


「でもね。」

私は夜に語りかける。

「俺は夜がいるおかげで、今の自分として生きていられているんだ。夜が暗やんでいくほど、より今を明るく噛みしめられる。ありがとう。そしてごめんね。」

私は夜の涙を手で拭った。

「俺はこれからも夜と共に生きていくよ。会いにきて、一緒に泣くよ。絶対に忘れないし、忘れちゃいけない。夜のいない俺は俺じゃないから。」

私は夜の手を解いて、立ち上がる。

「俺、夜のこと、嫌いじゃないぜ。」

夜は笑っていた。私も笑って、手を振る。

「じゃあな。また会いに来るよ。」


気がつくと夜明けだった。枕元に光が差し込んできていた。


おそらくこれからも私は夜に会いに行く。この先の人生がどんなに眩しくても、ときに夜に向き合い、思いを馳せるその時間が、夜が、今とこれからの自分を照らし続けていく。


また今日も懐かしい風の音がする。


夜が、更けていく。


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