鍵
順調
「……………フレイ」
…あーなんか聞こえるけど眠い…まだ寝かせてー
「……フレイそろそろ起きて」
ぬー。あと少しー
「…………いい加減起きて、重い。」
あ、ちょっ
「いだ!いだだだだだだ!み、耳!耳引っ張らないで!痛い痛い!」
「…………早く起きないのが悪い。私は何度も呼んだ。」
「ごめんな…あれ、膝枕?てか外?何で?」
ちょっと待って膝枕されてものおかしいけど気持ちいいから無視するとして、何で外に…
そして、全て思い出した。
「な、なななナターシャなんで…あれ…助からないって…ユ、ユリウスは!?」
記憶が戻り、とりあえず体を起こす。なぜかナターシャが5体満足無傷でいることに、驚き事情を確認しようとユリウスの居場所を聞くと。
「…………そこ」
ちょっと奥の方で倒れてた。
「ユ、ユリウスは放置なんですね…」
「うん。だって私の膝はフレイのものだから」
そーか僕のものか…ん?あれ?あれあれあれ?
「い、いい今なんて!?あーいやそんなことより事情を…」
そう言う前にナターシャが抱きついてきた。
「あ、ああああああのなななたーちゃざん!?なななにしててて!?」
「し、心配した!私が見た時フレイが、紫のヘドロで覆われてて、ち、血もたくさん流してて…し、死んじゃったかと…思ってて…」
僕がやられた直後来てくれたんだ…なんか全部こっちのセリフ感するんだけど、僕も大概だったな…
「ごめんよ、今生きてるから許してくれ」
抱きしめ返して、安心させるように言い聞かせる。
「やだ!許さない!もう離さない!離れさせないから!」
いつもならありえないくらい感情を剥き出しにしている彼女は、まるで迷子になって見つけてもらった子供のようだった。
「……落ち着いたか?」
「……まだ…」
「そっか…」
結局ユリウスが目覚める約10分後まで、ずっと抱き合ったままだった。
「あー…えーと…とりあえず状況が掴めないんだが、一言言わせてくれ…野外で盛んなのは勘弁してくれ」
と、目が覚めて目の前で抱き合っている僕達を見てユリウスは開口1番にそう言った。
「誰が盛んだ誰が」
一応反論するが
「君らだよ君ら、その状態で自分じゃないとでも思ってるのか?説得力皆無だぞ、いつもだけど。」
知ってた。
「まぁ君らが盛んなのはいつものことだからいいとしてだ。ナターシャちゃん、何があったんだ?僕の記憶では確か君が死にかけてて…それで…そうだ状態や持ち物から考えて明らかに助かるわけなかったんだ…そしたら…」
「まぁ細かい事は聞くなって!神教の司祭かお前は!いいじゃないか、あれがなんであれ結果的にはみんな助かったんだ!これで一件落着だ!」
とは言ったものの、僕も疑問も腑に落ちないところはいくつもある。あのクソトカゲ殺したときに聞いた声、それとその後に聞いた声…明らかに同一のものだった…まぁ考えてもわからんか。
「……まぁそうだな。そういえばあれの魔石落ちてないの?壊してないよね?確か。」
確かに
「壊した覚えはないから落ちてんのかなーって…え、これ?」
「どうした?あったのか?」
いやあったといえばあったんだが…
「…………これ、鍵?」
「おふっ!」
いきなり乗るな!そしてお前鎧系全部脱いでるから当たってるんだよ!
「…………変な声出さないでよ」
「誰のせいだ!誰の!」
「………変態」
投げ捨てるぞこのあま!
「………まあいい。それにしても、これってやっぱり鍵?」
魔石が鍵?それとももともとそういう形状?
「まぁとりあえず持って帰るか…」
そう言ってナターシャを地面に落として、上体を起こした瞬間。
「!?「風撃」!」
突然ナイフが飛んできた。
「だれ!?」
ナターシャが前に出て、スキルをすぐに放てる体勢をとる。
すると奥の茂みに人影がみえ、それが方向を変えてどこかに行こうとしていた。
「あ、待てこら!「スピードスター」!」
逃すか突然殺しにくる不届き者が!
「チィッ!「転移」!」
「あ!逃げんなぁ!」
殴りつけようとしたが、光に包まれて消えてしまい、足取りがわからない。
「くそ…いつからいやがった…気づかなかった…まさか戦っている時も見ていたのか!?まず…」
「フレイ!大丈夫!?怪我してない!?」
ナターシャが飛びついてきた。
「大丈夫!大丈夫ですから離れて!」
もうそろそろ危ないぞ
「フレイ!大丈夫か!?何があった!?」
「おーユリウス、遅かったな。取り逃したよ。」
「いや何を?そして何があった?」
「なんかナイフ投げつけられたから殴りにもとい捕まえに行ったけど逃げられた。」
あ、そうだ。一応証拠品としてこれ持っておくか。
「物騒なのか正当防衛なのかわからん…あ、それが投げつけられたからナイフかい?赤いナイフか…普通の量産品では無さそうだけど…」
そうなんだよね…けどここでその話したってわかるわけないし。まぁいいや、帰るか。
「とりあえず帰ろっか。僕の転移の魔封石で帰ろ。」
「………うん」
うん、ゆっくりと近づいてこないで?危ないよ?僕が。まだ雷に撃たれて死ぬのとか嫌だよ。
「そうだな。あー疲れた。必要以上に疲れたー」
あ、そだ
「あの鍵っぽい魔石回収しなきゃ。」
「…………………それなら、もう回収済み。」
「お、さすが。じゃあ帰りますか。」
帰るために石の入ったリュックを回収しに行こうとすると、目の前に頭をずずい出してくるナターシャ。
「ナターシャ、どけるんだ。荷物を回収せねば。」
「………………もっと褒めて。具体的には撫でて」
「ど、どうしたんすか今日は、妙にぐいぐいくるじゃないですか…」
「…………………………だめ?」
う……
「上目遣いは卑怯だぞ…」
こんな可愛の断れるわけないじゃん…
「…………………ふふふ」
まぁ不機嫌で突然スキル使われるよりは全然いいけど。いろいろと無事じゃないけど。
「っとあったあった。でもこの中から探すのめんどくさいなー」
このまま起動させるか。
「んっ!」
そしてカバンに魔力を流すと
「うわっ!ちょっ!なに!?」
例の鍵型の魔石が光り始めた。
「フレイそれ何!?さっきの魔石じゃないの!?」
「フレイ!」
そして刹那、足元に少し大きい魔法陣が現れ、視界が白で埋め尽くされた。またか…
「っと今回は意識失わなかったな…ユリウスも大丈夫か?ナターシャ…は無事でしたね…」
「ああ、なんとかな…」
「……………もちろん」
腕にくっついてるナターシャはともかくユリウスも大丈夫そうだ。
「全員無事ならいいや、荷物は回収できたからいつでも帰れるしな。してここは一体どこなんだろ。暗くて自分の周囲しか分からん。」
あー荷物にランタンかなんかあった気がするー
「準備めんどくさいから、ユリウス頼んだ。」
「おいおい俺は雑用じゃあないんだぞー。たく。大いなる光よ、我らを照らし導きたまえ「導きの光」」
ああ明るいぃぃぃ!?
「ち、ちょっとなにこれ!?ガチでどこ!?」
そうして光に照らされて見えたのは、禍々しい神殿のような石造の建物だった。
「…………………………」
「これは…」
この2人も言葉を失ったようだった。
「…………どうする?」
「…………………入る?」
「……俺は任せるよ」
じゃあ
「入りましょう。」
とりあえず、武器だけは用意しておこう。あとはこのしがみついてる生き物をどうにかぁ!?
「いだっ!?」
「あうっ!」
建物の少し手前に来た瞬間、何か壁に当たったように顔に痛みがはしり、僕とナターシャは同時に悲鳴をあげる。
「どうした?ここに何かあるのか?」
「こ、ここに結界っぽいのが…」
「…………痛い」
んー、と唸りながら結界を触りながら確認するユリウス。触るたびに波紋が広がっていくだけで、破れなさそうだ…
「んーとりあえずディスペルしてみるか。弱き我らを大いなる厄災から護りたまえ「ディスペルマジック」」
「…………だめだ、反応ない。」
えー…あ、もしかして
「これが原因なら、もしかして。えいっ!」
「ちょっ!?折れたらどうすんだよ!?」
ユリウスの反応とは違い、あっさり差さった。
「えーと…入ったけどこれどーすれば…」
「………えい」
ぐぎっと嫌な音がした。
「ほあああああ!?腕がぁぁああ!?」
「な、ナターシャちゃんなにやってんの!?」
「…………か、鍵なら回したらいいかなって」
う、う…
「腕を回す馬鹿がいるかぁ!」
「………鍵差して突っ立ってるフレイが悪い」
この女…久々にちょっと接触してきてかなーり可愛いなとか思ったのに〜
「どう考えてもお前が悪いだろ!どーすんだよこのう…で?」
「…………?ど、どうしたの?」
ナターシャがちょっとびくびくしながら聞いてくる。
「いや…あの化け物殴り倒したとき、感触的に骨にヒビ入ったか折れたかなって思ったんだけど…今更ながらなんにもなくなってて…」
「………………私的には、あれを殴ってたっていうのがすごいびっくりなんだけど」
「あれは…………すごかったね」
意味不明な戦いをしていたことに呆れるナターシャ、そして言葉にならないのか表現力に欠ける事をいうユリウス。
「いや…それにしてもなんなんだろう…今腕が痛いのは誰かさんが無理に捻ったからだし…それ以外が治ってる…ユリウスは…ちがうよな?状況から見ても反応からしても」
「ああ。でも、心当たりはある。てかあれしかないだろ、あの人型のよくわかんないやつ。あれがナターシャちゃんを治すついでに、フレイの怪我も治した…とか?」
うーん…じゃあつまるところあれなんだったんだろ….
「まぁ考えても仕方ない。てかあれ、いつのまにか結界消えてる。」
「…………………結果的に私が正しかった、謝らない」
強情なところは変わらんなぁ
「はいはい、別に気にするほどの怪我はしてしてないからいいよ別に。さ、行くか。一応武器用意しとけよ?」
そういいながら先頭に立って進んでいった。
「で、これはどういう状況ですか?年齢と彼氏がいない期間が同じの私に喧嘩を売っているんでしょうか?」
僕達は討伐と探索が終わったため、ギルドに成果報告をしに来ていた。
「あ、いやこれはそのこいつが離れなくて…」
「………離さない」
眉をピクピクさせながらも笑顔を絶やさないエイダさん。さすがっす。
「え、えーと…成果報告は奥の部屋で伺いますので、その…一応ユリウスさんが契約したことになっているので、ユリウスさんにも来ていただく必要があるのですが…」
あーそっかー….でもなぁ
「あーあいつならあそこで…」
「全部で銀貨20枚!これは譲れない!」
「いーや、それらの相場は銀貨10枚だ!これ以上では買わない!」
「18!」
「12!」
「はぁ…あの人なんであんなにお金にこだわるのかしら…それさえなければ超優良物件なのに…」
はぁ…と溜息を吐くエイダさん。
「まぁあいつ貴族とはいっても無理やり家を出てきたせいで仕送りもなく、全て自分の稼ぎでやりくりしてますからね。とはいえ、正直なところあんなに値段交渉するのは、ほぼあの姉さんの時だけなんですよ。」
「そ、そうなんですか?」
「はい、他のとこでもたまに売りにいったりするのですが、相場より相当安くされなきゃ突っ掛かりません。まぁ本人から細かくは聞いてませんが、あの人自体が狙いなのかなーなんて」
「….あの子の努力も意外と実を結んでるってことなのかしら…」
え、なにそれ気になる
「え、エイダさん!そのはなしくひぐぅ!?」
「…………近い、離れる」
「は、鼻に指突っ込んで上に引っ張ることはないだろ!?わ、わかったよわかりましたよ…」
うう…顔が怖い…美人が怒ると怖いっていうのは本
当だなぁ。この隣にいる方は美人っていうか美少女で
目の前にいるのがまさに美女ってやつか…それぞれめ
っちゃ睨んでたり笑ってるのに目がわらってなかった
り、いやぁこわいなぁ。
ちなみにナターシャは金髪そして長髪の整った顔を
してて、目はエメラルドグリーンだ。エイダさんは同
じく長い黒髪に黒い目、そしてすごい色気を感じさせ
る体をしている。細かくは言わないが、とにかくでる
とこでてて、引っ込むとこは引っ込んでる。ついでに
ナターシャの、体はまさに少女版エイダさんみたいな
感じだ。簡単に言うと、年相応よりは発育よろしいと
言う感じです。多分。
「そ、それじゃあユリウスさんが戻ったら、声をかけてください。私が案内します。」
10分後
「じゅ、15枚でどうだ?」
「いいだろう…それで手打ちだ…」
2人揃って疲労困憊といった感じだが、なんとか買取価格が決まったようだ。あんな小物の一部でそんなにはりあわなくてもねぇ
「どうだーフレイー勝ち取ったぞー」
「あーそうだねー頑張ったねーお疲れーじゃあ行こうかー」
僕はそのままエイダさんのところに行き、部屋にあんなにされた。
「じゃあ私は担当職員を呼んでくるの…」
「その必要はない。」
エイダさんが、その声がした方を見ると
「ギ、ギルド長!?な、なんで…」
真っ青な顔をしていた
あれ?今ギルド長って…
「わしが、彼らから直接話を聞く。下がっていいぞ」
「は、はい!失礼します。」
「ああ。おっとこれはすまないの。突然で悪かった許してくれ。」
そうおじいちゃんのような口調で話すのは、10代後半。いってても20ちょうどとしか見えないような若い男性だった。
「は、はい!恐縮です!ギルド長!ギルド長に直接会えるなんて光栄です!」
ユリウスが…緊張してる。それもそうか、この人はこのギルド唯一…いや、この国に10人といない最高レベル冒険者の1人なのだ。
「ああ、そんな固くならないでくれ、ユリウス。それにフレイにナターシャだったかな?」
「はい。」
「………………………」
めっちゃ警戒してるなぁ。さっきから腕に張り付いて取れないし。
「まぁ固くならないでくれと言ってそうそうに悪いんだが、本題に入らせてくれ。今回の事は相当重要なんだ。」
重要って…あのクソトカゲ?それとも…
「君たちは、あそこに入ったのか?あの、封印の社に」
次も頑張ります