始まり
まだまだ面白くないと思うんで意見ください!
絶対に……殺してやる。よくも……どうしてこん
な……目に……。くそ…出血で意識が…
「ぎゃああああああ!」
…腕を…腕の切断面を食われた。
「はははは!いいぞ!その悲鳴!恐怖!そして憎悪!貴様の感情がより味を良くする!最後の食事にこんな美味なものを食えるとは、運がいい!ここまで上手いのは何年ぶりか!」
やつは、僕を掴んで、僕を食べて興奮している。
「ご…ごろじてや…」
「すぐに終わらせるのはもったいない、どうせならもっと憎悪に彩られた状態を食いたい!」
「くぞが…絶対……絶対ごろず!」
僕は斬り落とされて既にない腕を上げる。
「あいつに!絶対!ふくしゅぎゃあああ!!あ…あし…がぁぁ…はぁはぁはぁちくしょう絶対にいつか!必ず!………………
遥か昔、人は神から人智を超えた超常の力「スキ
ル」を得た。いつからかは記録に残っておらずわから
ないが、それ以来人類は生まれた時よりスキルを持っ
て生まれる者が現れた。そうした者の多くは冒険者や
騎士、魔法使い、精霊使いなど戦闘を行ったりその他
常人には真似できないようなことを行う職業についた
りするようになった。
これはそんな世界に住む、とある普通の冒険者の物
語。いや、復讐譚である。
1ヶ月前
「やっばい時間に遅れちゃうー!」
僕はギルドに向けて全力で走っていた。あー間に合わないー!!ちくしょうこうなったら…
「『スピードスター』!」
僕の体は爆発的に加速して、周囲では通り過ぎた瞬間強い風が吹く。
「くおらー!!!まちやがれクソガキがぁ!」
ひぃぃぃ!ごめんなさいあとで謝りますぅ!
通りすぎたおじさんに怒鳴られたが、今は気にしてる場合じゃない!
「ま!に!あったーー!!!」
なんとか転がり込んで時間ちょうどに着いた。
ここで一応ギルド、冒険者について説明。殆どのス
キル保持者がなる冒険者は、各国の街、村に必ず一つ
はあるギルドにて冒険者登録を行うことで、その強さ
によってそれに応じたランクレベルを与えられ冒険者
として認められて依頼を受けることができるようにな
る。下がCで、最上位はSランクである。Sランクでも
特に国などからの任命があった場合はその任命された
役職。主に国の賢者や勇者、特定の大貴族のために働
く護衛となる場合が多い。
賢者というのは研究職や戦闘職とも言われるが、簡単
に言えば国からの要請を受けて達成していくのが主で
ある。また依頼のレベルは主として、0は駆け出しの認
定。1〜3はCランク冒険者。Bは4〜6、Aは7〜9。そし
て10は主にSランクの冒険者が受けることが推奨され
ている。
Sランクの冒険者とは、Aランクでも特に凄まじい強
さを誇る者がなれるものであり、まずその絶対数が少
ない。またギルドに来るSランクの依頼は個人の指名
によるもの。
もしくは戦争への参加希望を募るものがほとんどだ。
レベル9まではたしかに適性レベルの依頼を受けなくて
はならないが、10だけは別であくまでSランク以外の
者も参加可能となっている。理由は殆どの依頼が戦争
への参加を募るものだからだ。またランクアップにつ
いては自身のランクを表すC〜Sの区分のほかに、依頼
とは違うレベルが存在しこれは1〜3まである。このレ
ベルを3に上げる事で、ギルドが行うランクアップ試験
を受ける資格が生じる。このレベルはAランクで言え
ば7〜9レベルの依頼を順に達成していき、9のレベル
の依頼を安定して達成できる、と判断されると3に上が
り、Sランクへの試験を受けられるようになる。しか
しレベル9の依頼はあまりなく、これの関係で、受験資
格を得られるAランク冒険者は少ない。
この仕組みにより、冒険者が身の丈は合わない依頼を
受け、無駄死にするのを防止している。こうやって冒
険者を死なせないようにして、かつ効率的に依頼をこ
なせるようにしている組織が、ギルドである。
「はぁはぁはぁ…な、なんとか…間に合った…」
そして立ち上がろうとすると目の前に見覚えのある女の子が立っていた。
「おす!なんとか時間間に合ったぞ!」
彼女は僕の幼馴染兼パーティ仲間のナターシャ。
基本無言である。だが、無言イコール大人しいわけじゃない。その証拠に
「…………………………………………………….」
この圧である。怖い…でもなんとか言いくるめれば!
「あ…いやその…ね?ちょ、ちょっと時間が危うかったのでつい…ね?」
彼女…ナターシャは剣を構えて、剣に魔力を流す。
いや、ちょそれ…
「まっ!ちょっ!」
「『紫電』」
それ痛いやつ!ちょっと待…
「あばばばばびばばぁ!?!?!!」
彼女は雷に関するさまざまなスキルを獲得している。これもまたその数あるスキルのうちの一つだ。本来ならば人間に対しては使ってはいけないような物だ。何かを触媒にして、紫の雷を対象に放つというスキル。そして
「まぁーまぁー落ち着きなってナターシャちゃん!」
そんな声が聞こえた瞬間目の前に魔力障壁が現れ、紫電を防ぐ。
止めてくれたのは、ユリウス・バーティアス。なん
か比較的有名な貴族の四男だったが、四男では家督も
なく、上の兄弟たちに全て持っていかれるからと言っ
て家を出て冒険者になった物好きだ。スキルは魔力に
ちなんだものだが、基本的な戦闘スタイルは剣による
近接戦闘。つまりは魔法剣士というやつだ。ちなみに
名字があるのも貴族だからだ。普通の人は基本名前だ
けだ。そして僕達とは冒険仲間にして、僕の親友でも
ある。
さ、さすがだ我が友よ…助かったぜ…ただ…
「も、もうちょっと…早く助けてくれてもよかったのでは…?」
「いや〜面白かったからさ。いつも通りのやりとりで…」
こ、この野郎…
「ちょっと!皆さんなんの騒ぎですか…ってフレイさん…またあなたですか?」
あ、あはははは…と誤魔化し笑いを浮かべる僕…
「ごめんなさいエイダさん。ちょっとこの馬鹿にお仕置きしてて…」
ちょっと何言っとんねん。
「あ。そうだったんですか。それは何よりですけど、あまり騒ぎを大きくしないでくださいね?」
まてこら
「ちょっとエイダさん!?ひどくない!?」
「ひどくない!?フレイさん!あなたいっつも問題起こしててよく言えますね!もっと常識身につけてから言ってください!」
「あんたギルド職員だろ!?言い方ひどすぎる!」
「普段の行動改めたらこっちも考えます!」
まったく、なんて人だ…
「とりあえず依頼見せてください依頼!そろそろ金が必要なんだよー!」
ん?とエイダさんは首を傾げる。
「最近1人でたくさん依頼受けてるじゃ…」
あ、ちょ
「ああああ!!!と、とりあえず依頼を見ようか!何にする!?」
さ、さすがだぜユリウスさん!助かった!
「お、おおそうだな!じゃあエイダさん!なんか良さげな依頼お願いします!」
「え、ちょ、ちょっと!?」
僕とユリウスはエイダさんを連れてカウンターに向かった。後ろから色々と変な目で見られたが今は無視で。
「ちょっと!ユリウスさんもなんなんですか!いい加減離して…」
「エイダさん!困りますって!最近1人で依頼受けてるのはナターシャには内緒って言ったでしょ!」
僕は小声で言う。
「そうだよ、というかこの時期いつもこんな感じでしょ?去年もその前も。」
「あ……あ、はははー。すいません完全に忘れてましたー」
「もーマジ勘弁してくださいよ!」
「ご、ごめんなさい。あれ?でもいつもなら1週間くらい前にきてなんか高額な依頼ください!って無理やり一個上のランクの依頼を受けていつも死にかけてませんでした?」
そんなことしてたのか?と言わんばかりのユリウスの視線が僕に刺さる。
「あ、いや…ははは。ま、まぁとりあえず今までのはいいとしても、今年だけはダメなんですよ!だって…」
「愛しのナターシャちゃんの元服式だもんな?」
い、愛しのとか言うなし!
「い、いや僕は別に好きとかそんなんじゃなくてそのあいつは大事な幼馴染だし今まで必死に頑張ってきてるんだから元服の時はめっちゃ豪華にしてやろうって思っただけで他意はないですぅ!ほんとですぅ!」
「わかりやす…」
「焦りすぎだから。てかバレてるから。今更隠さなくても…」
「あああとにかく!この事はあいつには言わないでくださいよ!お願いしますよ!」
そう、来月の今日。さっきの彼女、ナターシャが元
服…成人と認められる日となる。男性と女性では元服
が認められる歳が違う。男子は18、女子は16だ。なぜ
かって言うと何百年も前の異界の勇者に関する文献に
書いてあるのだが、その勇者の世界では男性と女性は
さっきのそれぞれの歳で結婚を認められるため、ここ
でもそのように具体的な年齢を定めるべきではない
か、と勇者が王に具申したが為にこうなったらしい。
「はいはい、わかりましたよ。とりあえず今までみたいに無茶な依頼を受けたりしないなら特に言う必要もないですからね。ちゃんとレベル6の適正ランクの依頼を受けてくださいね。」
「………はい、すいません。」
「んんっ!…………………………………………何の話?」
いきなり声をかけられてびっくりした。
「な、ななナターシャしゃんじゃないでしゅか!?ど、どうしゃりぇまじゅっ!?」
し、舌を噛んだ…いたい…
「………………………………………なんでそんなに、動揺してるの?」
ここはもちろん知らぬフリ。
「そ、そんな事はないですよ?」
「…………………………………あやしい。」
な、なんとか話を逸らさなきゃ…
「ま、まぁそれより!今日なにする?迷宮探索か依頼受けでもどっちでもいいぞ!」
「………………………………………これ」
あれ、案外スッと引いてくれた。てか機嫌悪い?僕に選択権なし?…ってこれ
「あのーナターシャさん?」
「…………………………………………………ぷいっ」
機嫌が悪いのはわかるけど、効果音まで口に出すな可愛いな。いやじゃなくて!
「これ未確認モンスターの討伐じゃねーか!」
ほ、報酬はいいけど….いいんですけど!
「……………………………………何か文句でも?」
な、なんだろう…危ないから変えたいんだけどなんか意見できそうな雰囲気じゃないぞ!?
「………………仰せのままに。」
オーケーわかったこれ以上追求するのはまずいって事ですね。
「…………………………………………ふんっ」
くそう。仕方ないこうなったら
「じゃあユリウスも行くぞ」
突然矛先が向いたせいかびっくりするユリウス。
な、なぜ俺?とでも言わんばかりの顔である。
「………………………」
無言の圧と疑問を向けてくるナターシャ。いやだって!
「な、ナターシャさん!聞いてください!君が受けた依頼の!レベルは!?」
「…………………7?」
「オーケーわかった。僕と君のランクは?」
「…………………B?」
そこまで理解しておられるのですね?では
「そこまで理解してるならわかるよね!?これは!本来Aランクの冒険者が受けるような依頼なわけ!僕達が受けるのは無理なの!」
「……………………フレイだって、よく受けてるじゃん。1人で。Cの時に5とか6の。」
……………な、なぜそれを….
「こほん!それはともかく、今回はAランク冒険者が受けるようなものなので、ここにおられますAランク冒険者であるユリウス君を連れて行けば合法となるのです!」
「………………………」
すごい考えてる…
「………………………………………一理ある。」
おし!
「じゃ、じゃあ…」
「……………………ちっ。わかった。」
あれ?今舌打ちした?
「あのーフレイ?俺の意見は…」
「聞いてない」
「デスヨネー」
わかってましたよなんとなくね!と1人頭を抱えてるユリウス。
「フレイさん?」
エイダさんに呼ばれた。
「はい?なんですかエイダさん。」
「あのー受付と依頼についての説明があるのですが…」
「あれ、ナターシャは…」
「ショップの方に」
あ、あいつ僕に受けさせるか!?てかそうじゃん!これ僕じゃあ受けれないよね!?ユリウス任せるしか…!
ユリウスの方を向くと
「じゃあ俺も買い物してくるから、俺の名前使って契約しといてぇ!」
ち、ちくしょう。もう行きやがった…
「フレイさん?」
「…………………はい」
いつものナターシャのような返事をして、カウンターで受付をする。
「いたいた、ナターシャちゃ…ん?」
誰だ?あれ。
俺がフレイを置いてギルド内のショップに行くと、
ナターシャちゃんがフードを被った男と楽しそうに話
していた。少し様子を見てやろうと思ったのだが、話
し相手がこっちに気づいたような素振りを見せてすぐ
に話を終わらせて逃げるようにこっちに来る。
すれ違う瞬間相手の顔を見た。見た事がある顔だっ
た。あれは…
「まぁいいか。」
「…………………ユリウス」
「おわっ!?ナ、ナターシャちゃん!びっくりした。」
「……………来たの?フレイは?」
「あいつは今受付してるよ。ところで今話してたのは誰?」
ナターシャちゃんはすごくびっくりした顔をした
が、そのあと顔を背け
「……大事な(相談できる)人」
「え」
予想だにしない答えに驚き絶句してしまう。
「そ、そうなんだ、へー」
「………………………フレイには言っちゃダメだよ」
「…わかった」
これは要相談だ
すると後ろから突然肩をガシッと掴まれる。
「ユーリーウースー!」
思わずびくっとする。
「お、終わったのかフレイ…」
「やっと終わったぞこのやろう逃げやがって…」
いやなに言ってんの。
「無理やりついた来させたんだから当然だ。」
「ぐぅ…」
ぐぅ…じゃねえっての。
「まぁいいだろ、とりあえず君ら武器は大丈夫なのか?大丈夫なら薬類集めてすぐ行きたいんだが…」
まぁ依頼を受けようとしてたんだから大丈夫か…
「もちろん行けるさ。お前は大丈夫か?」
「こっちから聞いといて準備できてないんじゃ格好つかないだろ。それに、忘れたか?俺の武器は破壊不可の魔法が付与されてるだろ。」
ちなみに破壊不可の魔法は物に直接付与専用の魔法だ。武具等の物に魔法付与する場合はそれを生業とする人間に頼むとできる。
「くっそ。そういえばそうだった。いいなー僕達もやってもらおうかなー付与!なぁ、ナタァァァァ!?」
フレイがナターシャに耳をつままれる。
「…………………………Aランクになってからって約束」
「わかってる!わかってるから耳を離せぇ!」
おーおー仲の良いことで。
「じゃあ薬買って行くか。ちゃちゃっと討伐して、帰ってこようぜ。」
「そ、そうだな。ナターシャはなんか準備の必要あるか?」
「………………………ない。ちなみに消耗品の用意もあるから、フレイの出番はない。」
「僕が役に立たないみたいな感じで言うな!」
ここの夫婦漫才は変わらないなぁ
「じゃ、行こっか。場所は…地図見ながらでいいか、じゃあ出発!」
「「……………………おー」」
フレイはすでに疲れた感じで、ナターシャちゃんはいつも通りの調子で返事をする。
ありがとうございました