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第三章第9話 狩りは得意なんです

「さて、皆さん。今日の夕食はバーベキューですわ」


 王太子様を向こうのコテージに追い出したレジーナさんが少し疲れた表情でそう言いました。


「バーベキュー、ですか?」

「ええ。せっかく湖にきたんですもの。新鮮な魚と山の幸をたき火で豪快に調理しますわ」


 なるほど。それならあたしは得意です。何せ、森でサバイバルしていたときは毎日やっていましたからね。


「そのために、まずは食材集めますわ。湖で釣りをする班と、森に入って採取をする班に分けますわよ」

「あ、あのっ」

「どうしたんですの? ローザ」

「あたし、狩りできます。だから、その、お肉も」

「ああ、そういえばローザは冒険者でしたわね。では、任せてもいいかしら?」

「はい!」


 えへへ。任せてもらいました。


 いつもお世話になりっぱなしですからね。こういうときくらいはしっかり役に立とうと思います。


「ローザ、大丈夫?」

「そうだよ。森に一人で入るなんて危ないよ?」

「大丈夫です。あたし、冒険者ですから」


 ヴィーシャさんとリリアちゃんが心配してくれますが、きっと大丈夫なはずです。


 イノシシか鹿くらいの大物を捕まえて、みんなに美味しいお肉を食べさせてあげましょう。


「ローザさん。危なくなったらすぐ戻るんですの。森の中は危険がいっぱいですの」

「はい。大丈夫です」


 こうしてお肉担当になったあたしは早速森の中へと足を踏み入れるのでした。


◆◇◆


 森の中に分け入ってしばらく歩いてきましたが、ここはとっても豊かな森のようです。あちこちに食用のキノコが生えているだけじゃなく、野生のブルーベリーまで実をつけているんです。


 これを採取してくるのはあたしじゃなくて採取班のレジーナさんとヴィーシャさんのお仕事ですけど、あたしが採ってきたっていいですよね?


 はい。きっとそうです。多ければ喜んでもらえるに違いありません。


 そう考えたあたしはキノコとブルーベリーを片っ端から収納に放り込んでいきます。


「ミャッ」


 そうして歩いていると、ユキが小さく声を出しました。どうやら獲物を見つけたようです。


 ユキが小走りで茂みを奥へと向かっていくので、あたしも足音を立てないようにその後をついていきます。


 さらに私の後ろをピーちゃんがそろそろとついてきます。


 あ、ちなみにホーちゃんは今おねむの時間帯なのでコテージでお留守番をしてもらっています。


 そうして茂みを抜けると、少し離れた木々の合間に立派な角を持ったとても大きな動物が目に飛び込んできました。なんとなく鹿っぽい感じですが、でも鹿とは少し違いそうです。


 だって鹿と違って角の形が平たいですし、顔もなんとなく鹿よりも長い気がします。


 そうだ! ここは鑑定先生に聞いてみましょう。


────

種族:ヘラジカ

説明:非常に大型の鹿

────


 なるほど。どうやらあれは鹿の一種みたいです。


 ということは、食べられますね。


 それじゃあ、今日はあのヘラジカを狩って豪華なバーベキューにしましょう。


 それにあれだけ大きければ、あたしたちだけじゃなくて護衛で来てくれている人たちも食べられると思います。


 あたしはそっとヘラジカに近づきます。それからヘラジカの頭にレーザーでポインティングをして狙いを定めて……。


「魔力弾!」


 あたしの放った魔力弾はヘラジカの頭部を貫通し、さらに向こう側の木の幹にも穴をあけました。魔力弾の直撃を受けたヘラジカはその場に力なく倒れます。


「やったぁ」


 あたしは大急ぎで駆け寄ります。


「うわ、おっきい……」


 遠目からでも十分に大きかったですが、信じられないくらい大きいです。乳しぼりをした牛さんよりも二回りくらい大きいかもしれません。


 これの血抜きをするのはちょっと大変そうですが、やらないと臭くて食べられなくなっちゃいますからね。


 あたしはとりあえずヘラジカを収納に入れると、血抜きをするために湖畔を目指してきた道を戻るのでした。


◆◇◆


「あ、ローザさん。戻ってきたんですの。無事でよかったんですの」

「ローザちゃん、おかえり! あ、でも狩りは……」


 コテージの前で釣りをしていたネダさんとリリアちゃんがあたしを出迎えてくれました。


「ただいまです。えっと、獲物はこれから出すんですが血抜きをしなきゃいけないんです。ちょっと待っていてくださいね」


 あたしはリリアちゃんとネダさんにそう伝えると、湖に突き出るようにして生えている立派な木の下までやってきました。


 はい。ここならあのヘラジカを吊るせそうなので、血抜きができそうです。


 あたしはヘラジカを収納から取り出すとナイフで血管を切り、そして縄で後ろ脚をきっちり縛ってからもう一度収納に入れました。


 あとは、目の前にあるこの突き出た幹にですね。こうやって吊るすようにして収納から取り出します。


「えい」


 収納から取り出されたヘラジカの後ろ脚を縛っていた縄が引っかかり、一気にヘラジカの重みがかかった木と縄がぎしぎしと嫌な音を立てています。


 大丈夫でしょうか?


 折れちゃいそうな気もしますが、どうやら今のところはなんとかぶら下がってくれています。


 えっと、これは……大丈夫、みたい?


「ローザさん? 今のはなんですの?」

「え? ……あ!」


 し、失敗しました。獲物を血抜きするのに夢中で、うっかり収納を他人の見ている前で使ってしまいました。


 ど、ど、どうしましょう?

次回更新は通常どおり 2021/10/09 (土) 20:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヘラジカあるゲームでは現状唯一のバックパックの素材だわあ(重量制限が大変厳しい雪山サバイバルゲーム
[一言] > ど、ど、どうしましょう? ど、ど、どうしましょうねぇwww なんて言ってごまかすか、とっても楽しみです(*´∀`*)
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