第8話 お肉が食べたいのです
2020/12/07 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
どうもこんにちは。ローザです。今日も元気にサバイバル生活をやっていきたいと思います。
さて、今日はですね。唐突ですが狩りをしてみようと思います。
というのもですね。一週間くらい前に火の問題が解決したおかげで食生活は大分安定するようになりました。何しろ、焼きキノコと焼き魚が食べられるようになったんです。
あ、焼き魚はまだ説明していませんでしたね。すみません。
あたし、魚って【収納】スキルを使うと簡単に捕まえられることに気付いたんです。
というのもですね。【収納】スキルって、生き物を入れることはできないんですけど水は入れられるんですよ。だから、魚のいるあたりの水をまとめて収納すると水の無くなった川底に魚だけが残されてぴちぴちしているので、そこを急いで捕まえるんです。
考えたと思いません? あたしもこれを思いついた時は自分のことながらすごいって思いましたもん。
え? 普通に考えつく? そうですか……。
さて、それでですね。食生活は充実してきたんですけど、やっぱりお肉が食べたいなって思ったんです。だって、孤児院にいた頃にたまに出てきたウサギ肉とか、すっごく美味しかったんですよ。
しかも、丁度いいことにこの辺りでもたまにウサギを見かけるんですよ。なんだか頭に角が生えていてあたしの知ってるウサギじゃあないやつも多い気がしますけど、それでもお肉はきっと美味しいと思うんですよね。
そう考えると何だか口の中によだれが……じゅるり。
そんなわけで、ウサギの丸焼きをゲットするべく今日は狩りに挑もうと思います。
と、いうわけで森の中へと出発します。
え? 手ぶらでどうするんだって?
実はですね。この一週間の間にたくさん魔法の練習をしていたんですよ。その結果、あたしは狩猟に最適な魔法を発明したんです。
その魔法は単純で、あたしの魔力をそのまま弾丸にして撃ち込むだけです。あたしはこれを魔力弾と名付けました。
そしてこの魔法、今のあたしでも 10 メートルくらい先の木に穴を開けるくらいの威力があるのでウサギ狩りくらいなら何とかなるんじゃないかと思います。
それじゃあ、ウサギ狩りに行ってきます。
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えっと、はい。何とかなると思っていたんですけどね……。
やってみて重大な事実に気付きました。動いてるウサギに全然当たりません。鑑定先生によると、魔力弾は一発で MP を 3 消費しているので、撃てる回数は 21 発です。すでにもう 10 発撃ってるんですけど、さっぱり当たる気配がありません。
いや、今度こそちゃんと当てて見せます。
じっくりと狙いを定めて……。
撃つ!
バシュン、という音と共にウサギのすぐそばに地面から土埃が上がります。
ああっ! 惜しい!
今回は拳一つ分くらいズレてしまいました。もちろん、いきなり地面が抉れたことに驚いたウサギは大慌てで逃げ出してしまいました。
困りました。どうにかもっと簡単に当てる方法は無いものでしょうか?
えっと、こういう時はやはり夢の事を思い出してみるのが良いですよね。
たしか夢の世界だと、えっと、銃っていうのが主流だったと思います。魔法の力で筒の中に入った弾をドーンと飛ばして当てる武器だったと思います。
それで、こんな感じに腕を伸ばして構えて……あ!
思いつきました!
そうですよ! この銃を撃つみたいに腕を伸ばして、視線を固定して撃てば当たるんじゃないでしょうか?
早速試してみましょう。
逃げたウサギも何十メートルか離れた場所でまた呑気に草を食んでいるので試してみましょう。
あたしはうつ伏せになると右腕を伸ばし、人差し指をウサギの方へと向けます。そして自分の右腕に頭を乗せると集中して魔力を練り上げていきます。
「魔力弾!」
狙いを込めた渾身の魔力弾があたしの人差し指から放たれると一瞬にしてウサギの頭を打ち抜きました。
「やったぁ!」
大成功です! 思わず大声を上げ、あたしは仕留めたウサギへと駆け寄ります。
あ、なんだかきれいに仕留められてますね。あたしの魔力弾が見事に頭を打ち抜いた形になっていて、これなら多分即死でしょう。
やりました! これで今日の晩御飯はお肉です!
あたしはゴブリンから奪った短剣でささっとウサギの解体をします。まずは内臓を抜き取ると毛皮を剥ぎ、それから頭と尻尾を落として血抜きをします。
え? 手慣れている?
そりゃあ当然ですよ。
だって、孤児院でお肉が食べられる時って親切な人にお肉を丸ごと一頭とか一羽寄付してもらった時だけなんです。だから、生きている豚とかウサギとか鶏とかを締めるところからスタートですからね。あたし達も当然手伝いましたし、キュッと鶏を締めたことだってあるんですよ?
このくらいは孤児なら誰でもできる必須技術です。だって、一番お手伝いを頑張った人がたくさん食べられるんですよ?
あ、でもいじめっ子の二人によく奪われてましたけどね。はぁ。
あっと、すみません。暗い話はやめましょう。そんなわけで今は木の枝に蔓で吊るして血抜き中です。
あとは、血が滴り落ちてこなくなるまで待つだけです。
と、丁度その時でした。
あたしのいるすぐそばの茂みからガサリと何かが動く音がしたのでした。