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第78話 おっぱい王子でいいですよね?

「炎弾!」


 あたしは慌ててバラサさんを叩き潰そうとしたゴーレムに向かって炎弾を撃ちました。


 放たれた炎を纏う魔力の弾はゴーレムの右足を貫通し、そのまま地面にぶつかります。


 ですが振り下ろされた拳が止まることはく、バラサさんの太ももをとらえます。


 ドスン、という重たい音と共に血が辺りに飛び散りました。


「あああああああああ!」


 痛みのあまりなのでしょう。バラサさん目を覚まし、絶叫しています。


 一方のゴーレムは、右足がうまく動いていないようですがそれでもバラサさんにトドメを刺すべくもう一度をゆっくりと振り上げました。


「ちっ! 仕方ない。ローザ! ついてこい」


 そう言って王太子様はこちらに向かってくるゴーレムの膝に剣を突き立てて引き抜くとバラサさんのほうへと駆け出しました。


 え? あ、あ、あれ?


 突然の動きにあたしは反応できませんでした。


 膝を突かれたゴーレムは王太子様を狙っていますが、もう一体の無傷のゴーレムは私のほうへと向かって歩いてきています。


 うえええ、どうしよう。どうしよう?


 ねえ! どうすればいいんですか?


 撃ったら増えますし、あの硬いゴーレムはユキたちではどうしようもありません。


 あたしは王太子様のところへと向かう道を塞がれ、後ろに下がるしかなくなってしまいました。


 そして足を怪我させたゴーレム二体なんですが……自分で自分の足をむしり取ってまた分裂しました。


 最初は一体だったのにもう五体に増えています。


 これ、どうしたらいいんでしょうか?



 動きが遅いので走れば逃げ切れそうですが……。


 そうだ! そうですよ! この闘技場から逃げちゃえば良いんですよ!


 そうと決まれば、善は急げです。


「王太子様! あっちの出口に逃げましょう!」


 大声でそう叫ぶとあたしは一目散に自分が入場してきた入口へと向かいました。


「ば、馬鹿! 今は――」


 ゴチン!


 突然見えない何かにぶつかり、目の前に火花が散りました。


「今はこの会場全体にツェツィーリエ先生の結界が張ってある。観客席の生徒を逃がすまで耐えろ!」

「ええっ!?」


 無理に決まってるじゃないですか! それに、こいつは足が遅いんだから逃げられるはずです。


 結界に人差し指の先で触れると、全力で魔力を練り込んた極細の魔力弾を撃ち込みました。


「何をしている! お前の魔力でツェツィーリエ先生の結界は!」


 パリン。


 魔力弾はあっさりと結界を貫通しました。


「何だとっ!?」


 王太子様が何か驚いているようですが、関係ありません。こんな意味の分からないことに巻き込まれて殺されるなんてごめんです。


 その穴に向けてもう一発、今度は大きめの魔力弾を撃ち込みました。すると結界全体にひびが入り、すぐにガシャンという大きな音を立てて砕け散りました。


「ユキ、ピーちゃん、ホーちゃん。逃げますよ」

「ミャー!」

「ピピッ!」

「ホーッ!」


 あたしは一目散に入口の中に入ると王太子様を呼びます。


「こっちです! 早くバラサさんも連れてきてください」

「チッ。仕方ない」


 王太子様は足に大怪我をし、いつの間にか泡を吹いて気絶しているバラサさんを担ぐとこちらに走りだします。


 五体に増えたゴーレムがそれを阻もうと動き出しますが、そうはさせません。


 これだけ離れていれば狙って撃てますからね。


 しっかりとゴーレムの足を狙って、えい!


 あたしは炎弾を撃ち込みます。きっちりレーザーで狙いを定めたので、寸分違わずゴーレムたちの足の付け根を撃ち抜きました。


 ゴーレム達は動きが止まり、その間を王太子様がものすごいスピードでバラサさんを抱えて走り抜けました。


 その結果……ゴーレムは十体に増えました。


「よくも余計な手間を増やしてくれたな」


 そう文句を言ってきた王太子様の目は相変わらずあたしの胸で固定されていました。


 うえぇ……やっぱり気持ち悪い……!


 悪寒が背筋を駆け抜けます。


 こんなときにまで女の子の胸をガン見するなんて、呆れてものも言えません。


 もう、この人。呼び名はおっぱい王子でいいんじゃないでしょうか?

次回更新は通常通り、2021/07/03 (土) 20:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
胴体か頭を撃つのもありですよ。 足の付け根(太もも?)ではなく股間を撃てばよかったのです。 (……千切る?)
[一言] 増える系の対処法は氷漬けか増える速度を超える破壊継続能力
[気になる点] 面白いんだけど、展開が遅いというかテンポが悪いというか… まとめ読みした方が良いのかな… 毎回もやもやしてしまう
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