第51話 お友達ができました
「ああん? なんでてめぇは!」
あたしに絡んできていた男たちが声のした方を振り向きます。すると突然男たちの目の前に眩しい光が現れました。
「うわっ」
「目、目がっ!」
あたしは男たちが陰になっていたおかげで何とかなりましたが、突然の閃光ともいうべき強烈な光を浴びた男たちは目を抑えて苦しんでいます。
「さ、こっちよ」
先ほどの声の主で閃光を放ったと思わる女の人、いえ同い年くらいの女の子がそう言って駆け寄ってくるとあたしの手を掴んで引っ張りまりました。
きっとこれは助けてくれたんですよね。
少なくともこの場に留まるよりはマシだと思ったあたしは手を引かれるがままに走り出します。
そうしてしばらく走り、あたし達の息が切れたところで走るのを止めました。
「はぁ、はぁ、えっと、ありがとうございました」
「はぁ、はぁ、いいのよ。放っておけなかったんだもん」
あたしを助けてくれた女の子はそう言うとまるで太陽のように明るく笑いました。
それにしてもこの女の子、よく見るとかなり整った顔立ちをしています。髪の色は特徴的なピンクゴールドで、それをレイヤーボブで可愛らしくまとめているのですがそれがまたよく似合っています。
背はあたしより多分 10 cm くらいは高そうですけど、これはあたしの背がまだ低いだけですからね。きっと成長期なので追いつくはずです。
「ねぇ、あなたテイマーさんでしょ? どうしてあんなところにいたの?」
「えっと、おススメしてもらった宿屋に行こうとしたら道に迷っちゃいまして」
「どこに行こうとしてたの?」
彼女は明るくそう聞いてきます。その声色には全く悪意を感じられません。地元の人かもしれないですし、助けを求めるのも良いかもしれません。
「えっと、『若鳥の止まり木』っていうところです」
「えっ? 偶然!」
彼女はくりくりとした青い瞳を輝かせながらそう言いました。
「あたしもそこに泊まっているのよ。せっかくだからお友達になりましょう。あたしはリリア。ねえ、あなたのお名前は?」
「え? えっと、ローザです」
「よろしくね! ローザちゃん」
「は、はい。ええと、リリアさん」
「えー、リリアちゃんって呼んでよ」
「り、リリアちゃん?」
「はーい!」
そう明るい声で言ったリリアちゃんはあたしの手を取りました。
「じゃあ、『若鳥の止まり木』まで案内してあげる。行こっ!」
「は、はい」
こうしてリリアちゃんに案内され、あたしは何とか「若鳥の止まり木」に辿りついたのでした。
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ツェツィーリエさんの言う通り、確かにお得な宿でした。何と 15 歳以下の若者には割引があって、本来一泊夕朝食付きのシングルルームが 120 レウのところを 80 レウで泊まれるうえに女性には桶一杯分のお湯がサービスでついてくるんです。ここにユキ達の食事代を別途払う感じです。
しかもあたしが泊まる部屋が最後の一部屋だったらしいので、リリアちゃんに案内してもらえなかったら泊まれていなかったかもしれません。そうしたらあんな男たちがいる町中で野宿なんてことも……。
いえ、ネガティブなことを考えるのはやめにしましょう。あたしは今、夕食を食べるためにリリアちゃんと一緒に食堂にやってきているのです。ただ、残念なことに食堂へはユキたちを連れて行ってはいけないので、ユキたちにはお部屋でお留守番をしてもらっています。
「じゃあローザちゃんはオーデルラーヴァから来たんだ。この町でもやっぱり冒険者をするの?」
「最初はそのつもりだったんですけど、同じ馬車に乗っていた人に魔法学園の従魔科を受験するようにってすごい説得されて、それで受験だけでもしてみようかと思うんです」
「えっ? ローザちゃん、12 歳になってたの?」
「はい。実は……」
「あー、そっか。でもよく考えたらおっぱい大きいもんね」
う、それ言われると恥ずかしいです。
「最初は 10 歳くらいかと思ってたけど、よく考えたらそのおっぱいで 10 歳はないもんね。どうなってるのそのおっぱい」
リリアちゃんが自分の胸に手を当てながらあたしの胸を見比べていますが、恥ずかしいのでおっぱいを連呼しないで欲しいんですけど……。
ただ、幸いなのは食堂はとてもざわついていてあたし達の会話を誰も気に留めていないところでしょうか。
ですが、やはりここは話題を変えるところでしょう。
「あの、その魔法学園ってどこにあるんですか?」
「え? まだ行ってないの?」
「はい。今日着いたばかりですから」
「そっか。それじゃあ丁度いいから明日一緒に行こうよ! あたしも手続きしに行くつもりだったし」
「え? いいんですか?」
「もちろん! お友達のためだからねっ」
「ありがとうございます」
何だか、リリアちゃんってすごい親切ですね。明日やることもできましたし、おいしいこのご飯を味わって食べることにしましょう。
「それよりも、どうやったらそのおっぱいはそんなに大きくなったの? ねえ、秘訣を教えてよぉ」
ううっ。おっぱいを連呼するのはやめて下さい。ホントに恥ずかしいんですから。





