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テイマー少女の逃亡日記【コミカライズ連載中】  作者: 一色孝太郎
第二章

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第43話 魔物が襲ってきました

2021/01/18 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

「そう。それでゴブリンに村を滅ぼされたローザちゃんはあのオフェリア隊長に助けてもらったのね」

「オフェリアさんを知ってるんですか?」

「それはもちろん。オーデルラーヴァの女性騎士のトップでしょう? 世界的にも有名な火属性の使い手で、騎士団の中でもかなりの腕前の天才魔法剣士だって聞いたわ。二つ名は確か、赤焔(しゃくえん)の戦乙女だったかしら?」

「へぇ。そうなんですね」


 なんだかオフェリアさんを知っている人がいると嬉しくなります。


「じゃあ、わざわざ町を出たってことは魔術がバレちゃってたのね?」

「え?」

「ふふ。当たりでしょう?」


 ツェツィーリエさんはそう言うといたずらに成功したような笑顔を浮かべます。


「は、はい」

「あそこの特権階級の連中は平気でそういう事をするのよねぇ。あ、マルダキアではあんまりそんなことは無いわ。もちろん強引な人もいるけれど、一切合切を無視してできる人なんて王家とその血を引くいくつかの貴族家くらいだから安心して?」

「は、はぁ」


 いくらなんでも王様や王子様にあたしが会うなんてことはないでしょうし、それなら安心、ですかね?


「さ、それじゃあ遅くならないうちに寝てしまいましょう?」

「はい。じゃあ、ホーちゃん。今晩もよろしくね?」

「ホー」


 あたしはホーちゃんを森に放つとツェツィーリエさんのテントの中に入れてもらいました。


 テントの中は思ったよりもかなり広く、ツェツィーリエさんと旦那さんが寝てもまだあと二人は寝られそうな広さがあります。


「えっと、それじゃあおやすみなさい」

「はい、おやすみなさい。ローザちゃん」

「おやすみ、ローザちゃん。良い夢をのう」


あたしは寝袋に(くる)まって横になります。昨日と同じようにピーちゃんが枕になってくれます。


 ユキにも抱き枕に、と思ったのですがまだ眠くなさそうなのでそのままにしておいてあげることにします。きっと眠くなったら勝手に寝袋の中に潜り込んでいるでしょう。


 それじゃあ、おやすみなさい。


****


「ホー! ホー!」


 いつの間にかテントに戻ってきたホーちゃんがあたしの耳元で鳴いています。


「ううん。ホーちゃん?」


 ホーちゃんの声に目を覚ましたあたしは眠い目を擦りながらもなんとか目を開けました。すると目の前にホーちゃんの顔があります。


「うわっ。どうしたんですか? ホーちゃん」

「ホー」


 ホーちゃんは翼で外を指しています。どうやら外で何かがあったようです。


 あたしはもぞもぞと寝袋からはい出ると靴を履いてローブを羽織るとテントの外にでます。


「ホー」

「シャーッ」


 ホーちゃんが道を挟んで反対側の森を翼で指し、同じ方向に向かってユキが威嚇をしています。


「嬢ちゃん!」


 馬車の脇でグスタフさんと御者さん達が剣を抜いて道の方に立ち、やはり森の方を警戒しています。


「グスタフさん。何があったんですか?」

「あの気配は魔物だ。しかもかなり大型のな」


 大型の魔物!


 一体どんな奴なんでしょうか?


 しばらく一緒に森の方を睨んでいると、目の前の森の茂みがガサリと揺れ、そしてとんでもなく巨大な熊が現れました。四つ足で歩いてきているというのにすでにあたしの背丈の二倍、いえ、三倍くらいはあります。


「チッ。あいつはジャイアントマーダーベアだ。冬のこの時期に出て来たとなると、あいつは相当飢えているな」

「か、勝てるんですか?」

「……厳しいな。少なくとも一人や二人で挑むような相手じゃあねぇな」

「う……。じゃ、じゃああの三人組にも協力してもらって、全員で戦えば……」

「……難しいな。まず、あいつらじゃ戦力にならん。いや、待てよ? 囮くらいには使えるな」


 そう呟いたグスタフさんは馬車の中に声を掛けます。


「おい。お前らも出てきて戦え。ベテランの冒険者なんだろう? それとも全員で仲良く死にたいのか?」

「ば、馬鹿を言うな! ジャイアントマーダーベアなんてやってられるか!」

「そ、そうだ。こんな時のために馬車には護衛がついているんじゃないか!」

「お、お、俺たちは勝てねぇ戦いはしねぇんだ! 死んだら終わりなんだからなっ!」


 うわぁ。何だかものすごく情けないことを言ってますね。あんなに偉そうにあたしに色々と絡んできたくせに。


 死んだら終わりというのはそうだと思いますが、ここで協力せずに御者さんやグスタフさんがやられてしまったらどのみち終わりだと思うんですけどね。


「チッ。腰抜けのクソどもが」


 グスタフさんは説得を諦めたようです。そうして睨み合っていると、ジャイアントマーダーベアは少しずつこちらに近づいてきます。


「おい、嬢ちゃん。俺たちはもう完全に獲物として見られている。嬢ちゃんの魔術はあいつに通じるか?」

「わかりません。撃っていいですか?」

「ああ。やれ!」

「わかりました」


 あたしは魔力を練り上げると狙いをジャイアントマーダーベアの眉間に狙いを定め、そして炎弾を発射します。


 バシュッという音と共に狙い通りの位置に炎弾が着弾しましたが、あたしの炎弾は僅かに傷を作っただけで仕留めることはできませんでした。


「チッ。あれだけの貫通力があってもダメか」


 グスタフさんが悪態を吐き、そして小さいとはいえ傷を負わされたジャイアントマーダーベアは怒り、大きな唸り声をあげたのでした。

次回更新は 1/21(木) 20:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何も言わない何もしないならムカつこうがキレようが資格ねぇよ
2022/01/03 17:57 退会済み
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