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第35話 目をつけられたようです

あけましておめでとうございます。


本作は一章完結までは隔日、それ以降は週に一、二回を目途に二章完結を目指して執筆を続けていく予定となっております。


本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 どうもこんにちは。ローザです。ゴブリン退治から二週間が経ちました。


 レオシュ達を中心とする第一隊の奴らが第七隊のお姉さん達に嫌がらせをしていること以外は今まで通りの生活です。お姉さんたちはあたしを可愛がってくれますし、お勉強も教えてもらえるし、それに何より毎日ちゃんと食事が食べられるっていうのが本当に嬉しいんです。


 もう、孤児院に戻れって言われても絶対無理な気がします。それなら森でのサバイバル生活に戻るほうが遥かにマシです。


 さて、そんなこんなであたしは今日も図書室で一人で本を読んでお勉強をしています。やっぱり、知らないことを学べるのって本当に楽しいですよね!


 今はお薬についての勉強をしているんです。薬草やお薬の調合について勉強をしてちょっとでもオフェリアさん達の役に立てたらいいなって思いまして。


 もちろん魔法にも興味はあるんですよ? ただ魔法の使い方を解説した本って無かったんですよね。でもそれってよく考えたら当然で、みんな多かれ少なかれ必ず魔法は使っているんですよ。


 あたしも森の中ではじめて魔法を使えた時は感動しましたけどね。でも今になってよく思い返してみると、あれって孤児院で火の魔道具を使うときに魔力を使っていたことの応用だったって気付いたんです。


 だから魔力の扱い方なんて誰だって小さい時に自然に覚えるわけですからそういったレベルの入門書なんて誰も読まないと思うんです。


 かといって攻撃魔法のレベルで魔力を扱える人はものすごく少ないですから本を書いても読む人がいないでしょうし、そもそも魔法はイメージが大切なので読むよりも習った方が多分簡単だと思うんですよね。


 唯一見かけた魔法関係の本は魔道具の理論みたいな本なんですけど、あたしにはちんぷんかんぷんでした。何だかこう、読める文字で書いてあるはずなのに何が書いてあるかさっぱり分からなかったんです。もう、あっという間にギブアップしてしまいました。


 魔道具は魔道具士っていうすごく勉強した頭の良い人が作っているそうです。魔道具士はすごく儲かるらしいですけどなるのが難しくて、マルダキア魔法王国の学園に通うのが一番らしいです。ただ、入試があるそうなのであたしには絶対無理ですけどね。


「ローザちゃん。そろそろ図書室を閉める時間だよ」

「え? はーい」


 気付けばもう夕方になっていました。あたしは本を元の場所に戻すと女子寮へと戻ります。


「ユキ、行こう」

「ミャー」


 図書室の出入り口にある司書さんの机の上で丸くなっていたユキが返事をするとすっと立ち上がり、あたしの足元までやってきました。


「ユキちゃんは本当に賢いねぇ。ローザちゃんの言う事を理解しているみたいだよ」

「自慢のうちの子ですから」


 あたしが笑顔でそう言うと、司書さんは「そうだね」と穏やかな笑顔を浮かべます。


 最初は司書さんも猫を連れてくるなんて、と嫌がっていましたが今ではユキのファンの一人になってくれています。最近はふわふわの毛並みを撫でるのを楽しみにしている節もあるくらいです。


「それじゃあまたね」

「はい」


 司書さんに見送られて図書室を出たあたしはそのまままっすぐに女子寮を目指します。


「今日の夕食のメニューは何かな?」

「ミャー」


 そんな他愛もない会話をしながら歩いていると後ろから声をかけられました。


「おい。そこのガキ」


 げ、この声は。


「おい。無視するな。ガキ!」

「……なんでしょうか?」


 あたしが振り返ると、何故かしかめっ面のレオシュが一人でこちらにやってきます。


 そしてあたしの目の前まで来ると上から見下ろしてきました。


 う、怖い。


「お前、魔術を使えるだろう?」

「え……?」


 ど、どうしてバレたんでしょうか?


 あたしは動揺してついユキを抱き上げると胸に抱えます。ユキの温もりが感じられて少しだけ気分を落ち着けることができました。


「やはりそうか」

「え? あ、あたしはそんな……」

「知っているぞ。ゴブリンの頭に小さな穴を開けたのはお前だな?」


 そう言ってレオシュは顔を近づけると睨み付けてきました。


 うええ、怖い。


 あたしはどう言い訳をして逃れようか考えますが、頭が真っ白になって上手く反論できません。その時、司書さんの穏やかな声が聞こえてきました。


「おや? 何をしているんですか? レオシュ君」

「なっ?」

「おや? ローザちゃんじゃないか。レオシュ君、ダメですよ。ローザちゃんは未成年とはいえ女性なのですから、デートに誘うならマナーを守って優しく誘わないとダメですよ?」


 司書さんはつかつかと歩いてくるとレオシュの肩にポンと手を置きました。


「分かりましたね?」

「う、は、はい……」


 レオシュは苦々し気な表情を浮かべつつも、そのまま司書さんに一礼してから立ち去ったのでした。


 あのレオシュをあんな風にやり込めるなんて! 司書さんすごい!

遠藤鶴様より素敵なレビューを頂きました。


シリアスで暗く厳しい世界観を主人公の冷静に周りを観察する性格と敬語での語りが程よく中和しており、主人公が危機に陥ってもきっと乗り越えてくれると安心できる個性的な作品とのことです。


素敵なレビューを頂きありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
お触りマンは紳士(猫好き)
[良い点] おまわりさんこいつです
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