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第3話 一難去ってまた一難です

2020/12/07 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

 どうもこんにちは。ローザです。なんだかまたまた大変な事になりました。


 ええと、どこから説明したらいいでしょうか? すみません。あたしもちょっと混乱しているというか、動転しているというか。


 すー、はー。すー、はー。


 はい。すみません。お待たせしました。ええとですね。あのあとナタリヤさんにお湯で体を洗われてですね。汚れを落としてもらってたら頭領とやらのところへ連れて行かれたんですよ。


 こんな 11 歳のがりがりの女の子にそういうことをするなんて、ここの頭領とやらはロリコンですよね。


 もちろんあたしは好きでもない男にそんなことされるのは嫌だし、どうやって逃げ出そうかって必死に考えていました。


 そうしたらですね。なんだかいきなり外がものすごく騒がしくなったんです。ギー、だかギャーだかよく分からない叫び声と男の人の悲鳴やら怒号やらが鳴り響いて。


 それで頭領とやらはあたしに何もせずに剣を片手に飛び出していったんです。


 その様子を呆然(ぼうぜん)と見送ったあたしはハッと気付いたんです。


 これは逃げ出すチャンスだって。


 それで音を立てない様にひっそりと扉の外に出て見たらですね。びっくりです。


 なんとあの頭領さん、死んでたんですよ。顔がボコボコになっていたんで、多分たくさん殴られたんじゃないですかね?


 で、その周りにはあたしくらいの大きさの緑色の気持ち悪い二足歩行のやつがいっぱいいたんです。


 そう、ゴブリンってやつです。ゴブリンといえば害悪、害悪と言えばゴブリンというくらい有名なあの魔物です。


 ゴブリンはものすごい勢いで増えて人里を襲って、それで男の人は皆殺しにされて喰われて、女の人は連れていかれて死ぬまで子供を産まされるっていう最悪の魔物で、完全なる人間の敵です。


 それで、ですね。まあ、そんなところに出ていったわけですから当然、あたしはゴブリンどもに見つかっちゃった訳なんです。


 もちろん、必死で逃げましたよ? もう、足が棒になって動かなくなるんじゃないかってぐらい必死に逃げましたとも。


 でもですね。ゴブリンはものすごいたくさんいて逃げ場なんてどこにもなくて。それであっという間に捕まっちゃいました。


 ああ、そうそう。ゴブリンってものすごく臭いんですね。知りたくなんてありませんでしたけど、今回はじめて知りました。なんかこう、ツンとしたような()えた臭いで鼻が曲がりそうです。


 と、そんなわけであたしはゴブリンの(ねぐら)の洞窟に連れて来られて木でできた牢屋の中に入れられています。殺されなかったのはこんな栄養不良のがりがりでも一応女の子だからなんでしょうね。


 あたしはまだだから子供は産めないと思いますけど。


 あ、一応あたしはまだ何もされていないので無事です。


 その、言いにくいんですけどナタリヤさんも一緒に攫われたみたいなんです。それでナタリヤさんはこの牢屋の中ではなく別の場所に連れて行かれたので、きっとそういうことなんだと思います。


 それにしても、どうしてあたしばっかりこんなひどい目にばかり合わなきゃいけないんですかね?


 孤児院で散々あたしをいじめたイヴァンやグレゴリーは普通に暮らせているのに、不公平だと思いませんか?


 神様って、あたしのこと絶対嫌いですよね?


 いっそ、夢の中の世界が現実だったらよかったのに。それこそ、「あろう小説」の主人公たちみたいにあたしにもチートな能力でもくれませんかね?


 ねぇ、神様?


 そんなこと思ったって誰も答えてくれません。牢屋の格子は木で出来ているとはいえ、あたしの力ではどうしようもありません。


 今度こそ万事休すって奴ですかね。


 あーあ。もう諦めて今日は寝ることにします。おやすみなさい。


****


 おはようございます。といっても、洞窟の奥でほとんど明かりもないので今が昼なのか夜なのかもよく分からないんですけどね。でも、あたしが起きたのでとりあえず今が朝ってことにしておきます。


 あれ? 明かりが近づいてきます。


 松明を持ったゴブリンがやってきたみたいです。その手には何かお皿のようなものを持っています。

 

「ゲギャギャ。ギー」


 意味不明な鳴き声を出したゴブリンはあたしにそのお皿を差し出してきました。


 えっと、これは、食べろってことですかね?


 松明の光で照らされた器の中身を見てみると……。


 うっ。いくら孤児院でひもじい暮らしをしていたといえ、これはとても食べられたものではありません。


 なんか、こう、形容しがたいのですが、凄まじい臭いと怪しい色でいかにも毒って感じの何かです。


「こんなの、食べ物じゃないですよ。あたしは食べません」


 あたしはそう言ってそのまま牢屋の壁際に下がって横になりました。だって、あんなの食べたらきっとおなかを壊して逃げようと思ったときに逃げられなくなりそうですから。


 あたしだって孤児院の食事が足りなかったりいじめっ子達に取られて仕方なく拾い食いしたこともありますけど、あれを食べちゃダメだってことくらいはわかります。


 そして一向に食事らしき怪しいモノを食べようとしないあたしを待つのが嫌になったのか、そのゴブリンは器を牢屋の中に置くとそのまま立ち去ったのでした。


 あの? ちょっと臭くて気持ち悪くなるんでそれ持って行ってくれませんか?

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