表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
298/298

第五章第30話 トレスカに帰ってきました

 夏休みが終わるギリギリになってしまいましたが、あたしはトレスカに戻ってきました。そしてすぐに王様に向こうであったことを報告し、預かった親書を手渡しました。


 そうしてすぐに公爵邸……じゃなかったです。あたしのお家に戻り、ものすごく久しぶりに自分の部屋に戻ってきました。


 といっても、寮で過ごしているほうが長いのであまり自分の部屋って気はしないんですけどね。


 ……ふぅ。なんだかこう、どっと疲れが出た感じです。あたし、思っていた以上に気を張っていたみたいですね。


 はぁ。


「ミャ?」


 あたしのため息にユキが心配そうに見上げてきます。


「あ、大丈夫です。ちょっと疲れたなって……」

「ミャッ」


 ユキがあたしによじ登ってきました。


「ちょ、ちょっと、ユキ?」


 あたしはユキを落とさないように支えながらベッドに腰を下ろします。するとユキはそのまま膝の上に乗ってあたしを見上げてきます。


「大丈夫ですよ。ちょっと長旅だったからですから……」


 ……でも、本当は……。


「ピピッ!」

「え? ピーちゃん?」


 ピーちゃんがぴょんとジャンプしてベッドの上に乗ってきました。


「ホー!」


 ホーちゃんはタンスの上で片方の翼を広げています。


「……はい。そうですね。大丈夫です。あたし、頑張りますから!」

「ピピ?」

「ミャ?」

「ホー」


 あ、あれ? なんだか思っていたのと違う反応です。


 コンコン!


「あ、はい! どうぞ」

「旦那様がお戻りになられます。どうぞお出迎えを」

「あ、はい! すぐに行きます!」


 あたしはメラニアさんに呼ばれ、お義父様の出迎えに入口へと向かいます。


 そうしてエントランスホールでお義母様やお義姉様、そして執事さんやメイドさんたちと一緒に待っていると、お義父様が入ってきました。


「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」


 執事さんやメイドさんたちが一斉に頭を下げ、その間をお義父様があたしたちのほうへと歩いてきます。


「お帰りなさい、あなた」

「ああ、ただいま」


 お義父様がお義母様とハグをします。


「レジーナも」

「お帰りなさい、お父様」

「ああ、ただいま」


 お義父様がお義姉様とハグをしました。


「ローザも、おかえり」

「は、はい。ただいまです」

「うん。おかえり」


 あたしはお義父様に優しくハグをしてもらいました。


「ローザ、色々と大変だったみたいだけど、元気そうだね」

「はい。えっと、ツェツィーリエ先生がいましたし、それにフリートヘルムさんもいい人で……あ! あと皇帝……陛下もなんだか優しい人でした」

「そう。それは良かったね。詳しい話を聞かせてくれるかい?」

「はい!」

「うん。じゃあ、ちょっと話そうか」

「はい」


 こうしてあたしはお義父様に連れられ、お義父様のお部屋に向かうのでした。


◆◇◆


 それからあたしは旅先であった出来事を事細かに伝えました。


「……そう。そうか。大変だったね」

「はい……」

「でも、ピーちゃんが魅了を解除する力を得たのは素晴らしいことだね」

「はい! そうなんです! ピーちゃんってすごくって!」

「うんうん」


 お義父様は優しい目をしながら(うなず)いてくれています。


「あ! そういえば、皇帝……陛下からの親書を預かっているんでした」

「む? ハプルッセンの皇帝から?」

「はい。これはお義父様にって」


 あたしは収納の中から預かった親書を取り出し、お義父様に差しだしました。


「うん。ありがとう」


 そう言ってお義父様はすぐに封を開け、中を確認します。


「……陛下へのものとほとんど違いはないね」

「あ、そうなんですね……」


 するとお義父様は不思議そうな表情を浮かべながら聞いてきます。


「中身については何も聞いていないのかい?」

「はい。仲良くしたいって言われましたけど……」

「うん。そうだね。まとめると、ローザが来てくれたことに対する感謝と、それから今後も仲良くやっていきたいってことが書いてあったよ」

「あ、そうなんですね……。よかったです。別になんて何かあるのかなってちょっと心配だったんですけど、やっぱり皇帝陛下はいい人なんですね」

「そうか……」


 お義父様はそう言って険しい表情を浮かべました。


 え? えっと……。


「そうか。ただね。違いもあるんだ」

「えっと……」

「それはね。国同士だけでなく、ハプルッセン帝国としてはマレスティカ公爵家とも親密な関係を築きたいと書いてあるところだね」


 えっと? 何かおかしなことなんでしょうか?


 あたしが困っているのを察してくれたのか、お義父様は苦笑いを浮かべます。


「要するにね。これはローザとの政略結婚の打診だよ」

「えっ!?」


 せ、政略結婚って……もしかしてあのフランツとですか!?


「……結婚はローザの意志を尊重するよ。嫌なら断りなさい。学園でのことは聞いているからね」

「は、はい。嫌です」


 ああ、良かったです。


「うん。ならばこの話はなかったことにしよう」

「ありがとうございます」

「ところでローザ」

「はい」

「そろそろ結婚相手を考えてもいい年頃かもしれないね。やはりレフ公子殿下がいいのかい?」

「えっ!? えっと……」


 公子様はいい人ですけどそこまでは……。


「おや? そんな感じなのか。なら、卒業後はどうするつもりなんだい?」

「えっと……卒業できるように頑張ります」


 まだ魅了の解除ができていませんし……。


「うん? そうかい? でも、あと半年で卒業だろう? 結婚も考えていないってことは、やはり進学するのかい? それとも何か就きたい仕事があるのかい?」

「そ、それは……」


 卒業できるかも分からないのに、その後の進路だなんて……。


「ならば、なおのことどうしたいのかをきちんと考えなさい。ローザが幸せになるにはどうしたらいいのか」

「は、はい。でも……その、まずは卒業できるように頑張ります」

「うん、そうだね。でも、進路は今のうちに考えておきなさい。いいね?」

「はい……」


 あたしがなんとかそう答えると、お義父様は満足げに頷いたのでした。

 次回更新は通常どおり、2025/10/25 (土) 20:00 を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ばかめ、これは息子に任せられる案件ではない! (健全な可愛がり)
結婚相手は皇太子かもしれないけどね 前みたいに帰国途中で襲われなかったか 皇太子が~とか思ってました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ