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第五章第27話 皇帝に挨拶をします

2025/10/10 名前の取り違えを修正しました

 ピーちゃんがエッカルトさんの魅了の解除に成功したのを見てもあたしは魅了を解除することはできず、ついに帝都を出発する日がやってきました。あとは皇帝に挨拶をして、フリートヘルムさんにお別れをしたら帰るだけです。


 というわけで、あたしは今、ツェツィーリエ先生たちと一緒に馬車に乗って宮殿へと向かっています。


 ……思い返せば、最初は不安でいっぱいでした。でもフリートヘルムさんは優しくて素敵な男性……あれ? 女性でしょうか?


 えっと、とにかく素敵な人でしたね。それに、ちょっと身構えていましたけど帝都の人たちも皆さん普通の人でした。


 ……ルクシアの奴らの魅了でおかしくされてしまった人以外は。


 どうすれば魅了の解除ってできるんでしょうか?


 お姉さんたちを元に戻してあげたいのに……。


 あたし、ダメですよね。ツェツィーリエ先生がこんなチャンスを用意してくれたのに。


 はぁ。


 あっと、いけません。思わずため息をついちゃいました。


「ローザちゃん、どうしたの?」

「え?」


 そんなあたしを心配したのか、ツェツィーリエ先生が声を掛けてきました。


「えっと、結局うまくできなかったなって……」

「あらあら。でも、ピーちゃんが覚えてくれたじゃない」

「でも……あたしもできるようになりたかったです」


 はぁ。もしピーちゃんが言葉を話せれば、コツとか教えてもらえるんでしょうか?


 それにしても、ピーちゃんって本当にすごいですよね。ラダさんを救えたのだってピーちゃんのおかげです。


 あたしなんかよりもよっぽど……。


「ピピ?」

「え? えっと……」

「ピピ~」


 ……何を言いたいのかよく分からないですけど、なんとなく慰められているような気がします。


 あたしは膝の上のピーちゃんをそっと()でました。


 ぷにぷにしていてひんやりしていて、いつものピーちゃんです。


「ピピ~」


 ピーちゃんはそう言うと、体をふるふると震わせるのでした。


◆◇◆


宮殿に到着すると、あたしは今回もラダさんにエスコートしてもらって謁見の間の入口にやってきました。


 しかも今回はなんと、ユキたちも一緒なんです。前回は馬車に残ってもらっていたんですけど、なぜか連れてきていいって言われたんですよね。


 皇帝はニコニコしていて、なんだか優しいおじいちゃんって感じの人だったので、きっとあたしの大事なお友達を見たいって思ったんじゃないでしょうか。


「マレスティカ公爵令嬢、どうぞお入りください」

「はい」


 扉が開かれ、あたしは謁見の間に入りました。すると左右にずらりと並んだハプルッセン帝国の偉い人たちの視線が一斉に注がれます。


「……魔物?」

「スライムだ」

「汚らわしい」

「テイマーだそうだ」

「……嘆かわしい」

「テイマーがなぜ猫とフクロウを?」

「公爵令嬢の戯れだろうな」

「そうだな。普通ならスライムなどを従えるはずがない」

「やれやれ」


 ……あの、聞こえてますよ。それに、ユキたちはあたしのお友達です。戯れなんかじゃありません。


 でもこんなのにいちいち怒って突っかかるわけにはいきません。ここでトラブルを起こしたらお義父様に迷惑を掛けちゃいますからね。


「やあ、ローザ嬢。よくぞ参った」


 あたしが玉座の前まで行くと、皇帝はニコニコと優しい笑みを浮かべながらそう話しかけてきました。


「マルダキア魔法王国マレスティカ公爵が養女、ローザ・マレスティカが皇帝陛下にご挨拶申し上げます」


 あたしが礼を()ると、皇帝はすぐに(うなず)きます。


「うむ。楽にするが良い」

「はい。ありがとうございます」


 あたしはすぐに窮屈なカーテシーを止めました。ですがあたしの隣ではツェツィーリエ先生が礼を()り続けています。


 するとそれに気づいたのか、皇帝はややぶっきらぼうにツェツィーリエ先生にも声を掛けます。


「ああ、教諭もよくぞ参った。楽にするが良い」

「マルダキア魔法王国魔法学園教諭ツェツィーリエ・イオネスクが帝国の太陽たる皇帝陛下にご挨拶申し上げます」


 そう言ってツェツィーリエ先生もカーテシーを止めました。


「さて、ローザ嬢。このひと月弱、フリートヘルムと共に我が民のために治癒の力を使ってくれたと聞いておるぞ。我が民を代表し、礼を言おう」

「え? えっと……当然のことをしただけです」

「うむうむ。さすがはマレスティカ公爵家の令嬢であるな。たとえ養女であってもその崇高な精神を受け継いでおる」


 皇帝はそう言って一人でうんうんと(うなず)いています。


 えっと……。


「それと、ツェツィーリエ教諭もだな。フリートヘルムと共に魅了された民を救ったと聞いておるぞ。そなたにも感謝しよう」

「はい。恐縮でございます」

「うむ。それに公爵令嬢、そなたの従魔のピーチャンも魅了の解除をしたそうだな」

「え? えっと……は、はい」

「うむ。主である公爵令嬢の崇高な精神は従魔にも引き継がれたのだろうな。公爵令嬢、そなたの従魔たちを紹介してくれるか?」

「は、はい。えっと、この子がピーちゃんで、それでこの子がユキで、この子がホーちゃんです」


 すると皇帝は目を細め、優しい表情でユキたちをじっと見つめます。


「うむうむ。三匹とも、良い目をしておるな」


 皇帝はそう言うと、優しそうに微笑みました。ですがすぐに真剣な表情になります。


「さて、公爵令嬢。余はマルダキア魔法王国とは友好的な関係を築きたいと考えておる」


 皇帝はじっとあたしの目を見てきます。


「そこで、だ。余からの親書を預けよう。貴国の国王と、そなたの養父、マレスティカ公爵にそれぞれ渡してほしい」


 えっ? こんなの聞いていませんでした。


 えっと……でも、二つの国が仲良くするのはいいことですよね?


「はい」


 あたしは皇帝の前まで歩いていきます。


「うむ。そなたは優しい目をしておる。そなたがいれば、我が国は貴国との関係をより良いものとしていけるであろう」

「は、はい……」


 なんと返事をすればいいのかさっぱり分かりませんが、とりあえず二通の親書を受け取りました。


「ピーチャンが魅了を解除できるのは、きっと公爵令嬢のおかげなのであろうな」

「え? えっと……」


 それってどういう意味ですか?


「さあ、下がるが良い」

「は、はい」


 あたしは左手に親書を持ちながら礼を執り、ツェツィーリエ先生の隣に戻るのでした。

 次回更新は通常どおり、2025/10/04 (土) 20:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
優しそうなおじいちゃん判定なので、たとえ上がっても隠しゲージなのですよ……。(周囲は兎も角) 下手するとまた来ちゃうのさローザさんは……。
親書(脅迫状) そろそろ逃亡ゲージが溜まってきたかな
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