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第五章第23話 お手伝いを始めました

2025/10/10 名前の取り違えを修正しました

 結局あたしは魅了を解除することができず、ホテルに移動しました。


「はぁ。ダメでした」


 あたしはベッドに腰を下ろします。


 どうすれば発動するんでしょうか?


 イメージが大事なのは分かってるんですけど、何をどうイメージしたらいいのかまるで想像がつきません。


 そもそも、魅了ってなんなんでしょうか。


「はぁ」

「ピピ?」


 あたしがもう一度ため息をつくと、ピーちゃんがぴょんとジャンプして膝の上に乗ってきました。


「あ、ピーちゃん……」


 あたしはピーちゃんを()でてあげました。ちょっぴりひんやりしていてぷにぷにしてて、その感触にあたしのほうが癒されます。


「魔法って難しいですね……」

「ピピ?」

「えっと、はい。地下牢でのことです」

「ピピー」

「えっと……そのうちできるようになる、ですか?」

「ピ」

「はい。そうですね。そうなれるといいんですけど……」

「ピ」

「……はぁ」


 あたしはため息をつくと、そのままゴロンとベッドに体を横たえます。


「ミャー」


 ユキがぴょんとベッドに飛び乗ってきて、あたしの顔のすぐ近くで丸まりました。


「ユキ……」


 ピーちゃんを撫でるのを止め、今度はユキを撫でてあげます。


 相変わらずのふわふわの毛並みで、撫でているだけで幸せな気分になります。


 はぁ。そうですよね。こんなところで落ち込んでいても何も始まりません。


 そうですよ。お姉さんたちが魅了でおかしくされちゃったんなら、あたしが治してあげる番なんです。


 そう、きっと今こそがあのとき優しくしてもらった恩を返すときに違いありません!


 はい。なんだかやる気が沸いてきました。


 がんばりましょー、おー!

 

◆◇◆


 それから一週間が経ちました。


 えっと……はい。まだ魅了解除のイメージが全然できなくって、結局一回も解除することはできていません。


 ツェツィーリエ先生とフリートヘルムさんは毎朝一人ずつ解除してあげていて、その後はなんとあたしがフリートヘルムさんの代わりに救護院で治療をしています。


 というのも、魅了解除の魔術を使うともうMPがなくなっちゃうみたいなんですよね。それで、あたしがマルダキアから来た見習いっていうことにして、フリートヘルムさんの代わりに患者さんの治療をしているんです。


 そんなわけでですね。今日も残念ながら魅了解除の魔法の発動はできなかったので、午前の診療を始めようと思います。


「通していいわ」

「失礼します」


 フリートヘルムさんがそう言うと、すぐに最初の患者さんが診察室に入ってきました。最初の患者さんは中年のおじさんで、痛そうに足を引きずっています。


「あの……フリートヘルム先生、その……」


 患者さんは怪訝そうな目であたしのほうをチラチラと見てきます。


「この子はローザちゃんよ。胸のプレートにちゃんと書いてあるでしょ?」

「あ、いえ、そうじゃなくて……」

「マルダキア魔法学園の生徒さんで、夏休みを使ってうちに実習に来ているの。可愛いでしょう?」

「あ、はい。かわい……じゃなくて、なんでスライムが?」

「この子の従魔だからよ」

「……はぁ」


 患者さんはピーちゃんを気にしているみたいですが、チラチラとあたしの胸にも視線を送ってきます。


 ……はい。もうこのぐらいなら気にしません。さすがに慣れましたからね。


「はい。それじゃあ、始めるわよ。どうしたのかしら?」

「あ、はい。昨日の夜、階段でバランスを崩して、下まで落ちちゃったんです」

「あらあら、大変だったわね。どこを打ったの?」

「腰とケツと、あと足首が痛くて……」

「そう。それじゃあ診察するわよ。まずは打ったところを見せてもらうわね。ローザちゃん、ちゃんと見ているのよ」

「はい」


 患者さんが服をずらして患部を露出させます。


 あ、これは痛そうです。小さいですけど青あざが腰にできています。


「あらあら。じゃあ、押すわよ」

「ぎゃあああああ!」


 容赦なく患部をぎゅっと押され、患者さんは悲鳴を上げます。


「うーん、骨は大丈夫じゃないかしらね。お尻は……これはただの打ち身ね。足は?」

「は、はい。右の足首が……」

「見せてちょうだい……あら!」


 あ、これはひどいです。ぱんぱんに腫れあがっています。


「あー、これは折れているかもしれないわね。ローザちゃん、できる?」

「えっと、はい」

「そう。じゃあまずは足首から治療しちゃいなさい」

「はい。えっと、治療しますね」


 あたしはそっと右の足首に手をかざし、骨が元に戻るようにイメージしながら治癒魔法を掛けてあげます。


 すぐに魔法は発動し、患者さんの足首は普通の状態に戻りました。


「おお……す、すごい……」

「腰は様子を見ましょう。数日様子を見て、痛みが激しくなっていくようならまたいらっしゃい」

「は、はい。ありがとうございました」


 こうして最初の患者さんが診察室から出て行くのでした。


 はぁ。魅了解除もこのぐらい簡単にできればいいんですけど……。

 次回更新は通常どおり、2025/09/13 (土) 20:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
魅了の対象以外に価値を見いだす感じですかね
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