第五章第17話 帝都に着きました
2025/07/22 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
ルーデルワルデを出てからは魔物に襲われることもなく、あたしたちはハプルッセン帝国の帝都カイゼルブルクに到着しました。
……えっと、はい。なんだかものすごくたくさんの人がいます。
それにこう、なんて言えばいいんでしょうか?
建物とかも高くて、デザインもなんだかすごく洗練されていて、細かい彫刻とかすごくて……なんて言うか、とにかくものすごいです。
もちろん不思議な夢で見る高い建物に比べたら全然低いですけど……あれは夢ですからね。
オーデルラーヴァはもちろんですが、トレスカやプレシキンと比べてもこっちのほうがすごいと思います。
なんだかこう、初めてオーデルラーヴァに連れて行ってもらったときを思い出しちゃいました。あのときはなんてすごい町があるんだってびっくりしました。でもそれから色々な町を見て慣れたつもりだったんですけど、この町はそのときと同じくらいびっくりしたんです。
それに車窓から見える風景は平和で、すごく活気があって、町の人たちはとっても幸せそうです。
ルクシアの奴らがはびこっているはずなんですけど……なんだか意外でした。
あたしはてっきり、ルクシアの奴らのせいでひどい目に遭っているって思っていたんですけど……。
でもルクシアの奴らがひどい奴らだっていう考えは変わりませんけど。
そんなことを考えているうちに、あたしたちは宮殿に到着しました。
馬車から降りるとラダさんにエスコートされ、宮殿の中へと足を踏み入れます。
ううっ。緊張します。ここが……!
「ローザちゃん、そんなに気負わなくても大丈夫よ」
あたしが緊張しているのがバレちゃったみたいです。ツェツィーリエ先生が優しく声を掛けてきてくれました。
「えっ? でも……」
「大丈夫。皇帝陛下はローザちゃんをどうこうしようとは思ってないわ」
「は、はい……」
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
不安に駆られつつも、あたしたちは宮殿の中を歩いていきます。そしてついに謁見の間に到着しました。
「マルダキア魔法王国よりマレスティカ公爵令嬢ローザ・マレスティカ様、並びにマルダキア魔法王国魔法学園前学長ツェツィーリエ・イオネスク様でございます」
謁見の間に入るや否や、大きな声で紹介されました。あたしはラダさんにエスコートされながら真っすぐに赤いカーペットの上を歩いていきます。
そして皇帝陛下の座る玉座から五メートルほどの場所で止まり、礼を執ります。
「マルダキア魔法王国マレスティカ公爵が養女、ローザ・マレスティカが皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「マルダキア魔法王国魔法学園教諭ツェツィーリエ・イオネスクが帝国の太陽たる皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
すると皇帝は思っていたよりも優しい声色で声を掛けてきます。
「うむ。楽にするが良い」
あたしは辛いカーテシーを止め、顔を上げます。
……なんだか想像していたのと違って、優しいおじいちゃんって感じの人です。体が大きいのでちょっと威圧感はありますけど、ニコニコしているのでそんなに怖くありません。
「ローザ嬢、話は聞いておるぞ。フランツが迷惑をかけているそうだな」
「え? えっと……」
「何、繕う必要はない。話はしっかりと聞いておる。来期以降はそなたに迷惑がかからぬようにすることを約束しよう」
「えっと……ありがとうございます」
「うむ」
皇帝はすごく優しい表情で頷いてくれました。
あれ? もしかしてこの人、いい人なんでしょうか?
「ツェツィーリエ教諭も久しいな」
「永らくご無沙汰しております。陛下もご健勝で何よりでございます」
「うむ。そなたも元気そうで何よりだ」
あ……ツェツィーリエ先生、知り合いだったんですね。
「そなたたちはフリートヘルムに呼ばれたと聞いているぞ」
「はい。仰るとおりでございます」
「何か不便があれば余に申すが良い。力になろう」
「ありがたき幸せに存じます」
「うむ。そなたたちの滞在が良きものとなるように願っているぞ」
「恐縮に存じます」
「うむ。では下がるがいい」
「はい。それでは失礼します」
そう言ってツェツィーリエ先生がカーテシーをしました。
あれ? ツェツィーリエ先生があたしのほうをちらちらと見ているような……あっ! いけません! あたしもやらないと!
「し、失礼します」
「うむ。ローザ嬢も、我が帝都での初めての滞在を楽しんでいくがいい」
「ありがとうございます」
こうしてあたしたちは皇帝陛下との謁見を終えたのでした。
えっと……身構えていたんですけど拍子抜けでした。
なんだかこう、もっといろいろとあると思っていたんですけど……。
次回更新は通常どおり、2025/07/19 (土) 20:00 を予定しております。





