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第五章第13話 オーデルラーヴァを出発します

 翌朝、身支度を終えたところ、昨日の謝罪がしたいとアントネスク侯爵があたしの部屋までやってきました。ただ、なぜかヴラドレンさんはいなくてアントネスク侯爵だけです。


「ご令嬢、昨日は儂の孫が大変なご無礼を働き申し訳ございませんでした」

「……はい。大丈夫です。昨日、ちゃんと謝ってもらいましたし……」

「ですが、アントネスク侯爵家としては言葉による謝罪だけでは足りぬと考えておるのです」

「えっと……」

「ですので、アントネスク侯爵家からの謝罪の印としてどうぞこちらをお受け取り下さい」


 そう言うと、控えていた執事っぽい人が木箱を持って前に出てきました。


 えっと……こういうのって、たしか受け取らないと許さないっていう宣言になっちゃうんでしたよね?


「はい。分かりました」

「感謝します」


 するとメラニアさんがそれを執事さんから受け取ります。


「そちらは我がアントネスク侯爵領特産のワインでして、ちょうど十四年間熟成したものです。あと数年で最高の状態となりますので、どうかワインセラーで保管なさってください」

「はい」


 えっと、こういうときは……。


「あの、メラニアさん」

「かしこまりました。手配いたします」


 メラニアさんはそう言って木箱を近くのテーブルに置きました。


「それではご令嬢、儂はこれにて失礼いたします」

「はい」


 こうしてアントネスク侯爵はそのまま出て行きました。


 はぁ。ワインですか。大人の人はみんな飲んでいますけど、どんな味がするんでしょうか?


◆◇◆


 もう一日オーデルラーヴァに滞在し、あたしはオーデルラーヴァを出発しました。


 昨日は休憩の日だったんですけど、ちょっとわがままを言って騎士団の寮を視察させてもらいました。ただ、レオシュたちのせいでもう女子寮は女子寮じゃなくなっていて、あたしが使っていた部屋は物置になっていました。それとなんと、図書室がなくなっていました。ルクシアの奴らに払うお金にするために、本を全部売ってしまったんだそうです。


 まだ二年とちょっとしか経っていないのに……寂しいですね。


 はぁ……。


 えっと、はい。それでですね。オーデルラーヴァを出るとすぐに森の中に入りました。予定では次の町ルーデルワルデまで五日かかり、その間に集落はないんだそうです。


 しかも結構魔物が出るそうで、騎士さんたちは厳戒態勢です。


 フドネラに行くときはジャイアントマーダーベアに襲われましたし、ミツェ村もゴブリンに滅ぼされちゃっていました。


 だから、もしかするとオーデルラーヴァの周辺って危ない場所なのかもしれません。


 もちろん、あたしだっていざとなったら戦うつもりですよ。ただ、さすがにこれだけ大勢の騎士さんがいれば出番はないかもしれません。


 そんなこんなで一時間ほど馬車に揺られていると、突然停車しました。


 休憩でしょうか?


 そう思ったのですが外からノックされ、ラダさんが声を掛けてきます。


「ローザお嬢様」

「はい」

「前方に魔物が出たようで、現在戦闘中のため停車しています」

「はい。大丈夫ですか?」

「弱い魔物だそうですので問題ございません」

「そうですか」


 良かったです。


 そのまま十分ほど待っていると、またラダさんが声を掛けてきました。


「魔物を撃退したとのことで、すぐに出発します」

「はい」


 こうして馬車はすぐに動き始めるのでした。


◆◇◆


 それから合計八回も魔物に襲われましたが、誰一人怪我人が出ることもなく夜になりました。


 もちろん夜営をするんですが、あたしが寝るのはテントじゃなくて馬車の中です。なんとこの馬車、簡易ベッドが付いているんです。


 あたしはテントと寝袋でもいいんですけど、せっかくなら寝心地がいいほうがいいですからね。遠慮なくベッドを使わせてもらうことにしました。


 あ、そうそう。最初の魔物討伐演習の前にロクサーナさんが、ベッド以外で寝たことがないって言ってましたけど、きっとロクサーナさんの馬車にもこんな感じでベッドが付いていたのかもしれませんね。


 あのときはちょっとモヤモヤした気分になりましたけど、そういう馬車にしか乗ったことがなければそれが普通だって思っちゃいますよね。


 なんだか勉強になりました。


 って、そんなことよりも早く寝ないといけません。


 何しろ魔物に襲われる度に停車していたんです。どれも弱い魔物だったので停車時間は十分ほどだったんですが、それでも予定どおりには進めていないみたいです。


 はぁ。それにしても、まさかこんなに頻繁に襲われるなんて……びっくりです。


 マルダキア魔法王国ではこんなこと、一度もありませんでしたからね。やっぱりここは危険地帯……って、いけません。また余計なことを考え始めちゃいました。


 ダメです。早く寝ないと!


「ユキ、ピーちゃん。あたし、もう寝ますね」

「ミャー」

「ピッ」


 あたしはベッドに入り、ユキとピーちゃんを呼びます。


 ピーちゃんがベッドに乗ってきたので頭を乗せ、さらにユキを胸元に抱えます。


 えへへ。やっぱり眠るときはこれが一番落ち着きますよね。


 それじゃあ、おやすみなさい。

 次回更新は通常どおり、2025/06/14 (土) 20:00 を予定しております。

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