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第28話 差別はいけないと思います

 ブラジェナさんたちと楽しい食事をしてから食堂を出ようとした時でした。


「おや? 何か妙な匂いがすると思ったら第七隊の役立たずじゃないですか。しかも子連れとは。まったく、騎士団は託児所ではないんですよ?」


 レオシュの(かん)(さわ)る声が聞こえてきました。見れば食堂の入り口にレオシュが四人の男性騎士と固まってニヤニヤしながらあたし達を見ています。


 ブラジェナさんは一瞬だけ目をすっと細めましたがすぐににこやかな表情を浮かべます。


「さ、ローザちゃん。あいつらは気にする必要ないからお部屋に戻りましょうね」


 そうしてあたし達は彼らを無視して食堂を出ようとしましたが、彼らは広がって道を塞いでしまいます。


「レオシュ殿。道を開けて頂けますか?」


 普段よりも低い声でブラジェナさんがレオシュに言いますが、ニヤニヤした表情を崩しません。


「役立たずのくせに俺に命令するのか? ハッ。身の程を知れ」


 先ほどの間での慇懃無礼な口調はどこへやら、粗暴な口調に早変わりします。


「ええ。身の程を知って子守りを致しますのでお通し頂けませんか?」


 ブラジェナさんは表情を変えずにそう言います。


「ああん? そうだなぁ。お前ら今晩俺らの部屋にこい。一晩可愛がってやる。あ、子供には興味はねぇからお前はいいぞ」


 な! なんてことを!


「夜間の外出は隊長に禁じられておりますのでどうかご容赦を」

「ああ? そんなこと知ったことか」

「では隊長に事の経緯を説明した上で許可を取りに行きますのでお通し頂けますか」

「ああん? いつもそうだ。少しでも騎士の誇りがあるなら自分で考えて行動しろ! いちいち許可など」

「いえ。規則ですので」


 なんでこんなのが騎士なんでしょうか。あ、でもよく考えたらオーナー様も育てた子供を奴隷にしようとするような人でしたね。もしかすると、偉い人も盗賊も実は大して変わらないのかもしれません。


「では、失礼します」


 ブラジェナさんがそう言って横を通り抜けようとするとレオシュがブラジェナさんに手を伸ばしてきました。


「待てよ!」

「触るな!」


 ブラジェナさんはその手をぴしゃりとはたきます。


「女、女と散々仰っておきながら、騎士ともあろうお方が女の肩に許可なく触れようとするとはどういう了見ですか?」

「ああ? 俺たちを無視したお前が悪い」

「そうですか。それでは失礼します」

「待て!」

「おい。邪魔だ! 出入口を塞ぐな」


 彼らが塞いでいるせいで、出入口の扉の前には気が付けば入る人と出る人の双方で行列が発生しています。


 さすがにこの人数の圧力に屈したのか、レオシュたちは道を譲ったのでした。


「けっ。覚えてろ」


 捨て台詞が聞こえてきますが、覚えていたくないので金輪際関わらないで欲しいです。


「ローザちゃん、ごめんね。あたし達第七隊は人数も少ないし、立場のあるお方の奥様や子供、それに外国からの女性のお客様を警護するのが主な仕事なの。だからあたし達を良く思わない騎士たちも多くてね」

「でもブラジェナさん。あれはいくらなんでも酷いんじゃないですか?」

「そうね。でも女は家にいろっていう人も多いし、腕っぷしではやっぱり男の人には勝てないの。だから、女のくせに彼らと同じお給料を貰っているのが気に入らないんだと思うわ。隊長や副隊長は強いから別なんだけどね」


 ひどい話ですよね! 女性の警護なんてあいつらじゃ絶対無理なのに!


****


 それから一週間が経ちました。毎日美味しい食事をたくさん食べられてあたしは今とっても幸せです。


 あと、オーデルラーヴァ国民として登録してもらったのであたしは正式にミツェ村の生き残りのローザになりました。


 ユキとホーちゃんにも可愛いリボンをつけてもらって、それからピーちゃんは従魔登録というのをしてもらいました。これでピーちゃんを傷つけたら犯罪者になるそうなのでこれで一安心です。


 あと、最近は騎士団の図書室によく連れて行ってもらっています。あいつらがいるのでやっぱり女子寮の外に一人で出るのは怖いですし、かといって何もしないでいるのも暇すぎるのです。だから、本を読んでお勉強をしてみようかなって思ったんです。


 それに、本を読んでいるなんてお金持ちっぽいと思いませんか?


 孤児院には聖書が一冊あっただけでしたし、本は高いから簡単には読めないって聞きました。それにあたしは騎士のお姉さん達みたいには戦えないですけど色んなことを知っていればきっと何かの役に立つと思うんですよね。


 あと、司書さんは男の人でしたけどあたしにはすごく優しくしてくれます。


 あーあ。こんな幸せな暮らしがずっと続けばいいのに。


 このまま【鑑定】と【収納】がバレなければ、あたしはきっとこの国で普通の女の子として暮らしていける気がするんです。


 そう思っていたんですけど、やっぱりそう簡単にはいきませんでした。


 あたしはお昼を食べた後オフェリアさんの執務室に呼び出されました。


「ローザ。すまないが、ミツェ村の奪還作戦に同行してもらいたい」

「え? ゴブリンに占領された村に行くんですか?」

「すまない。だが君をミツェ村の生き残りということにしたせいでな。道案内をさせろと言われてしまったのだ。どうやらあのレオシュのやつが裏で手を回したらしい」


 あ、あいつー!


「君はきちんと私の部隊で守る。辛い記憶を思い出させてしまって申し訳ないが、協力してくれるか?」

「う……はい……」


 ゴブリンなんて見るのも嫌ですが、お世話になっている以上は断れません。


 あたしは渋々頷いたのでした。

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― 新着の感想 ―
レオシュさんに赤い花が咲けば良いのに。
[一言] 間違いなく、子を囮にして危険になって団長きて鉄火団団長みたいになると予想笑笑
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