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第五章第8話 オーデルラーヴァに着きました

 トレスカを出発したあたしたちはついに国境にやってきました。そうです。フドネラの先にある、ジャイアントマーダーベアに襲われたあの森です。


 といっても、今回は騎士さんが何百人もいるのでさすがに危険な目に遭うことはないと思います。


 そんなことを考えていると何やら見慣れない建物に到着しました。


 あれ? こんな建物はなかったような?


 木製ですけどきちんと高い壁があって、向こうのほうでは工事もしているみたいです。


 これって……もしかして砦でしょうか?


 ということは、旅人が安全に通れるようにジャイアントマーダーベアを……って、そうじゃないですよね。戦争があったからだと思います。


 工事をしているのは、やっぱりまた同じことが起きたときに占領されないようにするためでしょうか。


 はぁ。それにしても、レオシュたちはなんであんなひどいことをしたんでしょうか?


 そりゃあ、あいつはひどい奴でした。


 オフェリアさんたちの手柄を横取りしたり、女の人をゴブリンと戦わせて自分たちは後ろで見てたり、それにあたしを奴隷にしようともしてましたしね。


 ……なんだか、思い出していると腹が立ってきました。


 そうですよ! それに、あいつのせいでオフェリアさんは行方不明のままですし!


 ああ! もう! 


 ……はぁ。こんなところで怒っていても仕方ありませんね。もう処刑されたらしいですから、今さらです。


 でも、一度くらいはちゃんと文句を言ってやりたかった……いえ、やっぱりいいです。文句を言っても結局ひどいことを言われて嫌な気分になりそうです。


 はい。考えないようにしましょう。


 そうこうしているうちに砦を抜け、ジャイアントマーダーベアと戦った森の中へと入るのでした。


◆◇◆


 森では特に何も起きず、あたしたちは無事、オーデルラーヴァへとやってきました。


 オフェリアさんとシルヴィエさんに助けてもらい、初めて訪れたあのときと変わらない綺麗な町並みです。これだけ見るととても戦争があったとは思えませんが、道行く人はまばらです。


 以前のオーデルラーヴァはもっとこう、町全体が元気だったと思います。でも、今のオーデルラーヴァはちょっと寂しい感じです。


 これって、やっぱりルクシアの奴らを追放したからでしょうか?


 車窓から町並みを眺めつつそんなこと考えていると、見知った建物が現れました。


 あっ! 騎士団の本部! あそこに女子寮も!


 ……なんだか懐かしいです。


 皆さん、赤の他人のはずなのにとっても良くしてくれて、それにあたしだけじゃなくってユキたちにも優しくしてくれました。


 お洋服も食事も、それにお風呂だって……。


「はぁ。オフェリアさん、大丈夫でしょうか……」

「ミャー」

「ピピッ」

「ホー」


 あ……元気づけられちゃいました。


「はい。そうですよね。きっと見つかるはずですよね」

「ミャッ!」

「ピッ!」

「ホー!」

「はい。きっと見つけて、今度は立派になったあたしを見てもらうんです」

「ミャー」

「ピー」

「ホー」

「えへへ。でも、その前に卒業しないといけないんですけどね」


 そうですよ。暗いことばかり考えるのはやめにしましょう。


 もしオフェリアさんが大怪我をしていても、病気になっていたとしても、あたしがすごい魔法使いになって治してあげればいいんです。


 はい。がんばりましょー! おー!


◆◇◆


 そうこうしているうちに馬車が止まりました。するとすぐにラダさんが声を掛けてきます。


「お嬢様、到着いたしました」

「はい。開けて大丈夫です」

「かしこまりました」


 ラダさんが外から扉を開けてくれたので、そのままエスコートしてもらって馬車を降ります。


 するとそこはまるでお城のように大きな建物の前で、なんと馬車の前から建物に向かって赤い絨毯が敷かれていました。


 そしてその先にはシルヴィエさんが!


 あたしは思わず駆け出しそうになりましたが、ラダさんがぎゅっと手を握ってそれを静止してくれました。


 そ、そうでした。あたしはマレスティカ公爵家の養女です。こんなところで走りだすなんて、お義父様たちに迷惑をかけてしまいます。


 あたしはラダさんにエスコートされ、シルヴィエさんの前にやってきました。


 するとシルヴィエさんは跪き、隣にいる男の人は胸に手を当てて礼を執りました。


 あれ? この男の人ってもしかして……。


 って、ちゃんとご挨拶をしないと!


「ローザ・マレスティカです。わざわざお出迎えいただき、感謝します」

「オーデルラーヴァ市長のエリク・アンブロシュと申します。マレスティカ公爵のご訪問を歓迎いたします」


 やっぱり! 司書さんです!


 ああ、懐かしいです!


 司書さんも、あたしのことをあいつから守ってくれました。


「騎士団長のシルヴィエと申します」


 シルヴィエさんがそう言って手を、手のひらを上に向けて差し出してきたので、あたしはそこに自分の手をそっと重ねます。


 するとシルヴィエさんはあたしの手の甲にキスをする仕草をしてきました。


「さあ、長旅でお疲れでしょう。どうぞ中へお入りください」


 こうしてあたしはシルヴィエさんと司書さんに案内され、建物の中に入るのでした。

 次回更新は通常どおり、2025/05/10 (土) 20:00 を予定しております。

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