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第27話 みんなに可愛がってもらえます

 どうもおはようございます。ローザです。今日もサバイバル、じゃなかったです。何をしたらいいのか分かりませんが、今日からは騎士団の女子寮生活がはじまります。


 昨日はものすごい美味しい食事を食べさせてもらいましたし、ユキたちにも骨付き豚肉を焼いたものを貰いました。


 お部屋もとっても豪華で、なんと個室ですよ!


 ベッドがあって、椅子と机もあって、クローゼットも姿見もあります。これを全部あたし一人で使っていいなんて、ここってもしかして天国なんでしょうか?


 クローゼットの中にも可愛い服がたくさん入っていて、もうびっくりです。ソニャさんは全部お古だって言ってましたけど、本当にあたしが着て良いんでしょうか?


「ローザちゃん、起きてますか?」

「あ、はーい」


 ソニャさんです。朝からどうしたんでしょうか?


 ガチャリと外から鍵が開けられてソニャさんが入ってきます。


「ああ、ちゃんと起きていて偉いですね。ローザちゃん。さあ、お着替えしますよ」

「え? え?」


 あれよあれよと姿見の前まで連れていかれるとあっという間に寝巻を脱がされます。そしてクローゼットの中の一着をあっという間に着せられました。それから髪を櫛で整えられ、気が付けば身支度が完了していました。


「はい。もう皆さんのところへ出ても大丈夫ですよ。さ、行きましょうね」

「あ、は、はい」


 あたしはソニャさんに手を引かれて歩き出しました。


 ところで、昨日から思っていたんですけどソニャさんってあたしの事をすごい小さい子扱いしていませんか?


****


 そのままあたしはソニャさんに案内されて女子寮の一室にやってきました。部屋の中に入るとオフェリアさんとシルヴィエさんが前にいて、その二人を見るように制服を着た女性がたくさん集まっています。


 どうやら、朝のミーティングをしていたといったところでしょうか。


 オフェリアさんは私に気付くと手招きしてくれたのでオフェリアさんのところに歩いて行きます。


 なんだかざわざわしています。


「皆、静粛に。さて、今日最後の連絡事項だ。この子を女子寮で当面の間預かることになった」


 シルヴィエさんがあたしのことを抱き上げて皆さんからあたしが見えるようにしてくれましたが、こんなに注目されると恥ずかしいです。


「この子の名前はローザ。ミツェの村の唯一の生き残りで、寂しい思いをしているだろうから皆、可愛がってやってくれ。以上だ。解散!」


 オフェリアさんがそう言うとあたしは地面に下ろされました。そしてオフェリアさんの手があたしから離れるや否や女騎士の皆さんがあたしをものすごい勢いで取り囲みました。


「可愛い! ねえローザちゃん。今いくつなの? 八つ? 七つ?」

「え? えっと……」

「あら、この髪サラサラじゃない。すごいきれいね。どうやってるの?」

「え? そ、それは……」

「このお洋服も似合っててかわいいわね」

「あ、は、はぁ」

「あー、もう。なんてかわいいのかしら。お人形さんみたい」

「ねえ、抱っこしてあげるわ。ほら、いいわよね? 抱っこさせなさい」

「え? え? え?」


 突然囲まれて質問攻めにあい、あたしはもうパニック状態です。


「ええい。お前達落ち着け。そんな大勢で囲まれてローザが困っているだろう。それと一人ずつ喋れ」


 ああ、オフェリアさん。ありがとうございます! 頼れる大人の女性です!


「それとな。抱っこするのは私だ」


 そう言うとオフェリアさんは素早くあたしを抱き上げたのでした。


 え? オフェリアさん?


****


 それから大人数で食堂に行って朝食をとり、その後あたしは自由時間です。ただ、この女子寮から出るのはダメらしくて、女子寮の建物の中とその中庭だけがあたしの行動範囲です。


 というわけで、まずは女子寮探検をしてはみたものの、ものの三十分で終わってしまいました。だって、他の人のお部屋には入れませんし、廊下と階段を歩いてもこれといって何かがあるわけでもないですからね。


 そんなわけであたしは今、中庭の日向のベンチに座ってぼーっとしているところです。


「ミャー」

「暇ですねぇ」

「ピピー」

「そうですねぇ。でもたまにはいいかもしれませんねぇ」

「ミャー」


 もふもふのユキを膝にのせて右手で撫でながら、ベンチに乗っているぷにぷにのピーちゃんを左手で撫でています。


 こんなに平和で良いんでしょうか?


「あっ! いた! ローザちゃんは中庭だ!」


 そう思っていたところでそんな声が聞こえ、そして三人の女騎士の人たちが駆け足でやってきました。


「こんにちは。ローザちゃん。あたしはブラジェナ。こっちがエリシュカでこっちがテレザよ。よろしく!」

「は、はい。よろしくお願いいたします」

「じゃあ、今日はあたし達がローザちゃんをランチに連れて行くからね」

「あ、ありがとうございます」

「それと、その子が噂の白猫ちゃんね?」

「え、えっと。はい。この子はユキで、こっちのスライムはピーちゃんです」

「うわぁ。こんなに小さいのに本当に従魔を従えているんだ。すごいわね」


 な、なんだかものすごいシルヴィエさんと行動と口調がシンクロしてますね。


「ね、撫でていい?」


 あたしがユキを見ると特に気にした様子もないのであたしは小さく頷きました。ブラジェナさんは恐る恐るユキを撫で、そしてすぐにその表情がへにゃりとだらしなく崩れます。


 するとその様子を見たエリシュカさんとテレザさんも撫でたいというので撫でさせてあげると、二人もまたへにゃりと表情を崩しました。


「ローザ! あっ」

「ローザちゃん!」


 オフェリアさんとシルヴィエさんが中庭に飛び込んできましたが何故か残念そうな顔をしています。


「あ、隊長に副隊長。残念でしたね。ローザちゃんとランチする権利はあたし達のものです」

「くっ。何という事だ」

「ああん。私のローザちゃんがぁ」


 勝ち誇るブラジェナさん達とは対照的にオフェリアさんは本気で悔しそうな様子です。


 これは一体どうなっているんでしょうか?


「え、えっと?」

「ローザちゃん。今朝隊員たちがローザちゃんに殺到して困ったでしょ? その後の朝食も大人数になっちゃったし。だから、隊長がローザちゃんと一緒に食事に行けるのは先着三名までっているルールを作ったのよ。だから、ランチの権利はあたし達三人ってワケ」

「は、はぁ」

「さあ、それじゃあ食堂に行くわよ」


 こうしてあたしはブラジェナさん達とランチに向かったのでした。

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