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第四章第116話 戦争が終わったそうです

 こんにちは。ローザです。


 えっとですね。あたしは今、領都邸の広いお庭の東屋で椅子に座っています。特に何をしているっていうわけじゃないんですけど、ピーちゃんがあたしの膝の上にのってぷるぷるしていて、ユキとホーちゃんが追いかけっこみたいなことをして遊んでいるのをぼんやりと眺めています。


 あ! 今度はユキが追いかける番になったみたいです。


 ホーちゃんがあたしの頭くらいの高さを飛んでいき、それをユキがものすごい速さで追いかけていきます。


 本当に、もう目にも止まらないってこういうことなんだなっていう感じです。それに一面の銀世界なので、真っ白なユキは風景に同化していて、ちょっと気を抜いたらすぐに見失っちゃいそうです。


 え? あたしも一緒にやらないのか、ですか?


 あたし、運動は木登り以外は苦手ですからね。追いかけたって絶対捕まえられないですし、逃げてもすぐに捕まっちゃいます。


 それに、あんな雪の上で走ったら絶対転んじゃいます。


 って、あれ? なんだかさっきよりスピード、上がってませんか?


 あっ!


 み、見失っちゃいました。


 ユキは体が真っ白だから仕方ないですけど、まさかホーちゃんまで見失うなんて……。


 ガササササ!


 突然百メートルくらい先の木が大きく揺れ、積もっていた雪が落ちました。


 あれ? 何か影のようなものが横に……。


 ドサァァァ! ガサガサガサ! ドサァァァ!


 なんだか、次々とあちこちの木が揺れたかと思ったら雪が落ちていきます。


 えっと……もしかしてユキとホーちゃんでしょうか?


「ピーちゃん」

「ピ?」

「木が揺れてるのって、ユキとホーちゃんですか?」

「ピ」


 そうみたいです。


 すごいですねぇ。あんなに速く動けるなんて。


 そんなことを思いつつもボーっと追いかけっこを見ていると、後ろからメラニアさんが声をかけてきます。


「お嬢様、アデリナ様がお呼びです。すぐに執務室に来るように、とのことです」

「はい。分かりました。ユキ! ホーちゃん! あたし、戻りますね!」


 すると木が揺れるのがピタリと止まり、二人がものすごい速さで戻ってきました。


「ミャッ」

「ホー!」

「あれ? そのまま遊んでいても大丈夫ですよ?」

「ミャー」

「ホー」


 一緒に帰るみたいですね。


「じゃあ、帰りましょう」

「ミャー」

「ホー」

「ピ」


 こうしてあたしたちはアデリナお義姉さまの執務室にやってきました。アデリナお義姉さまはとても神妙な面持ちであたしを見つめてきます。


 あたしはすぐにカーテシーをしました。


「アデリナお義姉さま、お呼びですか?」

「ええ。王都から連絡がきました。オーデルラーヴァの件ですわ」

「っ!」

「オーデルラーヴァは我らがマルダキア魔法王国軍とプロトニコフ侯爵率いるベルーシ王国軍によって落城したそうですわ」

「っ! ぶ、無事、ですよね?」

「……」


 アデリナお義姉さまは表情を変えず、少しの間押し黙ってしまいました。


「え? ま、まさかマルセルお義兄さまに何かあったんですか!? それともオフェリアさんやシルヴィエさんたちに!?」


 するとアデリナお義姉さまはどこか困ったような表情を浮かべ、口を開きます。


「オーデルラーヴァは、市民たちの反乱によって無血開城されましたわ。王を僭称(せんしょう)していたボレスラフ・ニメチェクただ一人を除き、攻城戦の犠牲者はいませんわ」

「あ……じゃあ、皆さん無事だったんですね。良かったぁ……」


 あたしはほっと胸をなでおろしたのですが、アデリナお義姉さまの表情は変わりません。何も言わず、じっと黙っています。


「えっと、怪我をした人はいないんですよね?」

「ええ。そうですわね」

「だったら!」

「わが軍の者は無事です。ですが……」

「え? じゃあ、まさかオフェリアさんたちはレオシュに?」

「分からないそうですわ」

「えっ? どういうことですか?」

「ローザちゃん」


 アデリナお義姉さまは険しい表情になり、あたしの目をすっと見据えてきます。


「は、はい……」

「がお世話になったのは、第七隊の方々でしたわね?」

「えっと、はい。そうです」

「その第七隊だけれども、オフェリア隊長とシルヴィエ副隊長の二名は行方不明です」

「えっ!? そんな……」

「ただ、残りの隊員たちは無傷で発見されました」

「あ……そ、そうなんですね」


 オフェリアさんとシルヴィエさんのことは心配ですけど、でにブラジェナさんたちが無事でよかったです。


 って、あれ?


「もしかして、魔力のある人だけが行方不明ってことですよね? もしかして!」

「そう。そうですのね。ただ、わたくしがローザちゃんにこの話をしたのは、王国から聞いてほしいと頼まれていることがあるからですわ」

「え? なんでしょう?」

「単刀直入に聞きますわ。第七隊の隊員たちはルクシアの信者ですの?」

「えっ!?」


 ブラジェナさんたちが!?

次回更新は通常どおり、2025/02/22 (土) 20:00 を予定しております。

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