表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/298

第26話 何だか幸せです

「あっ! もしかして、ううん。絶対ローザちゃんだよね! すごくかわいくなったね!」


 ソニャさんの手で大変身を遂げたあたしを見つけたシルヴィエさんがハイテンションで駆け寄ってきました。シルヴィエさんはいつもの鎧姿ではなくビシッとした制服を着ているのですが、その服装とシルヴィエさんの雰囲気がミスマッチです。


 なんだかそのミスマッチな感じがちょっとおかしくてあたしはくすりと笑ってしまいました。


 あ、鎧姿であの雰囲気も変なんでしょうけど、でも最初に出会った時からそうだったのでその違和感はもうあまり感じなくなっています。あの時はあたしもいっぱいいっぱいでしたし、そんなことを考える余裕も無いままに慣れてしまったという事もあるのかもしれません。


「あ、えっと。はい。そうです。その、似合って、ますか?」

「うん。ものすっごく! どこのお姫様かと思っちゃったよ」

「あ、ありがとうございます」


 なんだか、すごい恥ずかしいです。こんな風に褒められたことなんて今までで一回も無かったので、何だか不思議な気分です。


「あっ! 隊長! ローザちゃんがものすごく可愛くなってますよ!」

「ん? どうした? おお。ローザ、似合っているな。とても可愛いぞ」

「あ、ありがとうございます」


 やっぱり何というか、こそばゆいというか、ちょっとはにかんでしまいます。


「ああん! その照れた表情も素敵じゃない! もうっ! どうしてこんなに可愛いのかしらっ!」


 そして感情をこらえきれなくなったのか、シルヴィエさんはあたしをぎゅっと抱きしめます。


 今度は女性特有の柔らかさと、騎士らしくしっかりと鍛えられたしなやかな筋肉がしっかりと感じられたのでした。


 もし普通の家に生まれていたら、あたしがお母さんに捨てられなかったらこんな風にぎゅっと抱きしめてもらえたんでしょうか?


****


 あたしはシルヴィエさんにそのまま食堂へと連行されました。オフェリアさんも一緒です。


「ローザちゃん。ここが食堂よ。メニューは全員一緒。着席すれば勝手に運ばれてくるわ」

「はい」


 でも、あたしはユキ達と一緒に食べられないことが悲しいです。


「どうしたの? 浮かない表情ね。お腹空いてない?」

「いえ。でも、そのユキ達のご飯が……」

「あら。ローザちゃん優しいのね。あの子たちの食事はちゃんと用意してもらうから安心して?」

「はい」

「それに、スライムのピーちゃんだったかしら? あの子は大丈夫でしょうけど、白猫のユキちゃんとミミズクのホーちゃんには人間の食事をそのまま与えちゃダメよ。あまり味付けの濃いものをあげちゃうとそのうち病気になっちゃうわ」


 なんと! 知りませんでした。


「だから、今は楽しんで食べて、帰りにあの子たちのエサを厨房に言って貰っていきなさい?」

「はい! ありがとうございます」


 そんな話をしているうちにあたし達のところに食事が運ばれてきました。料理は二皿に白パン!がついてきます。すごい!


 白パンなんて貴族くらいしか食べられない超高級品ですよ?


 孤児院では黒パンや堅パンをほんの少しだけ貰えるのが普通でしたからね。あ、オートミールが出た日はお腹が普段より膨れるので嬉しかったですね。


 そんな白パンが出てくるという事は、やっぱり騎士団というのはお金持ちのようです。


 それと料理は二皿ですが、一皿目には色々な食べ物が沢山よそってあって、もう一皿はスープです。


 すごいです!


 孤児院ではスープ以外の食べ物があるなんてお祝いの日か誰かが寄付してくれた日くらいなものでしたから。


 あたしが目を輝かせて見ていると、オフェリアさんが優しい笑顔で私を見つめていました。それに気付いたあたしは照れ笑いを浮かべます。


「ローザ。ここは騎士団の食堂だからな。あまり作法などなく、本来は別の皿で饗されるべきものが一皿にまとめて盛り付けられているのだ。料理が何だか分かるか?」


 あたしは首を横に振ります。


「スープは今日はベーコンのミネストローネだ。トマトベースの野菜と豚ベーコンのスープだな。そしてもう一皿は牛のパテ、豚の血と脂の赤ソーセージ、塩漬け牛肉のローストと野菜のサラダ、鶏の香草焼きだ。あとこれは、トラウトの塩釜焼きだろうな」


 ええっと。もう何を言われているのかさっぱり頭に入ってきません。それとマナーはどうすればいいんでしたっけ?


「ローザちゃん。そんなに気にしなくて、食べたいものから食べればいいのよ?」


 相変わらずシルヴィエさんはあたしを子供扱いしてきますが、何だかそれで少し冷静になることができました。


 ちゃんとしたマナーはよく知りませんが、確か夢の中でちょっとだけ聞いたことがある気がしますのでそれを真似してやってみることにします。


 あたし達は神様にお祈りをすると食事に頂きます。


 まずはナイフを右手で、フォークが左手でしたよね。


 それから、確か前菜から食べるはずです。という事は、パテとソーセージ、ローストと野菜のサラダからですよね。


 それから次はスープでしたっけ?


 スプーンを手に取ってミネストローネを頂きます。あ、でもやっぱりスープはパンにつけて食べたいのでここは手づかみで。美味しい!


 それからトラウト、そして最後に鶏を頂きました。


 ふう。美味しかった!


「オフェリアさん、シルヴィエさん。とても美味しかったです」


 あたしがそう言うと二人は「それは良かった」と、にっこりと笑ってくれたのでした。

ブックマーク、評価、感想などで応援して頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 食事が肉々しい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ