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テイマー少女の逃亡日記【コミカライズ連載中】  作者: 一色孝太郎
第四章

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第四章第109話 お義姉さまに報告します

 まさか、ビタさんにあんな風に思われていただなんて……。


「ピピ?」

「あ、えっと、はい。大丈夫です。きっともう何も言わないでしょうし、今日はこのぐらいにしましょう」


 あたしはホーちゃんを部屋の中に入れ、窓を閉めました。それからベッドに腰掛けたんですが、ついため息が漏れてしまいます。


「はぁ」

「ピピー」


 ピーちゃんがぴょんとジャンプして膝の上に乗ってきました。


「ピピ?」

「あ……心配してくれるんですね。ありがとうございます。ちょっとショックで……」

「ピピ?」

「えっと、まさかビタさんがあんな風に思ってるなんて、思わなかったんです。前は仲良くなれるかもって思ってたんですけど……」

「ピピー」


 えっと……これはやっぱり元気づけようとしてくれているんでしょうか?


「大丈夫です。それに、知らない人の立場から見たら嫉妬されてもおかしくないですよね。事情を全然知らないんですから……」

「ピピッ」


 ピーちゃんがぴょんとジャンプして、あたしの頭の上に乗ってきました。プルプルしていて、ひんやりしていて気持ちいいです。


「ピピッ」

「ホー」


 ピーちゃんが小さく声を出すと、今度はホーちゃんがあたしの膝の上に乗ってきました。ホーちゃんはふわふわで、あったかくて、()でていると気持ちが落ち着いてきます。


「ホー」


 ホーちゃんが小さく鳴き、あたしのほうを見上げてきました。


「どうしたんですか? ホーちゃん……」


 あ、あれ? なんだか急に眠気が?


「ピピッ」

「え? あ、はい。そうですね」


 もう遅いですし、それに感覚の共有って疲れますからね。もう寝たほうがいいんだと思います。


「ピーちゃん、ホーちゃん、ユキ、あたし、もう寝ますね」

「ピッ」

「ホー」

「ミャッ」


 ホーちゃんが音もなく飛び立っていつものタンスの上に、ピーちゃんが枕の場所に、そしてユキはピーちゃんの隣にやってきました。


 あたしはベッドに体を横たえ、ピーちゃんに頭を預けます。


「おやすみなさい」

「ピ」

「ミャ」

「ホー」


 目を閉じると、あっという間にあたしは夢の世界へと旅立ったのでした。


◆◇◆


 翌朝、目が覚めるとものすごくスッキリしていました。こんなによく眠れたのは久しぶりかもしれません。


「おはようございます」

「ピ」

「ミャ」


 ホーちゃんは……まだ寝ているみたいです。そっとしておいてあげましょう。


「えっと、今日は……生徒会も料理研究会もない日ですね」


 数学の授業があるのでちょっと憂鬱ですけど……でも、頑張って卒業しないともったいないですからね。


 あ、あと! 昨日のことをあとでお義姉さまに相談しないといけません。ひどいこと言われましたけど、ビタさんの本性が分かったので良しとしましょう。


 くよくよしていても仕方ないですし、頑張らないと!


 というわけで、あたしはさっそくお義姉さまの部屋に行って昨日聞いた内容を報告しました。するとお義姉さまはものすごく険しい表情になりました。


「え、えっと?」

「つまり、ローザはホーちゃんが聞いていることまで分かるんですのね?」

「は、はい」

「確認だけれど、窓は閉まっていましたわね?」

「え? えっと、はい。閉まっていたと思います」

「そうですわよね。もし窓を開けて大声でそんな愚痴を吐いていたのなら、もっと大勢が聞いているはずですもの」


 えっと? どういうことでしょうか?


「それとローザ。そのことは決して誰にも話してはいけませんわ」

「えっと……もしかして暗殺集団に誘拐されるっていう?」

「ええ、それもありますわね。ただ、それどころの話ではありませんわ」

「えっ?」

「いいこと? この寮の窓はすべて、魔道具ですの」

「ええっ!? そうだったんですか!?」

「ええ。中の音が漏れにくいように遮音の魔術が付与されているのですわ。昔、大声で敵対派閥の貴族の悪口を言っていた愚か者がいて、決闘にまで発展したんですの」

「ええっ!?」

「死者が十名以上出たそうで、いらぬトラブルを避けるために窓とドアにはすべて遮音の魔術が掛けられているんですの」

「そ、そうだったんですね」


 ホーちゃん、ものすごく耳が良かったみたいです。


「ええ。耳をぴったりと付けていたとしても、中の音はほとんど聞こえないはずですわ。ローザも、扉がしっかり閉じた部屋の中の話し声を聞いた覚えはないのではなくて?」


 ……言われてみれば。


「そういうことですわ。まったく本当に、規格外ですわね」


 お義姉さまはぼそりとそう(つぶや)くと、小さくため息をつきました。


「えっと……」

「ともかく、一度お父さまに報告なさい。この件をどう扱うかはそれからですわ。それまでは、このまま内偵を続けること。いいですわね?」

「は、はい」


 こうしてこのまましばらくスパイかどうかを調べ続けることになったのでした。

 これにて本作の年内の更新は最後となり、次回更新は通常どおり 2025/01/04 (土) 20:00 を予定しております。

 本年も応援いただきありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えください。

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窓とドア つまり壁越しなら聞こえる?
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