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第四章第101話 警備隊が来ました

 それからすぐに警備隊の人たちがやってきました。ラダさんが向こうで説明していましたが、すぐに警備隊の人があたしたちのところにやってきます。


「公子殿下、捕縛にご協力いただきありがとうございます」


 すると公子さまはじっと警備隊の男を見つめています。


「え? 公子殿下?」

「……この容疑者が生きているのはすべて、マレスティカ公爵令嬢のおかげですよ」

「失礼しました! マレスティカ公爵令嬢! ご協力いただきありがとうございます!」


 そう言って警備隊の人が(ひざまず)いてきました。


「え? あ、えっと、はい……」


 すると警備隊の人はすぐに公子さまに質問を始めます。


「して、公子殿下。この男は?」

「この男は今回の魔法学園への襲撃と生徒の誘拐に関与している男です。主犯、あるいはそれに近い立場の可能性があるでしょう」


 すると警備隊の人はちらりと倒れている男を見やりました。


「なるほど」

「それから、この男は自害を図る可能性が高いです。先ほども二度、自害を図りました。舌を()み切れぬように厳重に監視する必要があります」

「そうでしたか。かしこまりました。何かお聞きですか?」

「ええ。この男は――」


 公子さまは先ほどのやり取りを説明しました。


「そうでしたか。ルクシアの組織的な犯行、ということですね」

「ええ。そうなります」

「……だから町と王宮で」


 警備隊の人は苦々しい表情を浮かべながら、思わずといった様子でそうこぼしました。


「えっ? 町とお城って、何があったんですか?」


 あたしは思わず尋ねます。


「は! ゴーレムが現れ、手当たり次第に暴れ回っていたのです。ゴーレムどもは破壊しても分裂してしまうため警備隊ではとても歯が立たず、騎士団に出てもらっていたのですが……」

「えっ!? あのゴーレムが町とお城にも出たんですか?」

「あの、とはご存じなのですか?」

「はい。魔法学園にも襲ってきてて……」

「そうでしたか。まさかそんなことになっていたなんて……」


 警備隊の人は複雑な表情を浮かべています。


「ただの(おとり)でしょう。ルクシアの連中の狙いはローザ嬢とリリア嬢ですからね」


 公子さまは冷静にそう言いました。


 でも、あいつらはどうしてそんなことのために関係ない人たちを……いえ、そうですね。あいつならやりそうです。


 あたしはちらりと床に横たわっている男を見ました。


 ……こいつがリリアちゃんを!


 見れば見るほど怒りがふつふつと沸き上がってきます。


「それで、ゴーレムはどうなったのですか?」


 公子さまが話題を戻しました。


「あ、はい。なぜか突然、すべてのゴーレムの動きが停止したそうです」

「なるほど……」


 公子さまは目をスッと細めると、ちらりとあたしのほうを見てきました。


「え? えっと、公子さま?」

「いえ、なんでもありませんよ」

「はぁ」


 よく分からないですけど、心配してくれたんでしょうか?


「ピピッ!」

「え? ピーちゃん?」

「ピッ! ピピッ!」


 ピーちゃんが何かをアピールしながらぴょんぴょんとジャンプをし、ゆっくりと奥へと移動していきます。


「えっと、ついて来て欲しいみたいです」

「そうですか。行ってみましょう」

「はい」


 あたしたちはそのままピーちゃんの後をついて歩いて行き、奥にあった螺旋階段を上っていきます。


 そのまま長い階段を上ると屋上に出ました。


 かなり高い建物だったみたいで見晴らしがすごくいいです。魔法学園も一望できますし、お城だって見えます。


 って、えっ!? 血だまりの中に黒いローブを着た人が倒れています!


「ピピッ!」


 ピーちゃんが倒れている人の近くまで行き、ぴょんぴょんとジャンプしてアピールしてきます。


「えっと、治療……じゃなさそうですね」


 あたしは倒れている人に近づき、ローブのフードを脱がせました。


 男の人です。息もしていないですし脈もありません。体も冷たくなってきていますから、もう手遅れだと思います。


 それとですね。後頭部からうなじにかけて、何か鋭利なもので切ったような傷が三つ平行についています。そのうちの一つは浅いですが、残りの二つはすごく深いので、たぶんほぼ即死だったんじゃないかと思います。


 えっと、それであたしはこの人に何をすればいいんでしょう?


「あの、ピーちゃん?」

「ピピッ!」


 ピーちゃんが血だまりに転がっている小さなロッドを指さしています。


「え? これって?」

「ピピッ!」

「……何かの魔道具のようですね」

「そうなんですか?」

「はい。そう見えます」

「魔道具……」


 えっと……はい。さっぱり見当がつきません。


「専門家を呼んだほうがいいでしょうね。魔法学園に連絡し、ゲラシム・ドレスク先生を呼んでほしいのですが、頼めますか? 私とローザ嬢の名前を出せばすぐに来てくれるはずです。それに魔法学園には警備として王宮騎士団が常駐してますから、そちらにも同じように連絡し、連れてきてください」


 公子さまが警備隊の人にそう依頼しました。


「かしこまりました。あ! あと、それらの証拠品には手を触れずにお待ちください」

「はい。分かっていますよ」

「はっ!」


 こうして警備隊の人は小走りに大急ぎで階段を駆け下りていったのでした。

 次回更新は通常どおり、2024/11/09 (土) 20:00 を予定しております。

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