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第四章第93話 襲撃

2025/03/28 ご指摘いただいた人物を取り違えていたミスを修正しました。ありがとうございました

 ローザが目撃した爆発の発生地点には王宮に現れたのと同じようなゴーレムが何体も現れ、学園内の建物などを無差別に破壊していた。


 爆発が起きたとき、周囲に人気はなく、怪我人などは出ていない。だが爆発音を聞きつけたのか、学園外から続々と野次馬が集まってくる。


 するとゴーレムたちはピタリと動きを止め、野次馬たちのほうへと振り返る。


「うわぁ。ひどいなぁ」

「なんだあれ?」

「なんかの実験の失敗か?」


 ズシンズシン。


 ゴーレムのうちの一体が敷地内に入ってきていた中年の男に近づき、腕を振り上げる。


「えっ?」


 グシャッ!


 なんと! ゴーレムは拳を振り下ろし、無慈悲にもその男を叩き潰してしまった!


「きゃぁぁぁぁ!」

「うわぁぁぁぁ!」

「逃げろぉぉぉぉ!」


 やじ馬たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、数体のゴーレムがそれを追いかけて敷地内から出て行った。


 しかし依然としてかなりの数のゴーレムが敷地内に残っており、再び破壊を始める。すると今度は二人の男子生徒が野次馬にやってきた。制服の色からして、どうやら彼らは普通科の一年生のようだ。


「うわっ!? なんだあれ?」

「暴走してるのか?」

「ヤバいな」

「魔術で攻撃してみる?」

「いや、無理だろ。あんなデカいゴーレム、絶対倒せないって」

「だよなぁ」


 遠巻きにゴーレムたちを観察しつつ、そんな呑気な会話を交わしている。


「あれ? あの赤いのって……」

「え? 人?」


 生徒たちが犠牲者がいることに気付いたのと、ゴーレムたちが生徒たちに気付いたのはほぼ同時だった。


 生徒たちは慌てて逃げ出した。だがゴーレムたちは一斉に彼らを追いかけ始める。


「うわっ! 来るな! あっちいけぇ!」


 生徒の一人が走りながらじっくりと詠唱し、石の(つぶて)を飛ばした。


 ガシャン!


「どうだ!」


 石の礫は見事に戦闘を走るゴーレムに命中したものの、何事もなかったかのようにゴーレムたちは生徒たちに向かって走ってくる。


「うわぁぁぁぁ! ヤバい! 全然だめだ!」

「逃げろ!」


 生徒たちは死に物狂いで走って行く。すると正面から五人ほどの騎士が現れた。ローザが襲撃されたことを受け、国王が魔法学園の警備のために配備した王宮騎士団の騎士たちである。


「あっ!」

「助けてください! なんかゴーレムが!」

「うむ。任せなさい」


 騎士たちは一気に間合いを詰め、剣を横に一閃した。目にも止まらぬ早業で、ゴーレムの胴体が真っ二つになる。他の騎士たちも次々にゴーレムを斬り伏せていく。


「す、すごい……」


 騎士たちの活躍に、生徒たちからは感嘆の声がポロリと零れる。


 だが!


 なんと二つに分かれたゴーレムはその断面からそれぞれ再生し、二体に増殖した!


「なんだと!?」

「どうなっているのだ!?」

「ひぃっ」

「君たちは早く逃げなさい! 我々の詰め所の場所は分かるかね?」

「え? えっと……」

「ならば学園長室は分かるな?」

「は、はい!」

「なら早くそこに行きなさい! 状況を報告して、ゴーレムに詳しい先生の派遣を要請してほしい。そのあとは学園長先生の指示に従うように!」

「はい!」


 急に任務を与えられた生徒たちは驚きつつもどことなく嬉しそうな表情も浮かべ、大きな声で返事をすると学園長室を目指して走りだす。


 たが! ゴーレムのうちの一体が生徒たちを追って動き出した。


「させん!」


 騎士の一人が今度はゴーレムの片足を斬り落としたが、やはりそこから再生して二体に分裂してしまう。


「……どうなっているんだ?」

「まさか倒せない?」

「いや、どこかに弱点はあるはずだ。敵の動きは鈍い! 増やさずに倒す方法を見つけるんだ。それまでは動きを止めることに専念しろ!」

「おう!」


 そうして騎士たちは剣で斬るのではなく、攻撃を受け流しつつ時間稼ぎを始める。


 だが騎士たちの奮闘もむなしく、十体ほどが学園内のどこかへと消えていくのだった。


◆◇◆


 報告を受けた学園長はすぐさま生徒たちに外出は控え、教師の指示に従うようにとの学長命令を発した。


 その命令はすぐに女子寮にも届けられ、それを聞いた寮母のアリアドナは寮にいる生徒たち全員を一階のロビーに集めていた。最悪の事態が起きたとしても、すぐに避難できるようにするためだ。


 彼女たちは不安げな様子で(たたず)んでいるが、そのロビーにはアリアドナの姿はない。というのも、アリアドナは正面入り口の前に立って帰ってくる女子生徒を出迎えているのだ。


 すると門の向こうからビタが姿を現し、慌てた様子で走ってくる。息はかなり上がっており、汗をびっしょりとかいている。


「ビタさん、お帰りなさい。さあ、早くお入りなさい」


 アリアドナの優しい笑顔にビタは思わずホッとした表情を浮かべた。


「はぁっ、はぁっ、ただいま、戻りました……」

「ええ」


 アリアドナから三メートルほどの距離まで来たところでビタは安心したのか走るのを止め、がっくりと膝に手をついた。


 と、今度は門の向こうから怪しい黒ずくめの男が姿を現した。その手には短剣が握られている。


「ビタさん! 早くこちらへ来なさい!」

「えっ?」

「そこのあなた! 止まりなさい! ここは女子寮です! 部外者はもとより、男性は立ち入り禁止です!」


 しかし黒ずくめの男は無言のまま、一瞬でビタに近づいたかと思うと短剣をその首筋に――!

 次回更新は通常どおり、2024/09/14 (土) 20:00 を予定しております。

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