第四章第80話 行方がわかりました
それからお風呂に入れてもらい、ロクサーナさんたちと楽しく食事をし、そしてふかふかのベッドで眠りにつきました。
そのおかげでしょうか?
なんだか今日はすごくスッキリした気分で目覚めることができました。
やっぱりあたし、すごく緊張してたんですね。ユキたちが一緒にいてくれたからあまり意識していませんでしたけど……。
「ローザお嬢様、お目覚めでしょうか?」
「あ、はい。起きてます。どうぞ」
「失礼します」
二人のメイドさんが入ってきました。手には大きなたらいを持っています。
「洗顔用のお湯をお持ちしました」
「ありがとうございます」
メイドさんが持ってきてくれたお湯で顔を洗います。
「御髪を整えさせていただきます。朝食の準備も整っておりますが、いかがなさいますか?」
「はい。食べたいです」
「かしこまりました。食堂で旦那様がたとお召し上がりになりますか? それともお部屋になさいますか?」
「えっと、食堂に行きます」
「かしこまりました。そのように伝えて参ります」
メイドさんのうちの一人がそう言って部屋の外へと出ていきました。
それから身支度を整えてもらい、あたしは昨晩夕食を食べた部屋にやってきました。
「ローザお嬢様をお連れしました」
「ああ、お通ししなさい」
「かしこまりました。ローザお嬢様、どうぞ」
「はい。ありがとうございます」
あたしはメイドさんにお礼を言って中に入ります。するとクリステア子爵夫妻とロクサーナさんがすでに席についていました。
「ローザ! おはようございます」
「ロクサーナさん、おはようございます」
真っ先に挨拶してくれたロクサーナさんに挨拶を返します。
「子爵様、子爵夫人、おはようございます」
「おはようございます、ご令嬢」
「おはようございます、ローザお嬢様。お部屋はいかがでしたか?」
「はい。すごくよかったです。おかげでとてもぐっすり眠れました」
「まあ、それは良かったですわ。さ、そちらの席にお掛けになって?」
「はい。ありがとうございます」
「ご案内いたします」
あたしはメイドさんに案内され、着席しました。それからすぐにお祈りをし、食事が始まります。
パンとチーズに目玉焼き、それから焼いたベーコンと生野菜というメニューで、自由にお代わりできるそうです。
あたしたちは世間話をしながら楽しく食べていきます。
するとお腹いっぱいになってきたところで、クリステア子爵が突然真剣な表情になりました。
「ご令嬢」
「はい、なんでしょうか?」
「もうお食事はよろしいですかな?」
「え? あ、はい。お腹いっぱいです」
「わかりました。では、落ち着いて聞いてください」
「え? はい……」
な、なんでしょう?
「つい先ほど急使が到着し、ご令嬢のいた使節団の所在が判明しました」
「えっ!? ど、どこですか!? ラダさんは? メラニアさんは!? タルヴィア子爵とイヴァンナさんは!?」
「ご令嬢、落ち着いてください。使節団員の個別の安否については情報がありません。分かっていることは、使節団はラヴィウツィの町にいるということと、そしてかなりの数の死傷者がでているということだけです」
「っ!?」
あたしは思わず立ち上がりました。
「い、急いで行かなきゃ! あたしが治さないと!」
「ご令嬢、まずは落ち着いてください」
「でも……!」
「我が騎士団が急ぎ、ラヴィウツィまでご令嬢をお送りしましょう。お一人で向かわれるより確実です」
「あ……はい。そうですよね。ありがとうございます」
「では急ぎ、出立のご準備をなさってください」
「わかりました」
こうしてあたしは急いで部屋へと戻り、出発の準備を始めるのでした。
◆◇◆
ロクサーナさんと子爵夫人にお別れをし、あたしはクリステア子爵と大勢の騎士たちに連れられて大急ぎでラヴィウツィの町にやってきました。
ラヴィウツィというのはガブラス伯爵領の領都で、カルリア公国との国境の町でもあります。あたしもカルリア公国に向かう途中で一泊しました。
「私はクリステア子爵ステファン! ガブラス伯爵よりの急報を受け、国王陛下の使者であるマレスティカ公爵家のローザ嬢を護送して参った! 開門と案内を求む!」
クリステア子爵は門の前で、ものすごい大声で叫びました。
するとすぐに門が開かれ、騎士らしき人がぞろぞろと出てきました。
「クリステア子爵閣下、ようこそお越しくださいました。お話は伺っております。ご令嬢はそちらの馬車でしょうか?」
「そうだ」
「かしこまりました。ではご案内いたします」
「うむ」
あたしたちはすんなりと門を抜け、町中を進んでいきます。そして大通りを抜け、少し路地に入ったところにある教会の前に停車しました。
「こちらの教会併設の寄宿舎にご滞在頂いております」
「うむ。案内ご苦労。さあ、ご令嬢」
馬車の扉が開かれ、あたしはクリステア子爵にエスコートされて馬車を降ります。そして教会と棟続きの建物の中に入ると、正教会の助祭の服を着た女性が目の前を通りかかりました。
「あら? どちら様でしょう? 当宿舎に何か御用でしょうか?」
「私はクリステア子爵ステファンである。そちらに滞在している外交使節の一員で、国王陛下の使者であるマレスティカ公爵家のローザ嬢をお連れした。直ちに案内せよ」
「っ! かしこまりました。どうぞこちらへ」
次回更新は通常どおり、2024/06/15 (土) 20:00 を予定しております。





