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第四章第61話 ゴブリンがしつこいです

 あの巨大なシロクマがぬっと現れ、あたしとゴブリンたちの間に立ちふさがりました。


「グルルルル!」


 ひっ! あれ、あたしたちのことを威嚇しているんですよね。


 こ、怖い……。


 あたしは思わず後ずさりしました。


 ま、まだこっちを(にら)んでいます。


「グゴォォォォォォォォォォォォ!」

「ひゃんっ!?」


 ものすごい雄たけびにあたしは思わず二歩三歩と後ずさりをしてしまいました。


 ど、ど、ど、どうすれば……。





 あ、あれ? 襲ってきません。どうなってるんでしょう?


「グゴォォォォォォ!」


 ひえっ!?


 な、何がしたいんですか!?


 あたしなんて食べたって美味しくないですよ!


 お願いだからあっち行ってください!


「ピ、ピピッ」

「え? ピーちゃん?」


 なんだかピーちゃんがあたしのマントの裾を引っ張ります。


「え? 行こうってことですか?」

「ピッ! ピッ!」


 せ、背中を見せたら襲われたりしませんかね?


「グルルルル」

「ピピッ! ピッ! ピー!」

「わ、わかりました。行きましょう」


 あたしはちょっとずつ後ずさりをします。


 追いかけてきません。でもやっぱりこっちを威嚇しています。


「グゴォ!」

「ひっ。ユ、ユキ。ホーちゃんも、逃げますよ」


 あたしは木の後ろに回ってシロクマから見えない場所に移動しました。それから意を決して、背中を向けて走りだしました。


 シロクマが追いかけてくるような足音は聞こえませんが、ゴブリンのものらしい悲鳴が聞こえてきます。


 あ! あのシロクマ、ゴブリンを襲ってるんですね。


 なら今のうちに!


 あたしは少しでも多くに行こうと、必死に森の中を走るのでした。


◆◇◆


「はぁ、はぁ、はぁ」


 どれくらい走ったでしょうか?


 息が苦しくて、とても走れそうにありません。


「ちょっと……休憩しましょう。はぁ、はぁ、はぁ」


 あたしは膝に手をつき、がっくりとうなだれます。


 はぁ、はぁ、はぁ、ふぅ。


 少し息が整ってきました。


 えっと……ここはどこでしょう?


 もうさっぱりどこにいるのかわかりません。


「ユキ、迷っちゃいましたね」

「ミャ?」


 あれ? なんだかユキの反応が薄いです。


「ピーちゃん?」

「ピピー」


 ピーちゃんもなんだか返事がつれないです。


「ホーちゃん」

「ホー」


 ホーちゃんもです。


 え? もしかしてあたし、(あき)れられてるんですか?


「ピピッ」

「ミャー」

「ホー」


 ピーちゃんが鳴くと、ユキとホーちゃんが返事をしました。するとすぐにホーちゃんが飛び立っていきます。


 あれ? ……なんだか今、会話をしていませんでしたか? 一体なんのお話をしてたんでしょう?


「ピピッ」


 ピーちゃんがポンとジャンプして、あたしの頭の上に乗ってきました。


「え? ピーちゃん?」

「ピピッ。ピッ」

「えっと、もしかして元気づけてくれているんですか?」

「ピッ」

「あ、ありがとうございます」


 えへへ。なんだかちょっと気が楽になりました。


「ピッ、ピピッ」

「はい。そうですよね。人のいる場所を探さないといけませんね」

「ピピッ」


 でも、どっちに行けばいいんでしょう。えっと、カルリア公国はマルダキア魔法王国の北西なので、きっと南東に行けばいいはずです。


 あれ? 南東ってどっちでしょう?


 必死に走ってきたので、どっちが南東か分からなくなっちゃいました。


 うーん? でも、たしかユキたちと最初にお友達になったときは、適当に歩いていたらなんとかなりましたね。


 よしっ!


「じゃあ、こっちに行ってみましょうか」

「ピッ!?」

「えっ?」


 あれれ? ビックリしていますね。どうしてでしょう?


「えっと、じゃあ、あっちでしょうか?」

「ピピー」


 あれれ? ピーちゃんの返事になんだか元気がありません。


 するとピーちゃんがピョンと地面に飛び降りました。そして近くの木の根元まで移動し、そのまま動かなくなりました。


「えっと?」

「ミャー」


 ユキがピーちゃんに寄り添うように座ります。


「えっと、もしかしてホーちゃんを待ってから移動しようってことですか?」

「ピッ」


 どうやらそういうことみたいです。


 そうですね。いつもホーちゃんはあたしが移動してもちゃんと帰ってくるので大丈夫だと思っていましたけど、やっぱり待っていてあげたほうがいいですよね。


 あたしはユキたちの隣に腰を下ろし、ゆっくりホーちゃんの帰りを待つことにしたのでした。


◆◇◆


 それからしばらく待っていたんですが、ホーちゃんは帰ってきません。


 でもその代わりにゴブリンが来ました。どうしていつもいつもゴブリンが来るんですか?


 もう、いい加減にしてください!


 あたしは魔力弾でゴブリンの頭を撃ち抜きました。するとゴブリンはバラバラに散らばり、あたしのほうに向かって来ます。


 あっ! これじゃあ狙いが……。


「ミャッ!」


 するとユキが立ち上がり、また風を吹かせました。ゴブリンとその周りの木や草が凍っていきます。


 す、すごいです……じゃなくって! 早くゴブリンを駆除しないと!


 これなら狙い放題です!


 あたしは次々とユキが足止めしてくれたゴブリンたちの頭を撃ち抜いていくのでした。

 次回更新は通常どおり、2024/02/03 (土) 20:00 を予定しています

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