第四章第53話 噴水を見に行きます
どうもこんばんは、ローザです。疲れましたが、なんとかお部屋に帰ってきました。
え? 晩さん会はどうだったか、ですか?
はい。えっとですね。なんだかすごく大変でした。あんなに大勢の偉い人に見られながら食事するとやっぱり緊張しますね。
あたし、もう何を食べたかあんまり覚えていないんです。それに公女様はずっと不機嫌でしたし……。
あ、それとですね。その後ダンスパーティーがあって、それにもちょっとだけ参加しました。最初に公子様と踊ったんですけど、それはちょっと楽しかったですよ。
ただですね? その後が、それはもう、本当に大変でした。公子様のあとはピョートル公太子様、その後は公王様と踊って、さらに初めて見る男の人が次々とダンスに誘ってきたんです。
えっと、それでですね。その、たくさん踏んづけちゃいました。公王様まではなんとか頑張って踏まないで済んだんですけど……。
「ローザお嬢様、いかがでしたか?」
「あ……えっと、疲れました」
メラニアさんが心配そうに話し掛けてくれますが、もうそれどころじゃありません。
「そうでしたか。カルリア公国の殿方がお嬢様の列をなしていたと噂になっていましたよ。どなたか素敵な殿方はいらっしゃいましたか?」
あたしは首を小さく横に振りました。
「あらあら。ローザお嬢様は辛口ですね。どんな方が好みなのですか?」
「え? えっと……」
「やはりレフ公子殿下ですか? 魔法学園でも一緒ですし、しっかりエスコートしてくださっていますよね?」
「は、はい……」
でも、あたしなんかじゃ公子様とは釣り合わないんじゃないでしょうか?
いくらマレスティカ公爵家の養女にしてもらったとはいえ、あたしは元々孤児ですからね。
「あら? ローザお嬢様、レフ公子殿下は好みではないのですか?」
「えっと……分からないです。公子様はすごく優しい人だとは思うんですけど……」
「そうですかそうですか」
メラニアさんはなんだか意味深に頷いています。ただ、それでも手は止まっておらず、テキパキとドレスを脱がせてくれます。
「はい。お疲れさまでした。浴室にお湯を沸かしてありますが、いかがなさいますか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
こうしてあたしは窮屈なドレスを脱ぎ、お風呂へと向かうのでした。
◆◇◆
翌朝の朝食は部屋に運んでもらい、少しゆっくりしてから庭園の散歩にやってきました。
ツェツィーリエ先生は午後に来るそうなので、そうしたら公太后様の治療をしなきゃいけないですからね。
もたもたしているとお散歩ができなくなっちゃいます。
あ! そうでした。勝手に行ったらダメなんでしたね。
「あの、ラダさん。あたし、ユキたちとそこのお庭のお散歩に行ってきます」
「かしこまりました。お供いたします」
「はい。お願いします」
こうしてあたしたちは庭園にやってきたんですが、ホーちゃんがいきなり飛び立ちました。
そうですよね。やっぱりずっと部屋の中にいたらストレスが溜まっちゃいますよね。
「ホーちゃん、あんまり遠くに行かないでくださいね~」
「ホー」
ホーちゃんはそう返事をすると、木のあるほうへと飛んでいきました。
さて、あたしたちはどこに行きましょう?
うーん、やっぱり気になるのは噴水なので、近くまで見に行きましょう。
あたしはたくさんの噴水がある大きな池のほとりまできました。
池のあちこちに金の像があって、その像のところから水が噴き上がっています。
あ、あれは亀ですね。亀が上を向いて、その口から水を噴出させています。
「不思議ですねぇ。魔道具も使っていないのに、どうして水が出るんでしょうね?」
「ミャ?」
「ピピッ」
えっと、そうですよね。ユキたちに聞いても知ってるわけないですよね。
亀以外にも色々な動物が水を噴き上げています。口を上に向けてそこから出しているものが多いですが、人とか天使の像の場合は手から出しているのもあります。
あ、あれ? あのおじいさんの像はどうして頭頂部から水を出しているんでしょう?
手からだしているのは魔法を使ってるって分かりますけど、つるつるの頭の上から水が出るってどういう状況なんでしょう?
えっと、これが芸術なんでしょうか? よくわかりません。
なんとなく噴水を眺めながら歩いていると、降りる階段に突き当たりました。
池の水もここから流れ落ちているので、滝になっているみたいですね。あと、水が流れ落ちるところは何かの像になっているみたいですけど、ここからじゃちょっとなんだかわからないですね。
あ、階段を下りた先に見やすい場所がありそうです。行ってみましょう。
そうして下に降りて見上げると、なんと像は竜の頭でした。そしてその竜の口から水がじゃーって落ちてきています。
……え、えっとですね。その、なんだかこの竜、悪いものを食べて病気になったみたいです。
あ! も、もちろん竜の像はよくできてるんですけど、えっと、その、水の勢いがちょうど……。
は、はい。別の噴水を見に行きましょう。そうしましょう。
あたしは水路沿いに噴水を見ながら歩いていると、なんと道の先に公女様がいました。
なんだか浮かない様子で、ボーっと噴水を眺めています。
えっと、なんだか邪魔しちゃ悪そうな雰囲気ですけど、でも挨拶しなかったら失礼なんですよね。
ううっ。緊張します。でも、挨拶しなくっちゃ。
あたしは近づき、カーテシーをして公女様に挨拶します。
「公女様、おはようございます」
すると公女様はあたしをじろっと睨んできました。
「ええ」
公女様は短くそう言うと、そのまますたすたと歩いて行ってしまいました。
えっと、あたし、どうしてこんなに嫌われてるんでしょう……。
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