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第四章第52話 晩さん会が始まります

 公子様が扉を開けてくれたので、お部屋の中に入ります。


 ひぇぇ。このお部屋も金ぴかです。謁見の間みたいに壁が全部琥珀ってわけじゃないんですけど、柱とか扉とかにものすごくたくさんの金細工がついています。


 あ! 天井もです!


 大きな天使の絵が描いてあって、その周りを金細工が額物のように複雑な模様になっています。


 えっと、カルリア公国って、もしかしてものすごいお金持ちなんでしょうか?


「ローザ嬢」

「へ? あ! はい!」

「あちらの扉は侍女と護衛騎士が待機する部屋に通じています。必要に応じてカルリア公国から補助の人員をお付けできますので、遠慮なくお申し出ください」

「はい。分かりました」


 すると公子様はニコリと笑いました。


「ここからバルコニーに出ることができますよ。庭園はこの客間からもっとも美しく見えるように設計されています。さあ、こちらへ」

「はい」


 バルコニーに出てみると、目の前にものすごい広い庭園が広がっています。庭園はこの建物よりも少し低い場所にあって、真下には広い階段が庭園に向かって続いています。その庭園には大きな池が作られていて、あちこちから水がぴゅーって噴き上がっています。


 普通にしていたら水が噴き上がるわけないですよね。もしかして、魔道具を使ってるんでしょうか?


「いかがですか? こちらが我が宮殿自慢の噴水庭園です」

「はい。すごいです。あの噴水って、やっぱり魔道具なんですか?」

「え? いえいえ、違いますよ」

「そうなんですか?」

「はい。自然の力を利用しています」

「はぇぇぇ」


 そうなんですね。よく分からないですけど、なんだかすごそうです。


「よろしければ、庭園の散策をなさいますか?」

「いいんですか?」

「もちろんです。敷地の外に出なければ、ご自由に散策してくださって構いません。ああ、従魔の子たちが一緒でも大丈夫ですよ」

「本当ですか?」

「はい。ずっと狭い部屋の中にいてはストレスがたまるでしょうからね」

「ありがとうございます!」


 それからも色々とお部屋の説明してもらっていると、ラダさんとメラニアさんがユキたちを連れてやってきました。


「ローザ嬢、こちらがこの部屋の鍵となります。私は晩さん会の準備がありますので一旦失礼しますが、始まる少し前にお迎えに上がります」

「はい。公子様、ありがとうございます」

「ええ。どうぞごゆっくり」


 そう言って公子様は優雅に礼をして、部屋から出ていきました。ただ、その扉にも金の飾りがたくさんついていて、どうにも落ち着きません。


 えっと、晩さん会までは何をしましょう?


 ……そうですね。やっぱりあのお庭を散歩、でしょうか?


「ユキ、ピーちゃん、ホーちゃん、ちょっとお散歩に――」

「お嬢様」

「え? なんですか? メラニアさん」

「晩さん会は五時から開催され、そのあとはすぐにダンスパーティーになるとのことです」

「えっと、はい」

「ですので今から支度をしないと間に合いません」

「えっ!?」

「お嬢様、まさか今お召しのドレスで晩さん会に参加されるおつもりですか?」

「えっと……」

「そのおつもりだったのですね?」

「……はい」

「いけません。晩さん会には晩さん会用のドレスがございます。今から準備をしなければ間に合いませんよ」

「え? で、でもまだあと二時間も……」

「もう二時間しかないのです。さあ、まずはお風呂です」

「は、はい……」


 こうしてあたしはお散歩を諦め、身支度をするのでした。


◆◇◆


 結局身支度に二時間掛かっちゃいました。髪を結ってもらって、お化粧もちょっと変えてってしていると二時間なんてあっという間でした。


 それで今はですね。あたしは今、公子様にエスコートしてもらって晩さん会の会場にやってきています。晩さん会の会場にはものすごく大きな一つの長テーブルを囲う感じなんですけど、もうすでにほとんどの席に人が座っています。残っているのは前のほうだけで、たぶんここは偉い人が座る席なんだと思います。


「さあ、ローザ嬢の席はこちらです」


 あたしは公子様に連れられ、テーブルの一番前のお誕生日席にやってきました。テーブルにはお誕生日席が四つあって、あたしの席は真ん中右みたいです。


「さあ、どうぞ」

「ありがとうございます」


 公子様が椅子を引いてくれ、あたしはその席に座りました。公子様はあたしの右隣に座ります。


 右側の一番前の席にはタルヴィア子爵が、その隣にはイヴァンナさんが座っています。左側の席には前から順に公子様のお兄さん、茶髪で緑の瞳のお姉さん、さらにその隣にはあたしと同じくらいの年齢で公子様とよく似た女の子が座っています。


「ローザ嬢、左から順に私の兄で公太子のピョートルとその婚約者のクセーニヤ・ユーギン伯爵令嬢、その隣が妹のエカテリーナです」

「はじめまして。マレスティカ公爵家のローザと申します。よろしくお願いします」

「ローザ嬢、はじめまして。レフの兄のピョートルと言います。レフが普段からお世話になっているそうで」

「え? そ、そんな……あたしはいつも公子様に助けてもらってて……」

「あらあら、可愛い、なんて言ったら失礼ですわね。わたくしはクセーニヤと申します。とても可愛らしいと聞いていましたけれど、想像以上ですわ」

「あ、えっと、ありがとうございます」

「……エカテリーナよ」


 あ、あれ? あたし、何か失礼なことをしちゃったんでしょうか?


 公女様がプイってそっぽを向いちゃいました。なんだか、すごく怒っているみたいですなんですけど……。


「こら、カーチャ。マレスティカ公爵令嬢になんということを」


 公太子様が公女様を叱っていますが、むすっとした表情のままあたしと目を合わせようともしません。


「えっと……」


 あたしが戸惑っていると、公王様と公妃様がやってきました。公王様があたしの隣に、その隣には公妃様が座ります。


「ローザ嬢、待たせてしまったかな?」

「えっと、いえ。公王様のご家族の方をご紹介してもらっていました」

「そうかそうか。仲良くしてくれるとありがたい」

「はい」


 でも、なぜか公女様を怒らせちゃってるみたいなんですよね。


 そんなあたしの内心を他所に、公王様は晩さん会の開始を宣言します。


「皆の者、これよりマルダキア魔法王国から来た友人、ローザ・マレスティカ公爵令嬢とタルヴィア子爵夫妻の歓迎晩さん会を始める」

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