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第四章第45話 変な手紙が届きました

 会計のチェックでは戦力外通告されてしまったので、今度は生徒会でお義姉さまのお手伝いをすることになりました。


 お義姉さまは王太子様が卒業した後に生徒会長になる予定で、今は副会長をしているんですけど、そのおかげで会計以外のほとんどがお義姉さまのお仕事みたいなんです。


 あ、王太子様もちゃんとお仕事はしていますよ。よくあたしの胸をじっと見てきてお義姉さまにつねられていますけど、お仕事はちゃんとお義姉さまとドレスク先輩とで手分けしてやっている感じです。


 それでですね。今まで生徒会って何をしているのかよく分かっていなかったんですけど、実はものすごく忙しかったみたいです。


 生徒会には色々なお仕事があって、クラブの予算の管理とか、学園祭の運営とか、図書館の本の管理とか、入学式とか卒業式とか年末のダンスパーティーとかの学校行事の企画運営とか、あとは広報誌の発行なんかもしています。


 その中でですね。あたしは本の管理と広報誌の発行のお手伝いをすることになったんです。


 というわけで、今日は広報誌を発行するための視察ということで、お義姉さまと一緒に料理研究会に来ました。


「今日は生徒会の皆さんの視察にいらしていますが、いつもどおりに活動していきたいと思います。今日は、旬の野菜とベーコンのオイルパスタを作りますが、今回の野菜は園芸同好会から提供していただきました。先日入会してくれたベティーナさんのおかげですが、このあと園芸同好会の皆さんにも提供する予定ですので、各班は人数より一人分多く作ってください」


 あれ? ベティーナさん、中途入会していたんですね。知りませんでした。


「それと、生徒会のローザ・マレスティカさんも調理に加わるとのことです。ローザさん、ジェニカさんの班に入ってください」

「はい」


 こうしてあたしはジェニカさんの班に加わり、料理研究会としての活動をするのでした。


 あ、違いました。視察でした。


 えへへ、間違えちゃいました。


◆◇◆


 週末、あたしはお義父さまに呼ばれて家に戻ることになりました。


 家に着くと大勢の使用人たちが出迎えてくれたんですけど、やっぱりなんだか慣れませんね。


 えっと、はい。それでですね。あたしはそのままメラニアさんに連れられて、お義父さまの執務室にやってきました。


「旦那様、ローザお嬢様をお連れいたしました」

「ご苦労。入りなさい」

「かしこまりました。さあ、お嬢様」


 メラニアさんはそう言って扉を開けてくれました。


「ありがとうございます」


 執務室の中に入ると、お義父さまはいつものように優しく微笑みかけてくれます。


「ああ、おかえり。よく戻ってきたね」

「はい。ただいま戻りました。あの、何かあったんでしょうか?」

「そうなんだ。実はあれから何度もローザ宛にオーデルラーヴァから脅迫状が届いていてね。すべてこちらで破棄させてもらったんだけど……」

「えっ? 脅迫状?」

「ローザの力を利用したいから帰ってきなさいってことだよ。あの手この手でローザに届けようとしていたみたいだけれど、すべて阻止させてもらったよ。だけどね」

「はい。どうしたんですか?」

「これだけはどうすべきか迷ったんだ」


 そう言ってお義父さまは封筒を見せてきました。


「それは?」

「近くで見てごらん。見覚えがあるだろう?」

「え? えっと……え? もしかして!」

「そう。封蝋が第七隊隊長オフェリア・ピャスク殿のものなんだ」

「じゃあオフェリアさんは無事なんですね!」


 しかしお義父さまは深刻そうな表情を浮かべた。


「生きているかどうかで言えば、おそらく無事なんだろうね」

「え?」

「ただ、状況がまったく分からない」

「えっと?」

「中身を読んでみなさい」

「はい……」


 お義父さまは封筒の中から手紙を取り出し、あたしに差し出してきました。


 えっと……。


────

 ローザへ


 お元気ですか?

 オーデルラーヴァは今、とても平和で素晴らしい町に生まれ変わりました。故郷に早く帰ってきましょう。そうすれば貴女は幸せに生きていけることでしょう。


 貴女に会えるのを楽しみにしています。


 オフェリア・ピャスク

────


 え? これ、本当にオフェリアさんが書いた手紙なんですか!?


 オフェリアさんがこんなことを言うはずがありません。全然オフェリアさんっぽくないですし、それに前の手紙では絶対に帰ってきちゃいけない、マレスティカ公爵家の指示に従いなさいって言っていたじゃないですか。それに故郷だなんて……。


「あの、これって……」

「内容は偽者が書いたとしか思えないけれど、筆跡は本物だったんだ。ほぼ間違いなく、オフェリア・ピャスク殿本人による字だ」

「そんな……あ! じゃあもしかして本当に安全になった……なんてわけないですよね」


 お義父さまは深刻そうな表情で(うなず)いた。


「そうだね。それにもし仮にそうだったとしても、国を名乗る武装集団が占拠している町に行かせるわけにはいかないよ。ローザはもううちの娘だからね」

「……はい」


 それはそうですよね。


「まあ、可能性として一番高そうなのは、脅されて書いているということだと思うよ。たとえば家族を人質にされたとか、ね」

「そんな……ひどい……」

「ともかく、今日呼んだのはこのことを直接伝えるためなんだ。何があっても誘いに乗ってはいけないし、絶対に一人で判断しないこと。それに、外出時は必ずラダたち護衛騎士を連れて行きなさい。いいね?」

「はい……」


 これまでに何度念を押されたか覚えていないくらいの同じ注意ですが、なんだか今回はちょっと今までとは状況が違うって実感できます。


 それにしても、オフェリアさんは大丈夫なんでしょうか? それにシルヴィエさんやお姉さんたちだって……。


 ああ、すごく心配です。あたしに何かできることがあればいいんですけど……。

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