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第四章第42話 退会しました

2023/10/03 ご指摘いただいた名前の間違いを修正しました。ありがとうございました

 翌日、あたしはカルミナさんに呼び出され、料理研究会の調理室へとやってきました。そこにはカルミナさんだけじゃなくジェニカさんもいて、なんだか少し深刻な表情をしています。


「あの、お話ってなんでしょうか?」

「昨日、生徒会に行って入会希望者の件を相談してきたわ」

「はい」

「結論から話すわね。ローザさんに一度料理研究会から退会してもらうのはどうかという話になったわ」

「えっ? なんであたしが辞めなきゃいけないんですか?」


 あたしは思わずカルミナさんに聞き返してしまいました。


 だって、おかしいじゃないですか。どうして後から、しかもマレスティカ公爵家の養女にしてもらったからって寄って来た人たちのために辞めなきゃいけないんでしょう。


「ローザさん、最後まで落ち着いて話を聞いて。これは生徒会からの、いえ、レフ公子殿下からの提案なのよ」

「えっ?」


 公子様がどうしてそんなことを……?


「入会希望者たちの目的はおそらく、ローザさんと繋がりを持つことよ。でも、やっぱりこのままでは理由がないから入会を断れないって言われたわ。それでローザさんが退会したとしても料理研究会に入りたいのかどうか、確認してみればいいって話になったの」

「えっと、つまり退会したふりをするんですか?」

「そうね。でも、実際に退会してもらうわ」

「えっ? でも何かのクラブに入らないといけないんじゃ……」

「そこは生徒会が受け入れてくれるそうよ」

「えっ?」


 じゃ、じゃあ、もしかして王太子様と毎日顔を合わせるってことですか?


「あら? 他に入りたいクラブでもあるのかしら?」

「い、いえ……ただ、ちょっと、その、王太子様が……」

「え? ……ああ、そういえば」


 カルミナさんは困ったような表情であたしの胸にちらりと視線を向けました。


「レフ公子殿下はほとぼりが冷めるまで活動を自粛してもらって、その後は料理研究会の活動を毎回視察すればいいと仰っていたわ。だから少しの間、我慢してもらえないかしら」

「そ、それなら……!」

「ローザ、本当にそれでいいんだな?」


 険しい表情で見守っていたジェニカさんが突然口を挟んできました。


「え? えっと……はい。それで上手くいくなら」

「……」


 ジェニカさんはじっとあたしの目を見つめてきましたが、しばらくすると小さくため息をついて表情を崩します。


「わかったよ。ローザがそれでいいならあたしは何も言わない。変な連中のせいでウチの大事な仲間が辞めなきゃならないっていうのは気に食わないけどな」


 それはそうですけど……でも皆さんに迷惑をかけるよりはきっとこのほうが丸く収まりますよね?


「ではローザさん、今から生徒会室に行くけれど時間は大丈夫かしら?」

「は、はい」


 王太子様に会うのはちょっと気が重いですけど、仕方ないですよね。


「ではジェニカさん、戸締りをお願いできるかしら?」

「ああ」


 こうしてあたしは料理研究会の退会届を書き、カルミナさんと一緒に生徒会室へと向かいました。そしてノックをして生徒会室に入るとそこには公子様と知らない一年生の生徒の二人がいて、公子様がすぐに優しい笑顔であたしに声を掛けてきます。


「ローザ嬢、この度は災難でしたね」

「い、いえ。今回も助けてくださったそうで、ありがとうございます」

「いえいえ。クラブが目的に沿った活動ができるように支援するのも生徒会の仕事ですから」


 そう言って公子様は再び爽やかに微笑みました。


「レフ公子殿下にご挨拶申し上げます」


 カルミナさんが公子様に礼を()りました。


 あっ! いけない! あたしもやらなきゃ!


「ご、ご挨拶申し上げます」


 あたしも慌ててカルミナさんに倣います。


「ローザ嬢、構いませんよ。私から声を掛けたのですから。カルミナ嬢も、どうぞ楽になさってください」

「は、はい」


 あたしたちは窮屈なカーテシーのポーズをやめました。すると公子様は一年生の生徒を指し示しながら口を開きます。


「ローザ嬢、彼とは初対面でしょうか?」

「え? あ、はい。そうです」

「そうですか。ローザ嬢、彼はレアンドル・コンスタンティネスク。コンスタンティネスク侯爵の甥で、タルヴィア子爵のご子息です。レアンドル、ご挨拶を」

「え? ああ、はいはい」


 レアンドルさんは面倒くさそうに立ち上がると、いかにも投げやりな感じで紳士の礼をしてきました。


「レアンドル・タルヴィア・コンスタンティネスクと申します」

「……ローザ・マレスティカです」


 ちょっとムッとしましたが、こんなことで怒っちゃダメですよね。


 上手く笑えていたかは分かりませんが、カーテシーをしました。


「では自己紹介も済んだところで、そちらにお座りください」

「はい」


 あたしたちは指示されたソファーに腰かけました。


「結論はどうなりましたか?」

「はい。結論は――」


 カルミナさんが公子様の提案を受け入れることにしたことを伝えました。


「そうでしたか。ではローザ嬢、料理研究会への退会届はありますか?」

「はい。これです」


 あたしが公子様に退会届を渡すと、公子様はざっと内容に目を通し、すぐにサインを書き込みました。


「はい。これでローザ嬢が料理研究会から退会したことを生徒会も確認しました。では続いてこちらの入会届にサインをしてください」

「はい」


 あたしは公子様から渡された入会届に自分の名前を記入して、公子様に返しました。


「たしかに受領しました。ではローザ嬢、しばらくの間にはなるでしょうがよろしくお願いします。生徒会の次の活動日は明日の放課後です。全員顔見知りだとは思いますが顔合わせとなりますので、遅れずに来て下さい」

「はい。わかりました」


 こうしてあたしたちは生徒会室を後にしたのでした。


 ……あれ? 明日って、料理研究会の次の活動日ですよね?


 あああっ! ジェニカさんのラズベリーパイ!


 ううっ、楽しみにしてたのに……。

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― 新着の感想 ―
なぜ、公爵家の養女が子爵家の子息にカーテシーをするのでしょう。カーテシーは目下の者が目上の人に対して行うものなので、公爵家から十分注意されていると思うのですが。
[気になる点] なぜか公子殿下の名前がこの回だけ、ルカ公子になってます レフ公子では…? それとも、ルカ公子という人物がいたんでしたっけ?
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