第19話 餌付けしちゃいました
結局何だか可哀想になったあたしはこのミミズクさんを連れてマイホームに戻りました。盗まれかけましたけど、結局ウサギ肉は無事でしたしね。
「ミャー」
やれやれ、と言わんばかりのユキの声が何となく耳に痛いです。
あたしはぐったりしているミミズクさんをピーちゃんにお願いしてきれいにしてもらい、それから壊れた調理場を直すと洗って汚れを落としたウサギ肉をまた火であぶっていきます。
そして調理をする片手間にきれいになったミミズクさんの頭を撫でてみます。野生の動物なら嫌がりそうなものですけど、そんなこともなくあっさりと撫でさせてくれました。
あ、このモフモフも結構気持ちいいかもしれません。
そうこうしているうちにお肉が焼き上がりました。もうこのミミズクさんも悪さはできないでしょうから外ごはんです。
食事って、何故かは分かりませんけどたき火を囲んで食べたほうが美味しいと思うんですけど、これってもしかしてあたしだけですか?
さて、今日は特別にこのミミズクさんにも分けてあげることにしましょう。
あたしは三人分の食事を配るとお祈りをします。そして自分の分のお肉をミミズクさんに小さく千切って差し出してみます。
ミミズクさんはそれをじっと見て何かを考えている様子です。それから、意を決したようにくちばしでつまむと上手に飲み込んでいきます。
あはっ。やったぁ。エサをあげられました!
それから何だか楽しくなって自分のお肉の半分くらいをミミズクさんにあげてしまいました。
ちょっと自分の分が足りない気がしましたけど何となく満足したので良しとしたいと思います。
それじゃあ、後は片付けをして寝るだけですね。おやすみなさい。
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おはようございます。ローザです。
朝起きてマイホームから出て見たらですね。何とあのミミズクさんがまだいたんです。
どうもユキが飛びついてお肉を取り返したときにこのミミズクさん、翼を痛めちゃったみたいで飛べなくなってしまったようなんです。
別に盗まれたものを取り返しただけなので悪いことをしたわけじゃないんですけど、何となく申し訳ない気持ちになります。
だって、飛べないミミズクさんはもう生きていけないですからね。
かといって、昨日あたしの手からエサを食べてくれたこのミミズクさんをもう食料とは思えないですし、このまま見捨てるのも何だか寝覚めが悪いです。
うん。決めました。とりあえず飛べるようになるまで面倒を見てあげましょう。
となれば、名前を決めないとですね。
うーん。どうしましょう。悩みますね。
外見は明るい茶褐色に黒が混じっていて、瞳は濃いオレンジ色、くちばしは黒くてミミズクらしい耳のような羽が生えています。
えっと、たしかミミズクはフクロウの仲間だから、ホーって鳴くはずですよね。
うん。決めました。ホーちゃんにしましょう。飛べるようになったらお別れですし、そんな凝った名前にしなくても良いですよね?
「それじゃあ、ミミズクさん。あなたの名前はホーにしました。これからよろしくね。ホーちゃん!」
あたしがそう言うとホーちゃんは顔を大きく傾げたのでした。
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あれから一週間が経ちました。すり潰した薬草を食べさせてあげていたおかげか、ホーちゃんの翼の傷もすっかり癒えて飛べるようになりました。
これでホーちゃんも我が家を巣立って行く、と思いきやまだ居座っています。
ホーちゃんは昼間あたし達が狩りをしている間はマイホームの中で寝ていて、夜になるとどこかに出掛けて行っています。
もちろん、夕食の時と朝食の時はちゃっかりと食事をねだってきます。
まあ、もう情が湧いてしまったのでホーちゃんにねだられるとついつい食べさせてあげちゃうせいなんですけどね。
そうそう。それとですね。ホーちゃんはたまに夜中に狩った獲物をあたしのところに持ってきてくれるんです。
すごいと思いません? 何だかもう、ホーちゃんに食事を取られて怒っていた時が懐かしいです。
これはもう、鶴の恩返しならぬミミズクの恩返しってやつですよね!
あれ? でも鶴の恩返しって何でしたっけ? 夢の話でしたっけ?
こほん。
そんなわけで、もうホーちゃんは半分仲間みたいな感じになってしまいました。ふわふわの羽毛も触っていると気持ちいいですし、この子も従魔になってくれたらいいのにって思います。
でもテイマーは魔物を従える職業だって聞きましたし、さすがにミミズクは無理だと思うんですよ。
今までの経験からすると、友達になってもらって一緒にいる約束をしてもらうと従魔にできるみたいなんですよね。
うん。ちょっと今晩夕食の時に試してみましょう。
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そして夕食の時間がやってきました。今日のご飯は何と! 久しぶりの猪です。
今日の狩りで運よく見つけて仕留めることができました。
血抜きもバッチリしましたし、きちんと解体してあります。あとは好きな部位を焼いて食べるだけです。
じゅるり。
あとはホーちゃんにお友達になってってお願いするだけです。
しかし、そんなあたし達のところに招かれざる客がやってきたのでした。