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第四章第34話 依頼人の家に着きました

2023/08/01 誤字を修正しました

 あたしはラダさんとヴィーシャさんに一緒に来てもらい、冒険者ギルドにやってきました。


「ここが冒険者ギルドかぁ」

「はい。いつもはもっと混んでるんですけど……」


 朝と言うには遅く、お昼と言うには早い微妙な時間なこともあって、冒険者ギルドはとても空いています。


 これならば並ばずに済みそうですね。


 あたしは早速受付の一つに向かい、お姉さんに話しかけます。


「すみません」

「いらっしゃいませ。冒険者ギルドにどのようなご用でしょうか?」


 お姉さんはニッコリ笑って応対してくれます。


「はい。指名依頼が届いたって聞きました」

「えっ?」


 お姉さんは一瞬驚いたような表情になりましたが、すぐに笑顔に戻りました。


「それでは、冒険者カードをご提示ください」

「はい」


 冒険者カードを提出すると、お姉さんは冒険者カードを確認し始めました。そしてすぐに納得がいったという表情になります。


「ご提示いただきありがとうございます。確認できました。少々お待ちください」


 そう言ってお姉さんは奥に姿を消し、そしてすぐに戻ってきました。


「こちらが依頼書となります」

「はい」


 お姉さんから受け取った依頼書の内容を早速読んでみます。


 えっと……梅毒の患者さんの治療の依頼のようです。報酬は一万レウ、金貨十枚です。若鳥の止まり木が一泊八十レウですから……えっと……すごくたくさん泊まれます。


 と、とにかくですね。そんな高額の報酬を払えるってことは、依頼人はお金持ちの人みたいです。


 ……そうですね。このまま苦しんでいる人を放っておくのは可哀想ですし、それに梅毒ならクルージュの終末病院で治療しています。


「その、護衛の人と一緒でも良ければ」

「もちろんです。ローザ様はマレスティカ公爵家のご養女になられたのですよね? よろしければこの場で冒険者カードの更新をしていかれますか?」

「あ、はい。お願いします」

「かしこまりました。それでは冒険者カードをしばらくお預かりしますね」

「はい」


 そうして受付のお姉さんはあたしの冒険者カードを持って奥へと消えていきました。


「ねえ、どんな依頼だったの?」

「えっと、病気の人を治してほしいみたいです」

「ああ、なるほど。それはローザにしかできないもんね。どんな病――」

「おほん!」


 そう話していると、ラダさんが大きく咳ばらいをしました。


「え?」

「ローザお嬢様、他人の耳のある場所でそのようなお話をなさるのは……」

「あ……そ、そうでした」

「ヴィクトリア、護衛が率先してそのような会話をしてはいけません」

「は、はい。すみませんでした」


 ラダさんは表情を変えず、小さく(うなず)きました。


「お待たせしました。こちらが新しい冒険者カードとなります。お名前にお間違いがないか、ご確認ください」

「はい。大丈夫です」


 えへへ。ちゃんとローザ・マレスティカって書いてあります。それから、国籍がオーデルラーヴァからマルダキア魔法王国に変わっていますね。


「また、依頼をお受けいただけるとのこと、誠にありがとうございます。依頼人の住所はそちらの依頼書に書かれております。そちらの住所で依頼書と冒険者カードをご提示いただき、依頼完了後は依頼書の下の欄に依頼人のサインを記入させたうえで受付までご提出ください」

「わかりました」

「それでは、いってらっしゃいませ」

「はい」


 あたしは受付のお姉さんに笑顔で見送られ、新しい冒険者カードを持って依頼人の家へと向かうのでした。


◆◇◆


 あたしたちは冒険者ギルドを出て、高級住宅街の近くにある依頼人の家にやってきました。


 あ、あくまで高級住宅街の近くなので、広い敷地の大きなお屋敷じゃなくて、棟続きの普通の集合住宅なんです。


 でもなんとですね。この集合住宅一棟がまるごと依頼人の家みたいです。一棟まるごと持っているなんて、ものすごいお金持ちですね。


 あたしは早速依頼人の家の大きな扉についているドアノッカーを叩きました。ゴンゴン、と重たい音がして、しばらく待っているとなんだか疲れていそうなおじさんが出てきました。


「どちら様ですか?」

「冒険者ギルドから来ましたローザといいます」


 あたしが名乗って冒険者カードと依頼書を見せると、おじさんは突然カッと目を見開きました。


「まさか! 依頼をお受けいただけたのですか!?」

「はい。治療に来ました」

「なんと……! ありがとうございます。ささ、どうぞこちらへ」


 こうしてあたしたちは建物の中に入りました。なんだか高そうな物があちこちに置いてあって、やっぱりお金持ちって感じです。


 ただ、ちょっと気になるのは使用人の人たちがあたしのことをジロジロと見てくるんですよね。使用人の人たちの中には武器を持っている人たちもたくさんいて、しかも顔が怖いんです。目つきは悪いし、顔に大きな傷がある人もたくさんいます。


「ヴィクトリア、気を抜かないように」

「はい」


 あたしの後ろでラダさんが小声でヴィーシャさんにそう伝えています。


 そう、ですよね。なんだか普通じゃない雰囲気です。


 あたし、この依頼を受けて大丈夫だったんでしょうか?


 なんだか不安になってきました。すると案内してくれているおじさんが立ち止まります。


「こちらの部屋でございます」

次回更新は通常どおり、2023/07/22 (土) 20:00 を予定しております。

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