第17話 お皿を作ってみました
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2020/12/31 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
どうもおはようございます。ローザです。昨日は色々あって夜更かししてしまったせいでちょっと寝坊してしまいました。
今ちょうど目覚めたところなんですけど、大変です。ユキがいません!
「ユキ? ユキ? どこですか!?」
慌てて起き出すとマイホームの外に出ます。やっぱりいません。
「ユキー!」
「ミャー」
あれ? 何故か頭の上から呑気なユキの声がするような?
ああ、なんてことでしょう。きっとユキは天国に行っちゃったから上から声が聞こえるんですね。
「ミャー?」
またユキの声が聞こえます。あ、何だか悲しくなって涙が……。
「ミャー」
「ピピッ」
ユキの声に加えてピーちゃんの声まで頭の上から……。みんなあたしを残して天国に行ってしまったんでしょうか?
あれ? 今肩を叩かれた様な?
あたしが慌てて振り向いて顔を上げるとマイホームの屋根の上からピーちゃんの腕が伸びていてます。
そしてその隣にはユキの姿があります。
「あ、あれ? ユキ?」
「ミャー」
「ユキ! ユキ! ユキー!」
「ミャー」
良かった。元気になってる! ああ、本当に良かった!
思わず抱っこしたくなったのですが、屋根の上から降り来てくれません。
「ちょっと、降りてきて抱っこさせてください。ユキ」
「ミャー」
「え? 嫌だ? 痛くしないですから」
「……ミャ」
渋々といった感じでユキがストンと華麗な身のこなしで屋根から地面に着地しました。
「ユキー!」
あたしはユキを抱っこするとそのまま胴体に顔を埋めます。ユキの暖かさと鼓動が伝わってきて、すごく安心します。
「ユキ。ごめんなさい。あたし、今度からゴブリンを見たらすぐに撃つから。もうあんな危険なことしないで。ね?」
「ミャー」
ああ、良かった。いつものユキです。ああ、本当に!
****
ひとしきりユキ成分を補給したところで朝ごはんにします。
「ええと、ピーちゃんはいつも通りのお肉ですね。はい。それとユキは昨日のお魚を、あれ? あ、そうでした。横取りされちゃったんでした。じゃあお肉で我慢してください」
ユキとピーちゃんに昨日の鹿肉をあげるとあたしも鹿肉にかじりつきます。冷めているので大して美味しくないですし、それに血抜きが遅れたせいでやっぱり少し臭いですがこればかりは仕方ないですね。
でもユキは文句も言わずいつも通りの量をしっかりと平らげてくれました。元気そうです。やはりああ見えてもユキは魔物なので、もしかしたら回復力がすごいのかもしれません。
ピーちゃんはいつも通り、骨まで残さずきっちりと平らげてくれました。もちろん、あたし達の食べ残しもきれいに消化してくれましたよ。
さて、ユキも元気になったところで今日は何をするかなんですがですね。今日はちょっと小物づくりをしてみようと思います。
食事も安定してきましたし、そろそろ生活の質を向上させたいなって思ったんです。いつまでもずっと葉っぱに手づかみというのもどうかなって思いまして。
というわけで、あたしは今マイホームの前に置いた丸太に座って木材の加工をしています。木材はちょっと前に切り出してきたもので、マイホームの脇に薪用として置いておいた奴です。
こっちの方が乾燥しているし、切り倒したばかりの木よりも使いやすいかなって思いまして。
あ、もちろんちゃんと使った分はきちんと拾ってきたり切ってきたりしているのでご心配なく。【収納】と【無属性魔法】のおかげで木を切り倒すのはそんなに大変じゃないですから。
さて、まずはお皿を作ろうと思います。スープはお鍋が無いから作れないので全部平皿で良いですよね。
あたしは材料の丸太を適当な厚さに切ると、周りの皮の部分を切っていきます。石だって切れる魔法の刃は木なんて簡単に切れてますし、これだけ切れ味が鋭いと加工も楽ちんです。
だって、普通の職人さんはのこぎりで切ったりノミで削ったりするんですよね?
あたしも孤児院で男の子たちが日曜大工のお手伝いをしているのを見ましたけど大変そうだなって思ってました。その時あたし達女の子はお掃除くらいしか手伝いませんでしたので、こう言う事をするのは今回がはじめてです。
あっとそうこうしているうちにお皿の元となる平らな丸い板が出来ました。あとは、これの真ん中を削ってお皿っぽく出来れば完成ですね。
慎重に、ちょっとずつ削って。
あ。
ざっくりと削りすぎて穴が開いちゃいました。えへへ、失敗です。
えっと、失敗作は薪です!
それじゃ気を取り直して次に行ってみましょう。
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はあはあ。何とかお皿ができ上がりましたよ。ものすごい数失敗しましたけど、ようやく一枚完成です。
表面もなめらかですし、指で触ってもすべすべになりました。孤児院で使っていた木皿とそんなに変わらないクオリティな気がします。
えへへ。あたしって意外と凝り性だったみたいです。
あれ? 何だか薄暗くなっているような?
「ミャー」
「ピピー」
何だか二人に呆れられている気がしますけど……あ! もしかしてもう夜!?
「ちょ、ちょっと集中しすぎちゃったなー、なんて? ダメですか?」
「ミャー」
「ピピー」
「あ、はい。ごめんなさい。お昼ご飯をすっかり忘れてました」
あたしは素直に謝ると二人のご飯を出してあげます。今日ももちろん鹿肉です。
いつもよりちょっと多めに出してあげるとあたしもかぶりつきます。こうやって毎日お肉が食べられるのは幸せですよね。
もう一口食べてさらにもう一口、と思ったところでユキが突然シャーッと威嚇し始めました。
次の瞬間、あたしの作りたてのお皿の上に盛り付けられていた鹿の塊肉が突然空を飛んでいきます。
「え?」
あたしは慌てて塊肉に手を伸ばしますがもう届きません。
そしてあたしの塊肉を持って飛んでいるのは昨日と同じあの鳥です!
「ちょ、ちょっと! それはあたしのお肉! 待ちなさい!」
そう叫んでも獲物を手に入れた鳥が待ってくれるはずもありません。
あたしのお肉は夜の森の中へと消えていったのでした。