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第四章第7話 リリアちゃんが鋭いです

 それからてんやわんやで大変だったんですが、最終的にアデリナさんも赤ちゃんも大丈夫そうになったので、あたしたちはそれぞれ自室に戻って休むことになりました。


「ローザちゃん、大丈夫? 右の頬、あのお医者さんに叩かれてたでしょ?」

「え? あ……」


 言われて思い出すと、なんだか急に痛くなってきました。


 そうでした。あたし、あのおじいさんにいきなり叩かれたんでしたね。


「あたしが治してあげたいけどもう魔力が……」

「大丈夫です。せっかくだから部屋に戻ってピーちゃんに治してもらいます」

「あ! ピーちゃん! あたしもピーちゃんの全身マッサージしてもらいたい!」

「はい。それじゃあピーちゃんにお願いしてみましょう」


 そうしてあたしたちは部屋に戻ると、早速ピーちゃんにお願いします。


「ピーちゃん――」

「ピッ! ピピッ!」


 するとあたしがお願いを言う前にピーちゃんが抱きついて生きてあたしの頬をすぐに治療してくれました。


「ピピッ! ピピッ!」

「あ、え? ちょっと……」


 あたしはそのままピーちゃんに引っ張られてソファーに座らされました。するとすぐにピーちゃんが全身をきれいにしてくれます。


 ああ、いつもどおり気持ちいいです。


「ミャー」

「ホー」

「あ、ユキ、ホーちゃん……」


 えっと、これってもしかして心配させちゃったんでしょうか?


「えっと、いきなりいなくなってごめんなさい。アデリナさん、えっと、ここのお屋敷の奥さんの出産、ちょっと大変だったんです」


 あ、えっと、なんだか抗議されているような……。


「えっと、はい。次はちゃんとみんなに声をかけてから行きます」


 あれれ? まだ抗議されているような?


「あ! えっと、はい。頬は叩かれたんですけど、その、ここのお屋敷の旦那様がすぐに(かば)ってくれたので大丈夫です」


 あれ? これでもまだ抗議されています。えっと……。


「ローザちゃん、もしかしてその子たち、一緒に連れて行って欲しかったんじゃないの?」

「あ……えっと……はい。わかりました。できるだけ……」

「ミャッ」

「ピッ」

「ホー」


 ああ、良かった。どうやら納得してくれたみたいです。


 それによく考えたらピーちゃんだけでも連れて行ったほうが良かったですね。ピーちゃんなら治療もできますし。


「あ、そうだ。ピーちゃん、リリアちゃんもきれいにしてあげてくれませんか? リリアちゃんも

赤ちゃんを助けるためにすごく頑張っていたんです」

「ピッ」


 ピーちゃんは短く返事をするとすぐにリリアちゃんのところへと向かい、体に纏わりつきます。


「あ……んっ。気持ちい……」


 リリアちゃんは気持ちよさそうに目を細めています。


 そうですよね。ピーちゃんにきれいにしてもらうと気持ちいいですもんね。


「あ、そうだ。ローザちゃん」

「なんですか?」

「ローザちゃんが叩かれたとき、どうしてマルセル様はお医者さんじゃなくてローザちゃんを信じてくれたのかなぁ?」

「え?」


 そういえば……そうですね。瀉血(しゃけつ)はトレスカでもみんな受けてましたし、普通の治療だと思われているんでした。あたしだって、夢のことがなかったら瀉血がおかしいなんてきっと思わなかったと思います。


「それに、マレスティカ公爵家に逆らったって、どういうことなんだろう?」

「えっと?」

「だって、ローザちゃんを叩いても公爵家に逆らったことにはならないでしょ? いくらあたしたちが治癒魔術が使えるからって、お医者さんの治療は別だもん。もちろんお医者さんがローザちゃんをいきなり叩いたのは(ひど)いと思うけど……」


 えっと……あ! もしかしてあの発言って、あたしがマルセルさんの義理の妹になるからでしょうか?


 でもその話はバレちゃダメなやつなんですけど……。


「えっと……はい。えっと、そうですね。でも血を抜いたらアデリナ様、多分死んじゃってましたし……」

「そうだったの? でも瀉血ってみんなやってるよ? 悪い血を外に出すって」

「でも、血はあたしたちが生きるのに必要なんです。だから無くなったら死んじゃうんです」

「うーん、そうなのかなぁ。でもローザちゃんがそれで治せてるってことは、きっとローザちゃんの言っていることのほうが正しいんだよね。だって、魔法はちゃんとイメージできないとダメなんでしょ?」

「はい。そうですね」

「そっかぁ……って、そうじゃなくって! どうしてあれで公爵家に逆らったって話になったんだろうって話だった。ねえ、どう思う?」

「えっと……」


 ダメです。上手く話を()らせたと思ったんですけど……。


「ほ、ほら、きっとあれです。あたしがレジーナ様のお友達だからですよ。それにあたしに治癒魔法を使わせたくて呼んだんですよね? だから、きっとその邪魔をしたのを怒ったんですよ」


 リリアちゃんは少し疑わしげな目であたしのほうを見てきます。


「え、えっと……たぶん?」


 するとリリアちゃんがふっと表情を緩めました。


「あはは、たぶんって何よ? もう、ローザちゃんったら……」


 そしてリリアちゃんは小さくため息をつきました。


「うん。わかった。そういうことにしておいてあげる。じゃあ、もう遅いしあたしは寝るね。ピーちゃん、ありがとう」

「ピッ!」

「ローザちゃんもおやすみ」

「あ、はい。おやすみなさい」


 こうしてリリアちゃんは自分の部屋に戻っていきました。

 

 えっと、上手く誤魔化せましたかね?


 えっと、えっと、バレちゃってたらどうしましょう?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 大量出血すれば死ぬことくらい知っているはず。 瀉血が有効だとしても限度がある。
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