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第三章第56話 ゴブリンが多すぎます

 最初のうちは皆さん頑張ってくれていたんですけど、やっぱり外に出て戦うのは良くなかったみたいです。


 ヴァシリオスさんたちもコンラートさんも段々息切れしてきて、目に見えて動きが鈍り始めてしまいました。


「えい! えい!」


 あたしも魔力弾で撃ち抜きますが、あまりに数が多すぎてとてもじゃないですけど倒しきれません。


「ぐあっ!」

「ヴァシリオス!?」


 一番先頭で体を張っていたヴァシリオスさんがゴブリンの一撃をくらってしまいました。


「抜かせるものかぁ!」


 ヴァシリオスさんは攻撃を受けながらも、なんとかゴブリンを斬り伏せました。ですが、ゴブリンは続々と襲ってきて……。


「がっ!? うわぁぁぁぁぁ」

「このっ! ぐあっ!」


 ヴァシリオスさんに続いてアイオネルさんが、さらにコンラートさんもボールが戻ってくるまでの間を狙われてしまいます。


「うわっ!」

「ユキ」

「ミャッ」


 それだけで伝わったのか、二メートルほどの高さがあるこの場所から華麗に飛び降りると壁の上に登りました。


 そして大きく息を吸い込むと吹雪を吐きました。ユキの吐いた吹雪はゴブリンの群れをコンラートさんたちごと凍りつかせます。


「ローザ!? お前! 何をしている!」


 マリウスさんの罵声が飛んできました。


「あ、その、今のうちに助けを……」

「マリウス様! 凍ってゴブリンどもが動けない間に三人を助けなさい!」

「っ! あ、ああ!」


 マリウスさんはすぐに氷を溶かし、コンラートさんたちを救出していきます。


「ピーちゃん、お願いします」

「ピッ!」


 ピーちゃんは壁を伝ってするすると降り、怪我をしたコンラートさんたちを治療していきます。


 あとはピーちゃんがなんとかしてくれるはずなので、あたしは再びゴブリンを魔力弾で射殺していきます。


 ですが数があまりにも多すぎてどうにもなりません。


 マリウスさんたちが頑張って入ってこないようにしてくれていますが、これはもう時間の問題だと思います。


「……無理ですわね」


 ロクサーナさんはそう言うと、救助要請用の赤い宝玉を上に向かって放り投げました。すると宝玉はぐんぐんと高度を上げ、そして赤く(まばゆ)い光を放ちました。


「ロクサーナ様!?」

「もう無理ですわ。わたくしたちの優先すべきことは誰一人として欠けないことのはずです。特に、丸まって震えているだけの者を(かば)い、勇敢な者が傷つく必要などありません!」


 ロクサーナさんはそう言い放つと、ちらりと視線をテントのほうへと向けました。


 あれ? テント?


 ……あ! アレックさんですか。


 そういえばどこにもいないなと思っていましたけど、テントの中だったんですね。


 でも戦う力がないんですから、こっちに避難させてあげたほうがいいと思うんですけど……。


「……仕方ない。おい! お前たち! 入口だけを守れ! 先生方の救援が来るまで、一匹たりとも入れるな!」

「はい!」


 マリウスさんの指示にゼノさんとパヴェルさんは(うなず)きます。


「俺だってまだやれる!」

「俺もだ!」

「俺も!」


 ピーちゃんによる治療を受けたコンラートさんたちも立ち上がります。


「二人一組で、交代で入口を守れ!」


 マリウスさんの指示を受けて、狭い入口を必死に守ってくれています。


 あたしも頑張らないと!


 あたしは魔力弾を次々とゴブリンたちに撃ち込むのでした。


◆◇◆


 あたしたちはかれこれ百匹くらいのゴブリンを倒しているはずなんですが、まだまだゴブリンは迫ってきます。


 一体どれだけいるんでしょうか?


 あたしはもう魔力が限界ですし、ユキも辛そうです。他の皆さんももう満身創痍な状態で、もうダメかも知れません。


 そう思ったとき、突然遠くで大きな爆発が起きました。


「ゴブリンどもを駆逐しろ!」


 あれは! ゲラシム先生の声です。ついに助けが来てくれたみたいです。先生たちは次々とゴブリンを倒してくれて、あっという間にあたしたちの拠点を包囲していたゴブリンを退治してくれました。


「諸君、無事かね?」

「はい。どうにか無事です」


 するとゲラシム先生はぐるりと周囲を見回します。


「ふむ。拠点を要塞化していたことが効いたようだな。ローザ君の力を活かすための櫓を作ってあるのもいい判断だ。それに救助要請も適切だ。従魔を使って背後のリーダーを暗殺するという判断も良かったな。そのおかげでゴブリンは統率が取れなくなっていたのだろう」


 えっ? そうだったんですか?


 するとまるでゲラシム先生の言葉と示しを合わせたかのようにホーちゃんがあたしたちの乗っている台の上に降りてきました。


 よく見るとホーちゃんの爪がべっとりと血で汚れています。


「あ、えっと、ホーちゃん、ありがとうございます」

「ホー」


 ホーちゃんは片方の翼を広げて、大したことないとでも言うかのように小さく返事をしました。


「さて諸君、演習は中止だ。演習でこのような規模の襲撃は想定していない。どんな危険があるかわからない以上、諸君をこの場に留まらせるわけにはいかない。我々が引率するので、今から撤収の準備を始めたまえ」

「は、はい!」


 こうしてあたしたちはたき火の明かりを頼りに撤収の準備を始めるのでした。

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