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第三章第52話 夜襲を受けました

「ホー! ホー!」


 テントに戻ってきてたホーちゃんの鳴き声であたしは目を覚ましました。


「ん……っ!? 魔物!?」

「ホー!」


 あたしは慌てて飛び起きると、すぐにマントを羽織って外に出ます。


 ユキはもうテントの前でアタシが出てくるのを待っていました。


「ホーちゃん、どこですか?」

「ホー!」


 ホーちゃんはひと鳴きして飛び立っていきました。


 えっと……あ! わかりました!


 あたしは意識をホーちゃんに同調させ、ホーちゃんの見ている景色を確認します。


 ……あれは!


 ゴブリンが三匹、こちらに向かって真っすぐ歩いてきています。


 あ、ホーちゃんがこちらに戻ってきますね。多分他にはいないってことだと思います。


 あたしはMPを節約するため、ホーちゃんとの同調を止めます。


 えっと、見張りは……あれ? 出入り口に一人いるだけですか? それじゃあ反対側から来る魔物を見つけられないんじゃ……?


 あっと、今はそんなことを言っている場合じゃありませんでした。あたしは見張りをしているヴァシリオスさんに声をかけます。


「あの」

「ん? なんだ?」

「ホーちゃんがゴブリンを三匹見つけました。向こうからで、まっすぐにこっちに向かってきています」

「なんだと!? わかった。マリウスたちを起こしてきてくれ。そこのテントだ」

「え? あ、はい」


 ゴブリン三匹ならあたしが駆除したほうが早い気もしますけど、演習ですもんね。


 あたしは言われたテントに行き、そっと中をのぞきます。


 すると中ではマリウスさんたちが寝袋にくるまって眠っています。


「あのっ、すみません。ゴブリンが襲ってきたので起きてほしいんですけど……」


 ……ダメです。熟睡しているみたいで、起きてくれません


「あのっ! 起きてくださいっ!」


 大きな声で呼び掛けましたが、やっぱりダメです。


 でもテントの中に入るのはなんだか抵抗が……。


「ミャッ」


 するとユキが小さな氷の塊を出し、マリウスさんの首筋に置きました。


「うわぁぁぁぁぁっ!?」


 マリウスさんが驚いて飛び起きます。


「なんだ!? 誰だっ!」

「あのっ!」

「っ!?」


 マリウスさんがこちらを振り向き、なぜか目を見開いて驚いています。そしてすぐに顔が赤くなります。


 あれれ? なんですか? この反応?


「ど、どうしたのだ、ローザ」

「あの、ゴブリンが三匹、こっちに向かってきているんです。ヴァシリオスさんに言われて起こしに来たんですけど、その起きなかったので氷を……」

「ゴブリンだとっ!? おい! お前ら! 起きろ! ゴブリンだ! ああ、そうだ! ローザ。お前はロクサーナ様とテントに隠れていろ。ゴブリンは女を狙うんだ! 見つかればさらに仲間を呼ばれる。いいな?」

「は、はい」


 あたしは言われてテントへ戻ることにしました。


 でも、ゴブリンがこっちに向かって真っすぐ歩いてきてるってことは、すでにあたしたちは見つかってるってことですよね?


 ならもうここに女性がいるってこともバレてるような気がするんですけど……。


「ホーちゃん、他にもいないか探してくれますか?」

「ホー」


 あたしは戻ってきたホーちゃんにそうお願いすると、再び森の中へと音もなく飛んでいきました。


「ユキ、マリウスさんたちが危なそうだったら教えてもらえますか?」

「ミャッ」


 ユキはそう返事をすると、ピョンとジャンプして野営地を囲っている壁の上に登りました。


 えっと、あたしはテントの中に戻ろうと思います。


 でも心配なので寝袋には入らず、いつでも飛び出せるようにはしておこうと思います。


◆◇◆


「ようし、来たな。ローザの報告どおり三匹か。ギリギリまで引きつけろ」


 ゴブリンたちの姿を確認したマリウスはそう指示を出す。ヴァシリオスたちは神妙な面持ちで(うなず)いた。


「いいぞ、もっとだ。もっと引き付けろ……今だ!」


 マリウスとアイオネルが火球を飛ばし、ヴァシリオスは風の刃を、コンラートは岩の礫を飛ばした。


「ギャッ!」


 それをまともに喰らったゴブリンたちが怯んだ隙にマリウスたちは一気に距離を詰め、ゴブリンたちを斬り捨てた。


「よし! ゴブリンめ! 見たか!」

「マリウス様、やりましたね」

「これが、実戦か……」


 それぞれが思い思いの感想を口にする。


「さて、この死体を持って帰ればいいのか?」

「ですがこれを運ぶのは……」

「アレックの奴には無理そうだしな……」


 そうして悩んでいると、ローザがひょっこりとやってきた。


「あ、あのっ」

「ん? おい! どうして外に出てきてるんだ!」

「ひっ」


 ヴァシリオスに怒鳴られたローザは身を固くした。


「あ、その、ここは危ないんだ! 見ろ! ゴブリンだぞ?」


 ヴァシリオスがそう言ってゴブリンを指さすが、ローザはヴァシリオスのほうを恐れている様子だ。


「おい、ローザ。俺は危険だからテントにいろと命じたはずだ。仲間を呼ばれたらどうするつもりだ?」

「あ、その、ごめんなさい。ただ、ホーちゃんがもうゴブリンはいないって……」

「……」

「そ、それで、その、困っていそうだったので討伐証明部位を教えようと……」

「……そ、そうか。悪かった。どうすればいいんだ?」

「は、はい。えっと、ゴブリンの討伐証明部位は右耳なんです。だからここにナイフを当てて」

「こうか?」


 ヴァシリオスは素直にナイフをゴブリンの右耳の付け根に当てた。


「はい、そうです。それでその向きにナイフをぐっとやれば……」


 ヴァシリオスがナイフに力を入れると、ゴブリンの右耳はいとも簡単に切り落とされた。


「あとの死体は燃やして埋めてください」

「あ、ああ」

「あ、あの、お邪魔しました」


 ローザはそう言い残し、テントのほうへと戻っていった。


 その様子をヴァシリオスたちはぼーっと見送るのだった。

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