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第三章第47話 野営の準備をします

きれいにテントが張れました。


「コンラートさん、ありがとうございました」

「ああ。じゃあ、掘ってくるわ」


 そう言ってコンラートさんは歩いていきました。


 ……掘る?


 なんのことかと思って確認しに行くと、なんとベティーナさんが地面の中からひょっこりと顔を出しました。


「えっ!?」


 慌てて駆け寄ると、なんと穴が掘られていました。


「ベティーナさん? これ、何してるんですか?」

「ああ、これはマリウス様のご命令で堀を作ってるの」

「堀?」

「ええ。マリウス様がゴブリン退治をされたとき、こうして夜襲を防いでいたんですって」

「そ、そうなんですね……」

「マリウス様、領地のゴブリン退治をしたとき大変だったらしいからね」

「コンラートさん……」

「なんでも三百を超える大規模なゴブリンの群れを相手に取り囲まれたらしいんだ。だからその反省を活かして今回は魔物に襲われても守りやすい拠点を作るんだって」

「そうなんですね」


 三百以上ものゴブリンって、最悪ですね。想像しただけでも鳥肌が立ちます。


 でも、この森にそんなに大量のゴブリンがいるんでしょうか?


 そんな森で最初の演習をするって普通はしない気がしますけど……。


 そうこうしているうちにベティーナさんとコンラートさんはみるみるうちに堀を作り、さらに掘った土を利用して壁を作っていきます。


 二人とも土属性なのでこういったことも得意なようです。


 あたしも土属性が使えれば森でもっと快適なお家を作れましたが、適性がないんだから仕方ありません。


 見ていても仕方ないので、あたしはお料理の準備をしようと思います。


 えっと、まずは火の用意もしようと思います。


 薪もアレックさんが運んでくれていましたし、アレックさんは火属性だったので着火をお願いしようと思います。


「アレックさん、たき火を……」


 そう思って声を掛けたのですが、アレックさんは尻もちを突いたまま後ずさっていきます。


 ……やっぱりこれ、あたしが怖がられてるんですよね?


 仕方ありません。


「ピーちゃん、薪を運ぶのを手伝ってください」

「ピッ」


 ピーちゃんはそう短く返事をすると、アレックさんのほうへとゆっくり這っていきました。


 するとアレックさんはピーちゃんも怖いようで、慌てて後ずさっていきます。


 ……えっと、ピーちゃん、()んだりしませんよ?


 ピーちゃんはそんなアレックさんを無視し、地面に散らばったアレックさんの荷物のところまでやってきました。


 それから体を変形させて何本もの触手を伸ばし、次々と薪だけを器用に拾っていきます。


「あ、そのくらいで大丈夫ですよ」

「ピッ!」


 ピーちゃんは薪の束を担ぎ、私のほうへと戻ってきます。


 えっと、アレックさんはどうしましょう?


 えっと、えっと……そうですね。


「あの、アレックさん。荷物が散らかっているので片づけてもらえますか?」

「ひっ!?」


 ……えっと、やっぱり怖がられています。


 こんなに怖がられるってことはきっとあたし、何かしちゃったんですよね?


 どうしましょう。全く心当たりがありません。


「ピピッ」

「あ、はい。そうですね」


 アレックさんのことは諦めて、あたしはあたしのお仕事をしようと思います。


「そのたき火のところの隣の、そうです。そこに置いてください」

「ピピッ」


 あたしはピーちゃんが置いてくれた薪を取ると、燃えやすいように互い違いに組みます。


 そして一番下の薪に火を()けました。


 えっと、次はお料理ですね。お水は()みにいった人たちが帰ってくるのを待たなければいけないので、まずは下ごしらえをしましょう。


「アレックさん、料理道具を……あれ?」


 散らばった荷物は片付けられていますけど、肝心のアレックさんがいません。


 えっと?


「ピピッ」


 ピーちゃんが体の一部を伸ばし、ピーちゃんがコンラートさんと一緒に張ったテントのほうを指さしています。


 そちらを見てみると、なんとアレックさんがテントの陰に隠れています。


「えっと……」

「ピピッ! ピッピッ!」


 続いてピーちゃんは片づけられた荷物を指しています。


「えっと、アレックさんは放っておいて準備をしよう、ですか?」

「ピッ!」


 えっと、はい。そうですね。


 魔物が出る森の中なんですから、早く準備を終えないと危険です。


 あたしは荷物に近寄り、中からロクサーナさんの調理道具が入った袋とお野菜を取り出します。


 あれ? なんだか視線を感じるような?


 あたしがアレックさんのほうに顔を向けると、アレックさんはテントの陰にさっと隠れてしまいました。


 えっと、はい。気にしないことにしましょう。


 時間もないですし、早くしないと日が暮れちゃいます。


 あたしは急いでたき火の(そば)に戻ると、調理道具の袋を開けました。


 あ、今さら気付いたんですけど、中に説明書が入っていますね。


 えっと……この調理道具のセット、魔道具みたいです。


 まさか魔道具の調理セットがあるなんて……。


 どうやらまな板には固定の効果が付与されているみたいです。


 あ、固定っていうのはですね。グラグラした場所においてもピッタリなって動かなくなる効果らしいですよ。


 こんなのがあるなんて初めて知りましたけど、すごく便利ですね。特にあたしたちが今いる屋外だと平らな場所があまりないので助かります。


 それから包丁は壊れにくくなる効果と切れ味が上がる効果が付与されているみたいです。


 えっと……なんだか武器みたいですね。


 残るお鍋やお玉なんかにも壊れにくくなる効果が付与されているみたいです。


 ……これ、一体いくらするんでしょう?

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