第13話 いじめはいけないと思います
2020/12/10 誤字を修正しました
どうもこんにちは。ローザです。今日も元気に森の中でサバイバルしています。
ユキをお迎えしてから早いものでもう一か月が経ちました。最初はあたしの両手にすっぽりと収まるくらいに小さかったユキも今では体長 20 cm くらいまで大きくなりました。猫は、いえスノーリンクスの成長は早いんですね。
それと、あたしもほんの少しですけど胸も膨らんできて、少しずつ大人の女性に成長していっているんだなって実感しています。
ただ、その割にはオシャレよりもサバイバル能力ばかりが鍛えられているのが悩みどころです。何しろ、この間なんて鹿と猪を一日で仕留めちゃいましたからね。
あたしもう、猟師としてやっていけるかもしれません。
でもですね。あたしの夢は一番が毎日お腹いっぱい食べることで、二番目がお嫁さんになることなんですよ。
だからこのままではまずいな、とは思うんです。思ってはいるんですけど、どうにも周りに他人の目が無いと思うと油断して適当になっちゃうんですよね。
ほら、どうせ張り合う相手もいなければ見せたい相手もいないんですし。もう、なんだか最近は裸で走り回れるんじゃないかって気分です。
ただですね。人間はあたし一人ですけど、あたしにはユキがいてくれるおかげで寂しくはないんです。しかも、最近はずっと一緒に寝てくれるんですよ?
もう、至福です。
ユキはあたしの天使ですよ。離れるなんてもう考えられません。
あ、そうそう。それといくつかのスキルレベルが上がりました。【収納】と【火属性魔法】がレベル 2 になって、【無属性魔法】と【魔力操作】がレベル 3 になりました。それと、【狙撃】なんてスキルが生えてきました。
きっと遠くから魔力弾で獲物を狙撃していたからでしょうね。
あとはそうですね。【収納】スキルでも発見がありました。生肉を入れておくと腐ってしまうみたいなんですよ。それに気付かずにウサギの毛皮が何枚かダメになってしまいました。
ただ、焼いたお肉は今のところ腐っていないんですよね。ちょっと油が悪くなったかなって感じにはなるんですけどそれだけで腐ったりはしないんです。だから最近はお肉を全部焼いて、それを冷ましてから収納に入れておく事にしています。
あ、冷ますのは、熱々のまま収納に入れると取り出したときにすっごく硬くなっていたからです。取り出したときも熱いままだったので、焼き過ぎで硬くなった感じなんだと思います。多分。
さて、それじゃあ今日の狩りと採集に行ってこようと思います。狙いはやっぱりヤマモモとかキイチゴ類ですね。甘酸っぱくてお肉にもよく合うんです。あとは虫除け草を追加で欲しいですね。
マイホームがあるのでまだマシですが、それでも虫が湧いてきて夜とかはちょっと不快なんですよね。でも虫よけ草をいぶして煙を炊いていれば寄ってこなくなるので、森の中では必需品かもしれません。
それからそろそろウサギも狩っておきたいところですね。
やっぱり絨毯にしている毛皮はちゃんとした職人さんが処理していないからすぐに痛んじゃうので頻繁に取り替えないといけないんですよ。
それじゃあ、いってきます。
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森の中を歩いていると、少し開けた場所に普段は見かけない青いグミのような生き物が五匹いるの見かけました。あれはブルースライムです。そしてそのうちの四匹が一番体の小さくて色の薄い一匹を取り囲んで体当たりをしたり体を変形させて触手で叩いたりしています。
「ねえユキ。あれって何だと思います?」
「ミャー」
「やっぱり、いじめですよねぇ?」
「ミャー」
うん。やっぱりそうですよね。ユキの目にもいじめに見えるようです。これは助けてあげるべきでしょうか。
「ねえユキ。助けてあげた方が良いですかねぇ?」
「ミャー」
そうですよね。やっぱりユキも助けてあげたい思っているようです。
というわけで、あたしは歩いて近づくと声を掛けます。
「あの。みんなで寄ってたかっていじめるのは良くないと思いますよ?」
「ピピ?」
「キュイ?」
あたしの声に反応したのかいじめていたブルースライムの動きが止まります。そしてすぐに威嚇してきました。
「キュキュキュキュー!」
ブルースライムといえばとても弱い上にゴミや汚物なんかを食べてくれるのでそれなりに有益な魔物として有名ですが、それでも魔物です。あたしのような人間を見つけると襲ってくるんです。
「それなら!」
あたしはブルースライムの弱点である火属性魔法で手元に炎を出して威嚇し返します。
「その子へのいじめをやめないなら、倒しますよ!」
「キュ、キュキュ」
やっぱり炎は怖いようで、ブルースライムたちがたじろいでいます。あたしは炎を少し近づけてやります。
「ピ、キュキュー」
いじめていたブルースライム達は観念したのか茂みの奥へと消えていきました。
「大丈夫ですか?」
「ピ……ピ……」
あたしのかけた声にたいするいじめられっ子スライムの反応はとても弱々しいものでした。
「だいぶ弱っているみたいですね」
「ミャー」
うん。やっぱりユキも心配みたいです。
「ミャー」
あれ? ユキが草を指さして? あ、これは薬草じゃないですか。
「ユキ、ナイスです」
あたしは薬草の葉っぱを一枚摘むとそのままいじめられっ子スライムに差し出します。
「ピ……」
弱々しくそう言ったいじめられっ子スライムはあたしの差し出した葉っぱに触れるとすぐにその体内に薬草を取り込みました。
青と言うよりも水色に近い色の体の中に取り込まれた葉っぱが少しずつ溶けて無くなっていくのはとても不思議な光景です。
そしていじめられっ子スライムにはすぐに変化が現れました。
「ピ。ピピー!」
すごい! もう元気になったみたいです。薬草の効果恐るべしです。
ただあたしたちにはあんな即効性は無かったのでスライムにはよく効くのかもしれませんね。
「元気になって良かったです。もういじめられないように気を付けてね」
あたしはそう言うと回れ右して獲物を探しに森を歩いて行くのでした。