第三章第43話 出発の準備をします
あれからすぐにロクサーナさんがマルクスさんに話をして、あたしは二班の野営担当に任命されました。
えっとですね。マルクスさんたちも宿があるものだと思い込んでいたそうです。
ちょっと不安ですが、もしかするとこれはクラスの人と仲良くなるチャンスかもしれません。
それに森でサバイバルをした経験がある人なんてきっとこのクラスではあたしくらいだと思いますから、その経験を活かしてしっかり準備をしようと思います。
まずはテントを必要な数だけ買う必要があると思うんですけど、どこで売ってるんでしょうか?
えっと、えっと、はい。そうですね。考えたって分かるわけありませんよね。
ここは知っていそうな人に聞きに行こうと思います。
◆◇◆
というわけで、料理研究会の調理室の前にやってきました。今日は活動の日ではないですけど、いつ行っても誰かしらいるので話を聞けるはずです。
そう期待して部屋の中に入ると、ザビーネ先輩が何かの作業をしていました。
「お? ローザじゃないか。どうした? 今日は仕込みだから食べるもんはないぜ?」
「あ、えっと、そうじゃなくってですね。今度魔物討伐演習に行くんですけど、テントとかの準備ってどうしたらいいのか分からないんです。それで誰かに教えてもらえないかなって……」
「ん? ああ、そっか。普通科は一年から討伐に行くんだっけか」
「あれ? 従魔科は違うんですか?」
「ああ。従魔科だと従魔と契約してからじゃないと戦えないからな」
「そうなんですね」
一年生のときは普通科も従魔科も同じことを勉強するって聞いていましたけど、細かいところでは違いがあるみたいです。
「ま、二年になったら従魔科と一緒に出掛けるはずだぜ。で、聞きたいのは道具の準備だっけか?」
「はい」
「そうだな。まずテントは事務局に行けば借りられるぜ。ホントは寝袋もあったほうがいいけど、毛布で代用している奴も多いな。あとは、炭とかを持っていったほうが料理はしやすいぜ。それと料理研究会として外せないのはやっぱり携帯用の調理器具かな」
「調理器具?」
「ああ、鍋とかないと料理、キツイぜ? それに、人数分の食器もいるしな」
「そういえばそうですね」
たしかに、行った先でお皿を作るところから始めていたら演習の時間が終わってしまいそうです。
「ま、調理器具とか必要な道具はお金持ちの貴族にでも買わせるといいぜ。どうせ一人くらいいるだろ? ベッド以外で寝たことないとか言ってる奴が」
「あ、はい……」
それ、ロクサーナさんだけじゃないんですね。
こうしてあたしはザビーネ先輩に色々と教えてもらい、手続きをしに事務局へと向かったのでした。
◆◇◆
テントを借りる手続きはあっさりと終わり、自分の部屋に戻ってきました。今からユキたちに魔力のごはんをあげようと思います。
最初のうちはごはんをあげ過ぎて倒れそうになっていましたけど、最近はMPを使い果たさないように鑑定先生でMPを確認しながらあげるようにしているのでもうそんなことにはなりません。
あ、そうそう。そういえばあたしのステータスも大分上がって、今はこんな感じになりました。
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名前:ローザ
種族:混血(人族、天空族、淫魔族)
性別:女性
年齢:12
職業:テイマー
HP:37/37
MP:158 → 201/201
STR:2
INT:34 → 36
AGI:4
DEX:14
VIT:4 → 5
MGC:81→ 101
MND:58 → 77
LUC:9
CHA:89 → 123
スキル:
鑑定:1
収納:3
魅惑:3 → 7
火属性魔法:6 → 7
風属性魔法:1
光属性魔法:3 → 8
無属性魔法:6
魔力操作:9 → 10
従魔契約:1
狙撃:3
忍び足:1
魔法適性:火、風、光、闇
称号:星に導かれし者
従魔:ユキ、ピー、ホー
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えっと、はい。MPやMGCがすごく上がっているのは毎日ユキたちにごはんをあげているからだと思います。
それから【光属性魔法】がものすごく上がりました。やっぱり治癒ができるようになったからですよね。
授業でたくさん使っていますし、自分でも上手になったっていう実感があります。MNDもきっとそのおかげだと思います。
あ、あと、INTがちょっとだけ上がっています。あたし、賢くなったらしいですよ。
えへへ。まだ算数は苦手なんですけどね。
それからSTRとAGIが上がらないのはあんまり運動していないからでしょうか?
やっぱりちょっとくらい運動したほうがいいんですかね?
でもお勉強とユキたちへのごはんで疲れちゃうので、それ以上何かをする気になれないんですよね。
えっと、それからCHAですけど、なんでこうなるんでしょうね? もうさっぱりわかりません。
あ、あと【魅惑】もそうです。でもあたし、こんなスキルを使った覚えは一度もないんですけど……。
「ミャー」
「あ、はい。ごめんなさい。ごはんですね」
あたしは膝の上に乗ってきたユキの前に、魔力を集めた右手の人差し指を差し出しました。
するとユキはペロペロとあたしの指を舐め、集めた魔力を舐めとっていきます。
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MP:110/201
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MPの半分くらいをあげたところであたしは魔力を集めるのをやめました。するとユキは名残惜しそうに何回かペロペロとあたしの指を舐めましたが、やがて諦めて膝の上から降りて窓際に歩いていきました。
次はピーちゃんの番です。
「ピーちゃん」
「ピッ」
ピーちゃんも嬉しそうにあたしの膝の上に乗ってきました。
ピーちゃんにも同じように人差し指をさしだすとピーちゃんは体の一部を伸ばして指先に触れ、そこから魔力を吸い取り始めます。
最初はあたしの全身に纏わりついてきましたが、今はちゃんとあたしの人差し指からご飯を食べてくれるようになりました。
えへへ。ピーちゃん、とっても賢いですよね。
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MP:20/201
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あっと、そろそろやめないとホーちゃんにあげる分が回復しなくなっちゃいます。
あたしが魔力を集めるのをやめるとピーちゃんは伸ばしていた体の一部を引っ込め、元の丸い形に戻りました。
そしてそのままあたしの膝の上でリラックスしています。
えへへ。ピーちゃん、とっても可愛いです。
あ、でもこのままじゃ動けませんね。
えっと、そうですね。せっかくですし、今日はこのまま夕飯までゆっくりしようと思います。





