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第三章第17話 大変なことになりました

2023/07/08 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

 ゴブリンの襲撃があった翌朝あたしたちは大急ぎでガルヴェラ湖を出発し、そのまま王都まで戻ってきました。


 リリアちゃんとヴィーシャさんは王都に着くと途中で馬車を降りて自宅に向かい、今はレジーナさんに連れられてマレスティカ公爵家のお屋敷に向かっています。


 そうして馬車に揺られていると、不意に馬車が止まりました。


「さあ、着きましたわ」

「お、大きいです」


 さすが、偉い貴族だけあってまるで学園のように大きなお屋敷です。


「お帰りなさいませ。お嬢様」


 馬車を降りると使用人の人たちがずらりと並んでレジーナさんを出迎えています。


「ええ。ご苦労様。お父様はどちらに?」

「はい。執務室にてお待ちです」

「そう。ローザ、ついていらっしゃい」

「は、はい」


 別邸のときもそうでしたが、やっぱりこんなに豪華なお屋敷だとなんだか気後れしちゃいます。


 どうして貴族の人はこんなにお金持ちなんでしょうね?


 孤児院には全然お金がなかったのに。


 そんなことを考えつつも広いお屋敷の中を通り抜け、落ち着いた雰囲気の扉の前にやってきました。


「旦那様、奥様、お嬢様とご友人が到着されました」


 先導してくれていたメイドさんが扉をノックしてそう声をかけました。


「入りなさい」


 すると短くそう返事が返ってきました。メイドさんはすぐに扉を開けてくれます。中に入るとそこには一組の男女があたしたちを待っていました。


「お父様、ただいま戻りましたわ」

「ああ、よく戻ったね」


 レジーナさんはそう言って中にいた男性とハグします。どうやらこの人がレジーナさんのお父さん、マレスティカ公爵様のようです。金髪に緑色の瞳といったところはレジーナさんと同じですが、あまり顔立ちは似ていないように思います。


「お母様、ただいま戻りましたわ」

「ええ、おかえりなさい」


 続いてレジーナさんが女性のほうとハグしました。レジーナさんのお母さんのようです。随分若い女性ですが、レジーナさんとそっくりです。母子ではなく少し年の離れた姉妹といわれても信じてしまいそうな感じです。


「その子がそうかい?」

「ええ、彼女が手紙でお伝えしたローザですわ」

「そうかい。ローザちゃん、話は聞いているよ。私がレジーナの父、アロンだ。よろしくね」

「わたくしはレジーナの母のシモーナですわ」


 そう言ってアロンさんとシモーナさんが優しく微笑みかけてくれました。


「は、はい。えっと、ローザです。オーデルラーヴァから来ました」

「噂は聞いているよ。とても優秀で、学園では特待生だそうだね」


 アロンさんは優しい口調でそう声を掛けてくれました。なんだかとても優しそうなおじ様といった感じです。きっとあたしが緊張しないように気を遣ってくれているんだと思います。


 それに、よく見るとアロンさんの耳の形がレジーナさんにそっくりです。あ、アロンさんじゃなくてレジーナさんの耳の形がアロンさんに似たんですね。


「さて、レジーナ。とても大事な報告があるそうだね」

「はい」


 それからあたしたちはソファーに座り、レジーナさんが湖であったことを話し始めました。【収納】の話はニコニコしながら聞いていたアロンさんでしたが、遠くの森の中にいるゴブリンを狙撃した話を聞いたところで遮ってきました。


「ローザちゃん、その話は本当なのかい?」

「えっと、はい。そうです」

「森の中を見通しただけでなく、正確にゴブリンの頭を狙って撃ち抜いたんだね? 距離はどのくらいあったんだい?」

「えっと、距離はわからないですけどかなり遠かったと思います。自分の目で見るのは難しいかもしれません」

「えっ!? ローザちゃんは森の中を見ていたんじゃないのかい?」

「あ……えっと、その、ま、魔法で?」

「……」

「あ、その、ホーちゃんが、その、教えてくれて……」

「ホーちゃんというのは、ローザの従魔のアサシンオウルですわ」

「なるほど。つまり、ローザちゃんは従魔に教えてもらったということかな? いや、魔法で従魔の見ている景色を自分も見た、といったところかな?」


 す、すごいです。あたしが説明したかったことをピタリと言い当ててくれました。


「……なるほど。これは確かに一大事だね」


 アロンさんは先ほどまでのにこやかな様子から一転して真剣な雰囲気を漂わせ始めました。隣で聞いていたシモーナさんも真剣な様子です。


「あ、あの……そんなに大変なことなんですか?」


 あたしの質問にアロンさんは苦笑いを浮かべました。


 えっと?


「そうだね。平民として暮らしてきたローザちゃんにはあまり馴染みのないことかもしれないけれど、ローザちゃんの能力はどの国も喉から手が出るほど欲しいんだよ。それに国家の転覆を狙う非合法組織や暗殺者集団、新興宗教、それに盗賊連中もだね」

「ええっ?」

「目障りな相手を見えないところから簡単に撃ち殺せるんだ。そりゃあどんな組織だって欲しいだろう。殺しまではしないにしても、アサシンオウルがひっそり見ているとなればどこで秘密が漏れるか判ったものではないからね」

「……」

「収納を持っているというだけならたまにいる程度だからね。うちが庇護していると公式に認めてしまえばどうにかなったけれど、これほどでは……」


 偉い貴族様が言ってもダメなんですね。あたし、どうなっちゃうんでしょう……?


「あっと、不安にさせてしまったね。大丈夫だよ。外国人の平民だと難しいっていうだけだからね。ちゃんと手はあるよ」


 アロンさんはそう言ってまた安心させるような笑みを浮かべました。


 えっと、どういうことでしょうか?


「ローザちゃん。良かったら私の娘にならないかい?」


 ……え?

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― 新着の感想 ―
[一言] メリットはあるけど貴族としての義務がなあ特に公爵
[気になる点] 変態王子が悉く様子見にきそうだし、縁組したら逆にこの国に永遠と利用されると思うので頑固反対ですね。一生国外出れないと思う。だいぶ前に公子と王子がなんか企んでたし。 そもそもオフィーリア…
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