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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

開けて悔しき玉手箱 

とある駅にいる教祖様の手

作者: 秋山太郎

のめり込み過ぎには注意しましょう。

 カジノ法案が可決され数十年が経った。


 建設されたカジノは多くの人で賑わい、隣接するこの駅も毎日たくさんの人で溢れ返るようになっている。


 そんな中、駅構内のある場所では一際不思議な光景が広がっていた。




 ――ぱんぱんっちゃりん


「教祖、頼むで」


 ――ぱんぱんっちゃりん


「宜しくお願いします、教祖」


 


 とある若者が、今日こそ宜しく頼むよと言って柏手を打ったのが始まりらしい。


 今日こそ、が訛って教祖になったという話だ。


 今では現金を持ち歩く人はおらず、皆、電子マネーで募金をしていく。


 蛙型の募金箱は、効果音を鳴らしながら今日も満員御礼だ。




「毎日、すごいですよね」


 ここに配属されたばかりの新人が私に話しかけてきた。


「験を担ぎたがる人間ってのは多いものだよ」


「なんだか宗教みたいですね」


「募金の一部は駅へ回ってくるんだぞ」


「そうなんですか、それじゃあ足を向けて寝られませんね」


 そう言えば、と新人が尋ねてくる。


「駅長はここ、長いんでしたよね」


「ああ、ここは退屈しないからな」


「あはは、確かにこの人手じゃ退屈しませんね」


 彼らが話している間にも、下を向きながらちらりと視線を投げて通り過ぎる人達がいる。


「ここでの我々の仕事はな、ああいう人の背中にそっと手を添えてやる事だ」


「ああ、なるべく沢山の人に募金してもらうんですね」


 信者を勧誘しているみたいだなあ、と新人はあまり良い顔をしていなかった。


「世の中綺麗事だけじゃ渡っていけないという事だな」


 そう言って私は駅長室へと戻った。




 


 部屋は静寂が支配している。


「今日こそ宜しく頼むよ」


 そして私は目を瞑りながら耳を立てる。


 


 ややあって、警笛が聞こえてきた。


 私はにやりと口角をあげた。


 急いで部屋の外へ出る。


 ブレーキ音と悲鳴が入り混じりながら、弾け飛ぶ様子を視界に捉える。


 


 私は大きく息を吸い込んだ。


 ああ、心が震えるような歓喜の歌声がたまらない。


 芸術的な光景が目前に広がっている。


 筆舌に尽くしがたい悦びが全身を駆け巡る。


 この一瞬だけが私を生き返らせる。


 


 毎日足繁く通う人間を信者というのなら、熱狂的な興奮の坩堝たるカジノは儲者とでも言うべきか。


 ならば儲者の吐き出した亡骸の背中に、そっと手を添える私は何と言われるのだろうか。


 しかし私は駅長だ。


 調()()()()()()な人の背中に手を添えて、一体何の問題があるというのか。


 誰も気が付く事はない。




難産だった作品ほど愛着が沸きますよね。


楽しんでもらえれば幸いです。


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